毎日丁寧に歯磨きをしているのに、気になってくる歯石や口臭。それは、毎日のセルフケアだけでは落としきれない汚れが原因かもしれません。
歯の寿命を延ばすために最も効果的なのは、歯科医院で受けられる、プロによる歯のクリーニングです。
しかし、いざ歯科医院に行くとなると、施術時の痛みや費用が不安だという人も多いでしょう。歯のクリーニングに保険が適用されるのか心配なのもわかります。
この記事では、歯のクリーニングの驚くべき効果から、保険と自費の費用の違い、適切な頻度まで、歯科医師が分かりやすく解説します。
歯科医師:鈴木 遼介
歯周病の原因は歯垢と呼ばれる細菌です。歯周病原因菌は、全身疾患である「糖尿病」「早産・低体重児出産」「肥満」「心筋梗塞・動脈硬化・脳梗塞」に関与しています。
また、歯周病は静かに進行する「沈黙の病気」です。初期には痛みがなく、自覚のないまま歯を支える骨を少しずつ溶かしていきます。放置すれば、最終的に歯が抜け落ちてしまうことも珍しくありません。
毎日の歯磨きだけでは防ぎきれない歯石や細菌を、定期的なクリーニングで除去することが大切です。3〜6か月ごとのプロフェッショナルケアと丁寧なセルフケアを習慣にすれば、歯ぐきは健康を保ち、歯の寿命はより長くなります。
歯を守ることは、体の健康を守ること。今から「未来の歯を残す通院」を始めましょう。
- 歯のクリーニングの効果
- 保険適用のクリーニングと自費治療の違い
- クリーニング時の痛みの原因と対処法
- クリーニングの適切な頻度
- 歯科医院への通院をサボるリスク
80歳まで20本の歯を維持するために、正しいメンテナンスの知識を身につけましょう。
歯のクリーニングは予防歯科の要!
歯をきれいにする歯のクリーニングを、エステ感覚の処置だと勘違いしていませんか。
歯のクリーニングは、将来的に自分の歯を失わないために、最も確実で効果的な予防医療なのです。
歯科医院で行うプロフェッショナルケアには、セルフケアでは得られない3つのメリットがあります。ここでは、その具体的な効果について解説します。
歯ブラシでは取れない歯石とバイオフィルムを徹底除去できる
どんなに歯磨きが上手な人でも、セルフケアで除去できる汚れは全体の6割から8割程度だと言われています。
特に問題となるのが、歯石(プラーク)とバイオフィルムです。
歯垢は放置すると唾液中の成分と結びついてわずか2日ほどで石のように硬い歯石へと変化します。一度歯石になってしまうと、もう歯ブラシでこすっても取り除くことはできません。
また、バイオフィルムとは細菌がスクラムを組んで強力な膜を作った状態のことです。これは殺菌剤さえも跳ね返してしまうため、うがい薬なども効きません。
歯垢やバイオフィルムを物理的に破壊して除去できるのは、歯科専用の器具を使ったプロのクリーニングだけなのです。
虫歯・歯周病のリスクを軽減できる
日本人が歯を失う原因の第1位は歯周病、第2位は虫歯です。(一定期間ごとに調査が行われるため、順位はデータごとによって変動します。)
そして、虫歯と歯周病の直接の原因は、口の中に住み着く細菌です。
定期的なクリーニングによって、細菌の温床である歯石やバイオフィルムを取り除くことは、歯の病気の発症リスクを下げます。
実際、予防歯科先進国のスウェーデンでは、定期的な歯のメンテナンスが定着しており、高齢になっても多くの人が自分の歯を維持しています。
痛みが出てから虫歯を削る治療を繰り返すのではなく、痛くなる前に汚れを落とす。このような習慣の転換こそが、80歳になっても20本以上の歯を残し、美味しい食事を楽しみ続けるための唯一の近道なのです。
口臭の原因菌をリセットして口のネバつきから解放できる
自分では気づきにくい口臭の悩み。主な原因は、歯周病菌が作り出す揮発性硫黄化合物というガスや、溜まった汚れが腐敗して出す臭いです。
マウスウォッシュやガムで一時的に臭いを誤魔化しても、口臭の発生源である汚れが残っていては、すぐに臭いが発生してしまいます。
歯科医院でのクリーニングなら、普段の歯磨きでは届かない歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)の汚れまで洗い流すため、臭いの元を根本からリセットすることができます。
処置後は、舌で歯を触った時のザラザラ感や、朝起きた時の口の中の不快なネバつきがなくなり、驚くほどスッキリとした爽快感を得られます。
口内環境が清潔になれば自信につながり、口臭を気にせず会話を楽しめるようになるでしょう。
歯石の除去について気になる人は、以下の関連記事も参考にしてください。
