「食事中にガリッとしたと思ったら、詰め物が取れていた…」
「痛くないから、このまま放っておいても大丈夫?」
突然詰め物が取れてしまい、焦っていませんか?
詰め物が取れるトラブルはよく起こりますが、その後の対応次第で、歯の寿命が大きく変わります。
一番やってはいけないのは、市販の接着剤などを使って自分で戻そうとすること。そして「痛くないから」とそのまま放置することです。
この記事では、詰め物が取れた時にすぐにやるべきことと絶対にやってはいけないこと、再発を防ぐための治療まで、歯科医師が詳しく解説します。
歯科医師:鈴木 遼介
私たちの口の中にはたくさんの細菌がおり、過酷な状況にさらされています。食事や食いしばりによって人工物である補綴物に力が加わり、詰め物と歯を繋ぎ止めるセメントが壊れ外れます。
この状態で長期間放置をしてしまうと、抜歯が必要になる場合があります。ブリッジ・入れ歯・インプラントなどの治療が必要になり、結果として時間や費用面にも大きい負担につながります。
詰め物が取れた時は、なるべく早く近くの歯科医院での治療を受診してください。忙しくて時間がない場合、その旨を伝えることで、応急処置として歯の表層に仮蓋(クッションの役割)をしてもらうことも可能です。再度時間があるときに適切な治療を受けましょう。
- 詰め物が取れた時にすぐにやるべきこと
- 詰め物が取れた時に絶対にやってはいけないこと
- 再発を防ぐための治療
正しい知識で大切な歯を守り、スムーズに治療を受けられるようにしましょう。
詰め物が取れたらとるべき3つの行動
食事中やふとした瞬間に詰め物が取れてしまうとびっくりしますし、どうしたらいいかわからなくなりますよね。
しかし、焦りは禁物。詰め物が取れた際にとるべき行動は3つあります。
- 取れた詰め物を保管しておく
- 歯医者を予約する
- 受診まで患部を清潔に保つ生活を意識する
この3つを守れば、その後の治療費を抑え、歯の寿命を延ばすことができます。それぞれについて詳しく説明します。
取れた詰め物を保管しておく
取れてしまった銀歯やプラスチックの詰め物は捨てず、必ず手元に保管しておいてください。
汚いから、あるいはもう使えないだろうからと自己判断で捨ててしまう人が多いですが、実はそのまま再利用(再装着)できるケースが多々あります。
詰め物自体に変形がなく、土台の歯に新たな虫歯(二次カリエス)がなければ、歯科医院で専用のセメントを使って詰め物を付け直すだけで治療が完了します。
詰め物をそのまま使うので費用も千円程度で済み、通院もその日の1回で終わるため、時間的・経済的なメリットが非常に大きいです。
詰め物の保管方法は、軽く水洗いして汚れを落とし、小さなケースやチャック付きの袋に入れるのがベストです。
ティッシュにくるむと、ゴミと間違えて捨てられてしまったり、圧力がかかって変形したりする恐れがあるため避けましょう。
歯医者を受診する際は、詰め物を忘れずに持参してください。
歯医者を予約する
詰め物が取れたら、できるだけ早めの日程で歯科医院を予約してください。
「痛くないから時間ができたら行けばいいや」と受診を先送りにしてはいけません。
詰め物が取れた直後の歯は、エナメル質よりも柔らかい象牙質が剥き出しになっている無防備な状態です。
象牙質は酸や細菌に弱いため、数日放置しただけで虫歯が一気に進行し、神経まで達して激痛を引き起こすことがあります。
また、噛み合わせのバランスが崩れるため、残っている薄い歯の壁に過度な力がかかって歯が根元から割れてしまう(歯根破折)リスクも高まります。
歯が割れてしまうと、最悪の場合は抜歯しか選択肢がなくなります。
痛みがないことは大丈夫な理由になりません。詰め物が取れたその日が受診のタイミングと考え、可能な限り早めに予約を取りましょう。
受診まで患部を清潔に保つ生活を意識する
予約日まで数日空いてしまう場合、詰め物が取れた患部を清潔に保つよう心がけましょう。
詰め物が取れた穴に食べカスが詰まったままになると、そこで細菌が爆発的に繁殖し、歯茎の腫れや口臭、急激な虫歯の進行を招きます。
食事の際はなるべく詰め物が取れた側では噛まないようにし、硬いおせんべいや粘着性のあるガム、キャラメルなどは避けてください。穴に入り込むと取れなくなったり歯を割ったりする原因になります。
