「親知らず、抜かなきゃよかった…」そんな声をよく耳にしませんか?
親知らずの抜歯は、痛みや腫れなどつらいトラブルを引き起こすこともあり、後悔する人がいるのも事実です。
一方で、親知らずを抜かずに放置すると、歯並びやむし歯、歯周病など、深刻な悪影響を招く可能性があります。
本記事では、親知らずの抜歯で後悔する原因や、抜くべきかどうかの判断基準を、歯科医師の視点からわかりやすく解説します。
- 親知らずを抜くべきかどうかの判断基準
- 抜かなくても良い親知らずの条件
- 抜歯が推奨される親知らずのケース
- 親知らずを抜かずに放置した場合のリスク
- 抜歯後に「抜かなきゃよかった」と後悔する理由
- 抜歯で後悔しないための準備と術後ケアのポイント
そもそも親知らずを抜くべきなのか?
結論から言えば、すべての親知らずを抜歯する必要はありません。
親知らずは、生え方や口内環境によって「抜くべきケース」と「残して問題ないケース」があります。
親知らずは「第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)」、別名「智歯(ちし)」と呼ばれ、20歳前後で奥歯のさらに奥に生えてくる歯です。
しかし現代人の顎は昔の人に比べて小さいため、親知らずが斜めに生えたり、歯並びに悪影響を与えたりする可能性を考え、抜歯を提案されることが多いのです。
親知らずを残しておくと役に立つ場合も
親知らずが正常に生えており、次の条件を満たす場合は、抜かずに残しておくことで役立つことがあります。
- 親知らずを残しても良い条件
- まっすぐ生えており、歯並びや噛み合わせに問題がない
- むし歯や歯周病、汚れの蓄積がなく、清掃しやすい
- 隣接する歯や歯茎に悪影響を与えていない
きれいに生えた、状態の良い親知らずであれば、「自家歯牙移植(じかしがいしょく)」に活用できるケースがあります。他の歯を失った際に、親知らずを移植して補うことができるのです。
ただし、親知らずの状態が望ましいかどうかは見た目では判断が難しいため、歯科医院での診療・レントゲン検査での判断が必要です。
親知らずを抜いた方がいいケース
すべての親知らずを抜く必要はないものの、トラブルの原因になるケースでは抜くことが推奨されます。
特に、以下のような状態の親知らずを放置すると、歯並びや口腔内の健康に悪影響を及ぼす場合も。
具体的にどのような場合に親知らずの抜歯が必要なのか、順番に解説します。
親知らずが生える向きに問題がある場合
親知らずが斜めや横向きに生えている場合、隣接する歯を押し、歯並びの乱れを引き起こすことがあります。また、隣の歯との間に汚れが溜まりやすく、むし歯や歯周病、口臭の原因になるケースもあります。
真っ直ぐ生えていない親知らずは自分でのケアが難しく、上手に歯磨きするのが難しいです。よって、炎症や歯肉の腫れを引き起こし、最悪の場合は隣の健康な歯を失う危険があります。
斜めに生えた親知らずは、早めに歯科医師に診てもらい、必要であれば抜歯を検討しましょう。
親知らずが完全に生えていない場合
親知らずが完全に生えきっていない場合、抜歯したほうがよい場合があります。
歯茎に半分埋まっている状態(半埋伏歯)は、目視しにくい場所で問題を引き起こすことがあります。
歯茎の隙間から汚れや細菌が入り込めば、炎症や腫れ、痛み、歯周病を引き起こすリスクに。また、周囲の歯や骨に悪影響を与えることもあります。
親知らずが歯並びに影響を与えている場合
親知らずの生え方や位置によっては、他の歯が押されて歯並び全体が乱れることがあります。
とくに、矯正治療を行った後に親知らずが生えてくると、せっかく整えた歯並びが後戻りする原因になるため注意が必要です。
歯並びの乱れは、むし歯や歯周病、噛み合わせ不良、口臭といったトラブルを招きやすいと言えます。結果的に全身の健康に影響を及ぼす懸念もあるでしょう。
親知らずによる歯並びへの悪影響が確認された場合は、早めの抜歯が推奨されます。
親知らずを抜かずに放置した場合のリスク
