受け口矯正は子供のうちに|年齢別の治療法や放置リスクを歯科医が解説

受け口 矯正 子供

「3歳児検診で受け口を指摘されたけど、様子見でいいのかな……?」
「子供の下の前歯が上の歯より前に出ている気がする……」

子供の口元を見て、このような不安を感じる親は少なくありません。

実は受け口(反対咬合)が自然治癒する確率は1割程度と非常に低く、放置すると骨格的に「しゃくれた」状態になるリスクが高いです。

しかし、適切な時期に治療を行えば、顎の成長を利用して負担を抑えながらきれいに治せます。

この記事では、子供の受け口矯正のベストな開始時期や、年齢ごとに最適な治療法、矯正費用の目安について歯科医師が解説します。

子どもの将来の笑顔を守るために、正しい知識を持っておきましょう。

鈴木先生

歯科医師:鈴木 遼介
矯正治療は骨の中にある歯を動かす治療なので、受け口の程度によっては骨格的な問題に対して外科治療が必要になります。

また、受け口の場合、骨の見た目だけでなく咀嚼能力の低下を引き起こし、歯の喪失につながるため、早期の矯正治療の介入が必要です。

正しい噛み合わせでは、上の前歯は下の前歯を覆い被さるようになっています。上の顎は下の顎より成長のピークを迎える年齢が早いという特徴があります。下の前歯が上の前歯と同じか前に位置した状態で上顎の成長のピークが終わると、ストッパーがない状態になり、受け口がより進んでしまいます。

成長のピーク前に矯正相談を受けましょう。

この記事でわかること
  • 子供の受け口(反対咬合)の矯正タイミング
  • 受け口が自然に改善する確率
  • 子供の受け口を放置するリスク
  • 子供の受け口矯正の治療法
  • 小児矯正の費用相場と医療費控除

子供の受け口(反対咬合)矯正する適切なタイミング

昔は、「受け口は自然に治るから様子を見ましょう」と言われることもありましたが、現在の歯科医療では「受け口(反対咬合)こそ早期発見・早期治療が不可欠」というのが常識となりつつあります。