食後はすぐに歯磨きを行いますが、患部はデリケートなのでゴシゴシと強く磨くのは禁物です。柔らかめのブラシで優しく汚れをかき出すか、強めのブクブクうがいで食べカスを洗い流すようにしましょう。
冷たい水がしみる場合は、ぬるま湯を使うと痛みを防げます。
絶対NG!詰め物が取れた時にやってはいけないこと
詰め物が取れた時、歯科医院に行く時間がないからといって、自分でなんとかしようとしていませんか。
良かれと思ってやった応急処置がかえって治療を困難にし、治療にかかる費用も期間も倍増させてしまうことがあります。
ここでは、歯科医師がこれだけは絶対にやめてほしいと警告する、3つのNG行動について解説します。
大切な歯を守るために、必ず確認してください。
市販の瞬間接着剤(アロンアルファ)等で自分でつける
取れた詰め物を、市販のアロンアルファなどの強力瞬間接着剤で元の位置に戻そうとするのは絶対にやめましょう。大変危険です。
まず、工業用の接着剤は人体に使うことを想定していないため、体に有害な成分が含まれている可能性があります。
さらに恐ろしいのは、治療への悪影響です。詰め物を自分でつけると、ミクロ単位のズレや隙間が必ず生じます。その隙間で細菌が繁殖し、中で深刻な虫歯が進行してしまいます。
また、ガチガチに接着されてしまうと、歯科医院で外そうとしても外れず、最終的に詰め物ごと歯を大きく削り取るしかなくなります。
結果として、抜歯のリスクを一気に高めることになります。
取れた穴を手や舌で触る
詰め物が取れた穴は気になってしまうものですが、手や舌先で何度も触れるのはやめましょう。
舌には多くの雑菌が付着しているうえ意外と力が強いため、無防備な象牙質や歯茎を傷つけ、感染を引き起こす原因になります。
詰め物が取れて鋭利になった部分で舌が切れ、口内炎になることもあります。
また、穴が開いたまま食事をすると食べ物が詰まりやすいですが、これを爪楊枝や安全ピンなどで無理やりほじくり出すのも危険です。歯茎を突き刺して炎症を悪化させる恐れがあります。
ブクブクうがいをしても詰まったものが取れない場合は無理に取ろうとせず、そのまま歯科医院へ行きましょう。専用の器具で安全に取り除いてもらえます。
▶関連記事:治らない白い口内炎は危険なサイン?【歯科医師監修】原因と病院に行くべき症状の見分け方
対処せず放置する
痛みがないからといって歯科医院の受診を先延ばしにするのも、非常にリスクの高い行為です。
痛みがないのは、すでに神経を取っている歯だからかもしれません。
しかし、神経がない歯には防御力がなく、虫歯になっても痛みを感じないため、気づかないうちに内部がドロドロに溶けてしまうことがあります。
また、詰め物がなくなった歯は強度が著しく低下しています。放置したまま噛み続けていると、ある日突然、硬いものを噛んだ拍子に歯が根元からバキッと割れてしまうことがあります(歯根破折)。
こうなると、もう接着剤などで詰め物を付け直すことはできないため、抜歯しか選択肢がなくなります。
詰め物が取れた状態での放置は、大切な歯を失う最短ルートだと認識してください。
詰め物が取れた原因を知って再発を防ごう
ポロリと詰め物が取れたのは運が悪かったわけではなく、必ず明確な原因があります。
詰め物を付け直すだけで済む場合もありますが、多くの場合は歯や詰め物そのものにトラブルが起きています。
ここでは、詰め物が取れる主な3つの原因について解説します。詰め物が取れた理由を知り、歯に潜むトラブルを解決しましょう。
詰め物の下での虫歯の再発(二次カリエス)
詰め物が取れる原因として最も多いのが、二次カリエスと呼ばれる虫歯の再発です。
一度治療した歯でも安心はできません。人工物と自分の歯の境目は汚れが溜まりやすく、最も虫歯になりやすいリスクの高い場所なのです。
時間の経過とともに、詰め物と歯の間にわずかな隙間が生じ、そこから虫歯菌が侵入します。
そして詰め物の下でひっそりと虫歯が広がり、歯の土台が溶かされてスカスカになった結果、詰め物を支えきれなくなってしまうのです。