親知らずを放置すると、以下のようなリスクや悪影響が生じる可能性があります。
- 親知らずを抜いた方がよい条件
- 周囲の歯や歯茎に炎症や痛みを引き起こす
- 汚れが溜まりやすく、むし歯や歯周病、口臭の原因になる
- 隣接する歯が押されて歯並びが悪化する
このようなリスクを避けるために、親知らずの状態によっては抜歯の判断が必要です。
自分の親知らずがどのような状態かを知るには、まず歯科医院を受診してください。
親知らずを抜かずに残しておくケース
親知らずが正しく生えており、お口の健康に悪影響を与えない場合は、親知らずを無理して抜く必要はありません。
どのような場合に親知らずを抜かずに済むのか、具体的に確認していきましょう。
きれいに生えていて噛み合わせに問題がない場合
親知らずが真っ直ぐにきれいに生えており、しっかり噛み合っている場合は、抜かずに残しても問題ありません。
このような親知らずを残しておくと、以下のようなメリットがあります。
- 噛む力を補える
- 将来的に他の歯を失った場合の移植治療に活用できる可能性がある
ただし、見た目では正しく生えているかの判断が難しいため、歯科医師による診療とレントゲン検査が必要です。
親知らずが歯茎に埋まっている場合
親知らずが完全に歯茎に埋まっており、トラブルがない場合は、無理に抜歯をする必要はないでしょう。
ただし、次のような注意点があります。
- 歯が徐々に動いて歯茎から萌出すると、内部で炎症や膿が溜まる恐れがある
- 隣の歯を圧迫して歯並びに影響する可能性がある
- 将来的に、痛み・腫れ・口臭などのトラブルが生じる可能性もある
そのため、気になる症状がなくても、定期的に歯科医院で診療を受け、レントゲンで状態をチェックすることが重要です。
親知らず付近に痛みが出たり、歯科医師からリスクについて指摘があった場合は、抜歯を検討しましょう。
親知らずを「抜かなきゃよかった」と感じる理由
親知らずを抜歯後に「抜かなきゃよかった」と後悔する人が一定数いるのは事実です。抜歯後の痛みやトラブル、想定外の症状があり、無理して抜いたことを悔やむ人がいます。
以下で具体的なケースを解説しますので、抜歯を検討中の方は参考にしてください。
抜歯後の痛みや出血がつらい
親知らずの抜歯は外科的な処置(手術)であるため、術後の痛みや腫れ、出血は避けられません。
特に、下顎の親知らずや斜めに生えていたケースでは、骨を削ったり縫合したりする手術があるため、痛みが強い傾向があります。
痛み止めを服用して安静に過ごせば症状は次第に治まりますが、想像以上に痛みや出血が長引くと、「抜かなきゃよかった」と感じる方もいます。
痛みの程度や術後の正しいケア方法について、事前に歯科医師から詳しく説明してもらい、心構えをしておく必要があります。
術後の傷口がドライソケットになる
ドライソケットとは、抜歯後にできるはずの血のかさぶたが剥がれたり、うまく形成されなかったりした場合に起こるトラブルです。骨がむき出しの状態になるため、非常に強い痛みが数日〜数週間続きます。
- ドライソケットになる主な原因
- 強いうがい
- 激しい運動
- 飲酒
- 喫煙
傷口がドライソケットになると、通常より痛みが強く、治癒にも時間がかかります。ドライソケットを防ぐためには、歯科医の指示をしっかり守り、安静に過ごすことが重要です。
抜歯後の口臭がきつい
親知らずを抜いた後は、傷口の影響で一時的に口臭が気になることがあります。特に、血のかさぶたや汚れの蓄積が原因で、強い臭いに悩む場合があるでしょう。
適切な歯磨きやうがいができず、ケアが不十分な状態が続くと、さらに口臭が悪化することも。
- 口臭を抑えるポイント
- 抜歯後3時間は飲食・うがいを控える
- 抜歯後3時間経過後は、口に水を含んでやさしくゆすぐ程度にとどめる
- 歯磨きは、抜歯した部分を避け、周囲の歯や舌を丁寧にブラッシングする
- 歯科医院で処方されたうがい薬があれば、指定通り使用する
- 血のかさぶたになるべく触れず、傷口を乾燥させないようこまめに水分補給をする