受け口は歯並びだけの問題ではなく、上顎と下顎の成長バランスのズレが原因で起こることが多いため、放置すると骨格的な問題(しゃくれ)に進行するリスクがあります。

受け口が少しでも気になったタイミングが歯科医師に相談すべき時ですが、治療を始めるのによいきっかけとなるのは3歳児検診です。

3歳以降、成長段階に合わせた適切な介入を行うことで、抜歯や外科手術が必要になるような将来的なリスクを下げられます。

ここでは、子供の受け口を矯正する適切なタイミングとして、年齢ごとの治療内容を解説します。

3歳〜5歳:マウスピース(ムーシールド)で「舌の癖」を治す

3歳〜5歳の幼児期には、本格的な矯正の前段階として、受け口の原因となっている癖を取り除く治療を行います。

この時期の受け口の多くは、遺伝的な要因だけでなく「舌の位置が低い」「唇を噛む癖がある」などの機能的な問題が関係しています。

とくに、舌が常に下の前歯を押していると下顎が過剰に成長する一因となります。

舌の癖を治すための治療内容としては、「ムーシールド」や「プレオルソ」などのマウスピース型の装置を使用します。

これらのマウスピースによって、寝ている間に装着することで舌を正しい位置(上顎)に持ち上げるトレーニングができます。歯を動かすものではありません。

マウスピースでのトレーニングによって筋肉のバランスが整えば、顎の成長が正常な軌道に戻り、早ければ数ヶ月〜半年程度で受け口が改善するケースも

「3歳で矯正なんて早すぎる?」と思われるかもしれませんが、装置を口に入れられるようであれば、早めに悪習癖を断つことが最大の予防になります。

6歳〜12歳:骨格へアプローチできる「黄金期」

前歯が永久歯に生え変わる6歳〜12歳頃(混合歯列期)は、子供の矯正における「ゴールデンエイジ(黄金期)」と呼ばれ、最も治療効果が高い時期です。

なぜなら、子供の受け口の原因の多くは下顎が出ていることではなく、上顎の成長不足にあるためです。

上顎の骨は10歳頃までに成長のピークを迎えて固まってしまうため、以後は骨格の改善が非常に難しくなります。

6歳〜12歳頃の治療では、急速拡大装置前方牽引装置などを使用します。

上顎の骨を横に広げたり、前に引っ張ったりすることで、成長の遅れている上顎を活性化させ、下顎とのバランスを整えます。

この時期にしっかり土台(骨格)を作っておくことで、将来全ての歯が生え揃った際、きれいな歯並びを実現できる可能性が高まります。

中学生以降:骨格のズレの程度に合わせて治療内容を判断

中学生以降(永久歯列期)になると第二次性徴(思春期)に入り、身長が急激に伸びて下顎の骨もグンと成長する特性があるため、治療のアプローチが変わります。

この時期には、小学生の時に一度治ったはずの受け口が再発したりズレが大きくなったりする場合があります。

骨格のズレが軽度であれば、ワイヤー矯正(マルチブラケット)で歯の角度を調整して噛み合わせを作ります(カムフラージュ治療)。

しかし、骨格的なズレが著しく大きい場合、あえて成長が完全に止まる(18歳〜20歳頃)のを待ってから「外科矯正(顎の骨を切り、矯正治療を併用すること)」を行う判断をすることもあります。

受け口を歯の動きだけで無理に治そうとすると、顔つきが不自然になるリスクがあるためです。

中学生以降で受け口の治療を行う場合は、子供の成長を慎重に見守りながら、定期的に専門医のチェックを受けることが重要です。

自然に改善も期待できる?子供の受け口を放置するリスク

「乳歯はいずれ抜けるから、矯正は永久歯になってから考えればいい」という考えで歯科検診での指摘をスルーするとリスクがあります。

受け口(反対咬合)は単なる歯並びの乱れではなく、骨格の成長バランスとも関わりのある問題だからです。

適切な時期に治療せず放置すると、成長とともに骨格のズレが大きくなり、治療するには外科手術が必要になることも少なくありません。

ここでは、受け口を放置することで生じる具体的なリスクと、自然治癒の可能性について解説します。

受け口が自然に改善される確率は約10%程度

「大きくなれば受け口は自然に治る」という噂を耳にすることがあるかもしれませんが、医学的なデータでは、自然治癒する確率は決して高くありません。

実際、乳歯列期の受け口が永久歯への生え変わりとともに自然治癒する確率はわずか6%〜10%程度と言われています。

つまり、受け口の子供の90%以上は、何もしなければ受け口のまま成長していくということです。

この低い確率に賭けて「様子を見て」しまうと、治療のベストタイミングを逃すリスクが大きいと言えます。

受け口に気づいた時点で専門医に相談し、適切な管理下で成長を見守ることが確実です。


放置すると「しゃくれ顔」や「サ行・タ行の発音障害」につながる

受け口を放置する最大のリスクは顔貌(見た目)への影響です。

上顎の成長が妨げられて下顎ばかりがどんどん前に成長してしまうため、いわゆる「しゃくれ顔」(横顔が三日月型の顔貌)が定着してしまいます。

また、見た目だけでなく「発音」にも支障をきたします。

上の前歯と下の前歯の隙間から空気が漏れやすくなるため、舌を歯に当てて発音する「サ行」や「タ行」が不明瞭になりがちです。

活舌の悪さがコンプレックスとなり、人前で話すのが苦手になってしまう子供も少なくありません。

噛み合わせが悪く消化不良や顎関節症の原因になることも

受け口の影響は口の中だけにとどまらず、全身の健康にも波及します。

受け口だと前歯が噛み合わないため、麺類を噛み切ったり、食べ物を奥歯ですり潰したりする効率(咀嚼効率)が著しく低下します。

その結果、食べ物を丸飲みする癖がつきやすく、胃腸に負担をかけて慢性的な消化不良を引き起こす原因となります。

さらに、噛み合わせのズレは顎の関節に不自然な負荷をかけ続けます。

これにより、口を開けると音が鳴ったり、口が痛くて開かなくなったりする「顎関節症(がくかんせつしょう)」になる可能性があります。

不正咬合は特定の歯に負担をかけることがあり、長期的な歯の健康に影響する可能性があります。


子供の受け口矯正の主な3つの治療法

矯正というと歯に金属のワイヤーをつけるイメージを持つ人も多いかもしれませんが、子供の受け口治療では、取り外しができるマウスピースや寝ている時だけ使う装置が主流です。