この場合、取れた詰め物をそのまま戻すことはできません。再び虫歯を削り取り、新しい詰め物を作り直す治療が必要になります。
接着剤(セメント)の経年劣化や金属疲労による変形
どんなに精巧に作られた詰め物であっても、永遠に使い続けることはできません。
特に保険診療で使われる銀歯や歯科用プラスチックの場合、一般的に数年から10年程度が寿命の目安と言われています。
口の中は、日々熱いスープや冷たいアイスが通り、噛む力という過酷なストレスにさらされています。
詰め物を長年使い続けるうちに、固定していた接着剤(セメント)が唾液で少しずつ溶け出して接着力が弱まったり、金属そのものが変形(金属疲労)して浮き上がってきたりします。
古い詰め物が取れた場合は寿命と捉えましょう。より精度の高い、新しい素材への交換を検討するタイミングかもしれません。
歯ぎしり・食いしばり
虫歯もなく、詰め物もまだ新しいのに取れてしまった場合、原因は歯ぎしりや食いしばりにある可能性が高いです。
睡眠中や日中何かに集中している時に歯と歯が接している状態だと、歯には無意識のうちに体重の数倍もの凄まじい力がかかっています。
この過度な負担が毎日積み重なることで、詰め物の接着剤が劣化したり詰め物の一部が欠けたりして、物理的に弾き飛ばされてしまうのです。
特に、セラミックなどの硬い素材を入れた直後に割れたり取れたりする場合は、噛み合わせの調整や夜間のマウスピース(ナイトガード)の使用など、力のコントロールが必要です。
詰め物が取れた場合の治療費用
詰め物が取れてしまった時、治療費も気になるかもしれません。予想外の出費に不安を感じますよね。
歯科治療の費用は、保険診療を選ぶか自費診療(自由診療)を選ぶかによって大きく異なります。
また、取れた詰め物をそのまま再利用できるのか・ゼロから作り直す必要があるのかによっても金額は変わってきます。
ここでは、それぞれのケースにおける一般的な費用の相場と、素材選びのポイントについて解説します。
予算と将来的な歯の健康の両方を考えて、納得のいく選択をしましょう。
詰め物をそのまま付ける場合/作り直す場合の費用の違い
最も費用を抑えられるのは、取れた詰め物をそのまま再装着できるケースです。
この場合、検査料や再診料を含めても、保険適用(3割負担)で約2,000円から3,000円程度で済むことがほとんどです。治療も1回で完了します。
一方、詰め物が変形していたり歯に新たな虫歯ができていたりして作り直し(再製)が必要な場合は、費用が高くなります。
型取りや噛み合わせの調整など、数回の通院が必要となり、保険の銀歯で作り直す場合でも、トータルで3,000円から5,000円前後の費用がかかります。
さらに、神経の治療が必要なほど虫歯が進行している場合、治療期間が長くなり、その分費用が加算されていきます。
保険診療の銀歯やコンポジットレジン(CR)は安価だが劣化しやすい
保険診療の最大のメリットは、国が定めた一律の価格で安価に治療を受けられることです。
小さな虫歯ならコンポジットレジン(CR)という白いプラスチック、大きな虫歯なら金銀パラジウム合金(いわゆる銀歯)が使われます。
歯の側面の虫歯や被せ物の場合には、詰め物や被せ物の選択肢として白いCAD/CAM(プラスチックとセラミック)があります。
保険適用の詰め物なら経済的な負担は少ないですが、経年劣化の早さがデメリットです。
銀歯は時間の経過とともに接着剤が溶け出しやすく、プラスチックは変色したりすり減ったりしやすい性質があります。平均して5年から7年程度で寿命を迎え、その度に再治療が必要になるリスクがあることを理解しておく必要があります。
また、金銀パラジウム合金は金属アレルギーの心配がある人には不向きです。
自費診療のセラミックなら適合が良く虫歯の再発リスクが低い
自費診療は全額自己負担となるため、詰め物1本あたり3万円から10万円程度と費用は高額になります。
しかし、セラミックやゴールド(金歯)などの高品質な素材を使用できるため、機能面と審美面で非常に優れています。
特にセラミックは、歯と詰め物を化学的に強固に接着させることができるため、細菌が入り込む隙間ができにくく、二次カリエス(虫歯の再発)のリスクを大幅に下げることができます。