口臭は一時的な場合がほとんどですが、気になる場合は歯科医院に相談しましょう。
周辺に麻痺がある
特に下顎の親知らずの抜歯には、歯の近くを走る神経(下歯槽神経)を傷つけるリスクが伴います。抜歯の結果、下唇や顎の皮膚にしびれ・麻痺が残ることがあるのです。
多くの場合、麻痺があっても一時的なものですが、稀に長期間麻痺が続くケースも報告されています。
CT撮影などで正確に位置を確認したうえで、親知らずが神経に近接していることがわかったら、経験豊富な歯科医師のもとで慎重に治療する必要があります。
上顎炎を発症した
上顎の親知らずを抜いた際、稀に上顎洞(鼻の奥にある空洞)とつながってしまう「交通」が生じることがあります。この状態が原因で上顎炎(副鼻腔炎)を引き起こし、鼻詰まりや膿、頭痛、顔の腫れといった症状が現れることがあります。
- 上顎炎のリスクが高いケース
- 上の親知らずが深く埋まっている
- 骨が薄く、抜歯時に上顎洞に穴が開きやすい
この場合、適切な処置と経過観察が必要です。事前にリスクを歯科医師と十分に相談することが後悔防止につながります。
親知らずを「抜かなきゃよかった」と後悔しないために
親知らずを抜いたことを後悔しないためには、事前に歯科医師とよく話し、体調管理やケアを正しく行うことが重要です。
具体的なポイントを解説します。
親知らずを抜くべきか歯科医師とよく相談する
最も重要なのは、自己判断で抜歯を決めないことです。
歯科医師に親知らずの状態を見てもらい、歯科医師の意見をよく聞いたうえで、今すぐ抜歯する必要があるのか判断しましょう。
- 歯科医院で確認すべきポイント
- 親知らずの生え方や位置(斜め・埋伏・正常)
※特に、上顎と下顎の親知らずが正しく噛み合っているかも重要な確認ポイントです。
噛み合わせが悪いと、歯や歯茎に負担をかける原因になります。 - 隣接する歯や歯茎への影響
- むし歯や歯周病のリスク
- 抜歯によるメリット・デメリット
レントゲンやCT検査を受け、状態を詳しく見てもらいましょう。
十分な説明を受け、納得したうえで抜歯を決めることが、後悔しないための第一歩です。
抜歯には体調を良好にして臨む
親知らずの抜歯には手術を伴うため、体調を整えて臨むことが非常に大切です。
- 抜歯前の注意点
- 前日に十分な睡眠と栄養を取る
- 喫煙・飲酒は前日から控える
- 風邪気味や体調不良の場合は抜歯を延期する
特に、喫煙や飲酒は炎症や出血のリスクを高めるため、抜歯前後は控えましょう。
健康な状態で手術に臨むことで、痛みや腫れを最小限に抑え、回復も早くなります。
抜歯後のケアを正しく行う
術後のトラブルや後悔を防ぐためには、正しいケアが欠かせません。
- 抜歯後のケアのポイント
- 指示された痛み止めや抗生物質をきちんと服用する
- 強いうがいや舌で触るのは避ける(ドライソケットのリスクを下げる)
- 歯磨きは優しく、傷口を避けて磨く
- 食事は柔らかいものを選び、熱いものや刺激物は控える
- 運動や喫煙、飲酒はしばらく避ける
また、異常な痛みや出血、腫れが続く場合は、早めに歯科医院へ連絡し診療を受けることが大切です。
正しいケアを行えば、多くの場合数日〜1週間程度で痛みや腫れは落ち着きます。安心して過ごせるよう、術後の注意点をしっかり守りましょう。
まとめ
親知らずは、必ずしも「抜くべき」とは限りません。正しく生えていて、歯並びや噛み合わせに問題がなければ、残すメリットもあります。
一方で、親知らずが斜めに生えていたり歯茎や骨の中に埋まっていたりして、炎症やむし歯、歯並びへの悪影響が予想される場合、抜歯した方が良いでしょう。
抜歯は強い腫れや痛み、術後トラブルのリスクも伴います。「抜かなきゃよかった」と後悔しないために、歯科医師とよく相談し、抜歯の必要性やリスクを十分に理解して判断してください。
親知らずを「抜くべきか迷っている」「不安がある」という方は、早めに歯科医師に相談しましょう。
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