受け口の原因(歯の傾きなのか、骨格のズレなのか)や子供の年齢によっても、最適な装置は異なります。

ここでは、小児矯正で頻繁に使用される代表的な3つの装置について、仕組みと特徴を解説します。

ムーシールド・プレオルソ:寝ている間に装着するマウスピース型

主に3歳〜小学校低学年の子供に使用されるのが、ムーシールドやプレオルソと呼ばれるマウスピース型の装置です。

ムーシールドやプレオルソは、歯を直接動かす力(機械的な力)で治すのではなく、口周りの筋肉のバランスを整えることで間接的に歯並びを改善する「機能的矯正装置」です。

受け口の子供は、舌で下の前歯を押していたり上唇を噛んだりする無意識の癖を持っていることが多く、顎の成長を歪める原因になります。

マウスピースを寝ている間(就寝中)に装着することで、舌を正しい位置(上顎)に持ち上げて唇の圧力を排除します。

その結果、上顎の正常な成長が促され、数ヶ月から1年程度で受け口が改善に向かいます。

痛みもほとんどないため、小さい子供でも無理なく続けられるのが最大のメリットです。


前方牽引装置:上顎を前方に引っ張り骨格のバランスを整える

「前方牽引装置(ぜんぽうけんいんそうち)」は、小学校中学年〜高学年で「上顎が小さく、顔の中央が凹んで見える」などの骨格的な問題がある場合に使用されます。別名「フェイスマスク」です。

前方牽引装置は、口の中につける装置と、おでこと顎に当てるマスクのような外部装置をゴムで繋ぎ、上顎全体を前方にグッと引っ張り出します。

「顔の外につけるなんて子供が嫌がるのでは」と心配になるかもしれませんが、使用するのは1日に12時間程度です。

自宅にいる時と寝ている間だけ装着すれば十分なため、学校につけていく必要はありません。

骨が柔らかい成長期にしかできない治療法ですが、効果が高いとされ、成長期の受け口治療でも確実な選択肢の一つです。

リンガルアーチ:ワイヤーを通して内側に倒れた前歯を押し出す

骨格には大きな問題がなく、「上の前歯が内側に倒れ込んで、下の前歯の内側に入ってしまっている」というケースでは、「リンガルアーチ(舌側弧線装置)」が選ばれます。

リンガルアーチは、奥歯を固定源にして、歯の裏側(舌側)に沿わせたワイヤーの弾力を利用し、内側に倒れている上の前歯を「裏から前へ」押し出す装置です。

固定式のため取り外しはできませんが、装置が外からほとんど見えないというメリットがあります。

また、24時間持続的に力がかかるため、比較的短期間(数ヶ月程度)で前歯の噛み合わせを「ジャンプ(乗り越え)」させることが可能です。

一度噛み合わせが正常(上の歯が外側)になれば、舌の前歯がストッパーとなって後戻りしにくくなるため、早期治療の仕上げとしてよく用いられます。

小児矯正の費用相場と医療費控除

子供のうち(特に1期治療)に矯正を始めることには、費用面でもメリットがある場合が多いと言えます。

ここでは、受け口治療にかかる費用の目安と、国の負担軽減制度について解説します。

1期治療の相場は30万〜50万円

装置の種類や地域にもよりますが、子供の矯正(1期治療)にかかる費用の相場はおおよそ30万〜50万円程度が一般的です。

基本的な治療料金に加え、以下のような別料金がかかる場合があります。

  • 初回の検査・診断料(3万〜5万円)
  • 毎月の通院ごとの調整料(3,000円〜5,000円)

安価ではありませんが、大人になってから矯正(成人矯正)を始めた場合、相場は80万〜100万円以上に跳ね上がります。

さらに、受け口を放置して骨格のズレが重症化し、外科手術が必要になった場合の身体的・金銭的負担は計り知れません。

子供のうちに治療を開始して土台を整えておけば、将来的な本格矯正(2期治療)が不要になったり、必要になったとしても簡単な処置で済んだりします。

つまり、トータルコストで見ると安く抑えられる可能性が高いと言えます。

多くの歯科医院では、1期治療から2期治療へ移行する際、差額のみの支払いで済むシステムを採用しているため安心です。

子供の矯正は医療費控除の対象になりやすい

矯正費用は高額ですが、子供の矯正治療は、国の制度である「医療費控除(いりょうひこうじょ)」の対象になることがほとんどです。

医療費控除とは、1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費の合計が10万円を超えた場合、確定申告をすることで納めた税金の一部が還付される(戻ってくる)仕組みです。