表面がツルツルしていて汚れがつきにくく、見た目も天然の歯と見分けがつかないほど自然です。
初期費用はかかりますが、再治療を繰り返して歯を失うリスクを減らせるため、長い目で見ればコストパフォーマンスが良いと言えます。
詰め物が取れた時に関するよくある質問
最後に、詰め物が取れた場合によくある質問に回答します。
Q. 誤って詰め物を飲み込んでしまいました。体に害はありますか?
A. ほとんどの場合数日で便と一緒に排泄されるため、過度に心配する必要はありません。
食事と一緒にうっかり飲み込んでしまっても、銀歯やセラミック、プラスチックなどの歯科材料は消化吸収されないため、体に害を及ぼすことなく体の外へ出ていきます。
無理に吐き出そうとする必要はありません。
ただし、例外として注意が必要なケースがあります。
もし飲み込んだ時に激しくむせてその後も咳が続く場合は、食道ではなく気管に入ってしまった(誤嚥)可能性があります。この場合は肺炎を引き起こすリスクがあるため、すぐに医療機関を受診してください。
また、詰め物が大きく尖っている場合や、数日経ってもお腹の痛みが続く場合、念のため内科に相談することをおすすめします。
Q. 詰め物を作ったところではなく他の医院でも対応してもらえますか?
A.はい、全く問題ありません。遠慮なく近くの歯科医院を受診してください。
詰め物が取れるトラブルは緊急性が高く、治療した歯科医院でなくても対応してもらえます。
その際、取れた詰め物が手元にあるなら必ず持参してください。詰め物の状態が良く、歯に虫歯などがなければ、他院で作製したものであってもそのまま付け直せます。
ただし、元の歯科医院と新しい歯科医院では、使用しているセメントの種類や治療方針が異なる場合があります。
また、詰め物が合わないと判断された場合は、作り直しを提案されることもあります。「歯を守るための最善の処置」として受け入れましょう。
Q. 予約日まで痛みが我慢できません。市販の痛み止めを飲んでもいいですか?
A.はい、痛みが辛い時は我慢せずに市販の鎮痛剤(ロキソニンやバファリンなど)を服用してください。
痛みを我慢して食事が摂れなくなったり、睡眠不足になったりすると、体の抵抗力が落ちて炎症が悪化してしまうことがあります。
薬で痛みをコントロールし、体を休めることは有効な応急処置の一つです。
ただし、痛み止めはあくまで脳への痛みの伝達を一時的にブロックしているだけであり、原因である虫歯や炎症が治ったわけではありません。
薬が切れるとまた痛みがぶり返しますし、飲み続けると胃に負担がかかります。
「薬を飲めば痛くないから大丈夫」と受診を先延ばしにするのは絶対に避けてください。
薬が効かないほどの激痛がある場合、予約時にその旨を伝えて急患として診てもらえないか相談してみましょう。
まとめ|自己判断せず取れたらすぐにプロへ相談を
詰め物が取れた時、自己判断は禁物です。痛くないから・忙しいからと後回しにしたり、自分で接着剤でつけたりすることは、大切な歯の寿命を縮める行為です。
歯のトラブルが起きた時はすぐに歯科医院を受診することが、結果として最も安く、早く、そして痛みを抑えて治療する近道です。
プロの診断と治療を受け、自分の歯を一日でも長く使えるように、歯の健康を守りましょう。
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急に詰め物が取れてしまった時、どこの歯科医院に行けばいいのか迷ってしまう人も多いでしょう。
特に、引っ越したばかりでかかりつけ医がいない場合や、職場の近くで探したい場合などはなおさらです。
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