「医療費」として扱える費用
  • 治療費
  • 検査代
  • 装置代
  • 通院のための交通費(子供と付き添いの親の分も含む/電車やバス代などの公共交通機関の運賃に限る)
  • 中学生以下の子供の矯正は、健全な成長を促すための「医療行為」として認められやすい傾向があります。

    大人だと多くの場合、矯正は審美目的とみなされて医療費控除の対象外になります。

    医療費の申告には歯科医院の領収書が必須です。領収書を再発行できない医院も多いため、捨てずに大切に保管しておきましょう。

    通院時にかかった交通費については、日付と金額をノートなどにメモしておく必要があります。


    子供の受け口や歯科矯正に関するよくある質問

    ここでは、子供の受け口と矯正に関するよくある質問に回答します。

    Q. 大人になってからでも受け口は治せますか?

    A. 受け口の度合いによっては治せますが、治療の負担とリスクが大きくなる傾向があります。

    大人になってからでも、受け口を治すことは技術的に可能です。ただし、子供の矯正のように顎の成長を利用することができないため、治療の選択肢が限られます。

    歯並びの調整で治せる受け口であれば、ワイヤー矯正やマウスピース矯正で、歯の角度を変えて噛み合わせを作ります。

    骨格に起因する受け口の場合は、顎の骨自体を切って位置をずらす外科手術(外科的矯正治療)が必要になることが一般的です。

    手術を伴う治療では、場合によっては入院が必要で、顔の腫れや麻痺のリスクを伴います。

    子供のうちに治療しておけば、大人になって手術せずに済むかもしれません。早期の治療を検討しましょう。

    大人になってからの矯正方法について興味がある人は、以下の関連記事も参考にしてください。


    ▶関連記事:ワイヤー矯正の値段はいくら?種類別・装置別の費用相場と内訳を徹底解説

    ▶関連記事:【歯科医監修】マウスピースによる歯列矯正の効果は?適用症例や費用、注意点を徹底解説

    Q.「プレオルソ」と「ムーシールド」の違いは何ですか?

    A. 主に、素材の硬さと対応できる症例の幅が異なります。

    口周りの筋肉を整えて受け口を治すという目的はどちらも同じですが、それぞれ特徴があります。

    ムーシールドプレオルソ(タイプIII)
    素材硬いプラスチック(レジン)製柔らかいポリウレタン(ゴムに近い素材)製
    特徴・受け口治療のパイオニア的な装置
    ・硬いため調整しやすく、舌を持ち上げる力が強力
    ・主に3歳〜5歳の受け口改善に特化している。
    ・弾力があり痛みが少ないため、子供が嫌がりにくいのがメリット
    ・受け口だけでなく、その後の歯並び調整にも応用が効きやすい

    子供の口の大きさや、受け入れ状況(硬いのを嫌がるかなど)によって、歯科医師が最適な方を選択します。

    どちらかが優れているというわけではありません。


    まとめ|子供の受け口は歯科矯正専門医に相談しよう

    子供の受け口治療において最も重要なのは、今後の顎の成長をどう予測しコントロールするかです。

    成長期の受け口は変化が早く、診断を誤ると「矯正したのにしゃくれてしまった」という結果になりかねません。

    そのため、歯科矯正専門医や、一般歯科の中でもとくに小児矯正や咬合誘導(こうごうゆうどう)に精通した歯科医師に相談できると安心です。

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    受け口は、治療開始のタイミングが遅れるほど、治すのが難しくなる症状です。

    「あの時治しておけばよかった」と後悔しないために、歯科まもる予約で気になる医院を見つけ、歯科医師に相談することから始めてみてください。

    今この瞬間の行動が、子供の将来の健康と、自信に満ちた笑顔を守ることにつながるかもしれません。

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