▶関連記事:歯石の取り方|自宅ケアと歯科医院での除去方法・予防策を徹底解説
▶関連記事:【歯科医が警告】自分で歯石を取る方法はない!絶対NGな理由と歯石予防法
いくらかかる?保険適用と自費(PMTC)の決定的な違い
歯科医院で受けられる歯のクリーニングには、保険が適用される場合と適用されず自費で行う場合があります。
結論として、歯周病などの病気を治すための治療なら保険適用、病気にならないための予防や見た目の改善を目的とするなら自費診療となります。
ここでは、保険適用のクリーニングと自費のクリーニングについて、それぞれの具体的な特徴と費用について詳しく解説します。
保険診療の目的は歯周病治療
保険適用で行うクリーニングは、医学的には歯周病治療に分類されます。
歯周病を治すことが目的なので、事前に歯周ポケットの検査やレントゲン撮影を行い、治療が必要であると診断されることが必須条件です。
この場合、処置内容はスケーリングと呼ばれる歯石除去が中心です。超音波スケーラーという器具を用いて、歯に付着した固い歯石を物理的に弾き飛ばします。
費用は3割負担で3000円前後と安価で済むでしょう。
しかし、一度に行える処置の範囲には制限があるため、汚れが多い場合は数回の通院に分けて処置を受けなければならないことがあります。
また、タバコのヤニや茶渋などの着色汚れは病気の原因とはみなされないため、原則として保険のクリーニングでは除去してもらえません。
ただし、歯面研磨で軽度の着色が改善される場合はあります。
自費診療(PMTC)の目的は予防と審美の両面
自費診療で行うクリーニングは一般的にPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)と呼ばれ、専門機器を使用して行う徹底的な歯面清掃を指します。
PMTCは、虫歯や歯周病などの病気への予防と、本来の歯の美しさを取り戻す審美の両方を目的にします。
保険のルールに縛られないため、以下の処置を時間をかけて丁寧に行うことができます。
費用は全額自己負担となり、5000円から15000円程度が相場です。
一見高く感じるかもしれませんが、通常は1回の通院でエステ後のようなツルツルの仕上がりになるため、多くの人がその効果に満足できます。痛みも少ないので安心です。
【比較表】費用・時間・内容の違い
保険適用のクリーニングか自費でのPMTCか、どちらを選ぶべきか迷った時のため、おもな違いを表にまとめました。
| 保険診療(歯周病治療) | 自費診療(PMTC) | |
| 目的 | 歯周病の治療(歯石除去) | 予防・審美(着色除去・研磨) |
| 費用(目安) | 3,000円前後(3割負担) | 5,000円から15,000円 |
| 通院回数 | 状態により複数回かかる | 原則1回で完了 |
| 着色汚れ | 除去できない | きれいに除去できる |
| 処置の制限 | 制限あり | 制限なし(オーダーメイド) |
費用を抑えて歯石だけを取りたいなら保険適用を、忙しいから1回で済ませたい・着色汚れも落としてツルツルにしたいならPMTCを選ぶのが賢い選択です。
目的と予算に合わせて、最適なプランを選んでください。
クリーニングは痛い?痛みの原因と対処法
歯医者でのクリーニングと聞くと、あのキーンという音や、チクッとする痛みを想像して身構えてしまう方も多いかもしれません。
しかし、クリーニングは本来痛みを伴うものではありません。痛みを感じる場合、主な原因は歯茎の炎症と知覚過敏の2つです。
痛みの正体と適切な対処法を知っておけば、リラックスして施術を受けられるでしょう。
ここでは、クリーニングで歯が痛むメカニズムと、痛みを最小限に抑えるためのポイントについて解説します。
歯石が溜まっているほど痛みを感じやすい理由
久しぶりに歯医者に行った際に、歯石を取る目的のクリーニングが痛くて血が出たという経験はありませんか。
歯石が溜まると周りに無数の細菌が繁殖し、歯茎に炎症を引き起こします。この状態がいわゆる歯周病や歯肉炎です。
炎症を起こして腫れ上がった歯茎はわずかな刺激にも過敏に反応するため、歯石を取り除く器具が少し触れただけでも、痛みを感じたり出血したりしてしまうのです。
歯茎が健康であれば、同じ処置をしても痛みを感じることはほとんどありません。
クリーニング時の痛みや出血は歯科衛生士の技量によるものではなく、歯茎のSOSなのです。歯茎に炎症があるうちのクリーニングは辛いかもしれませんが、治療を重ねれば痛みは減っていきます。
知覚過敏がある方は要注意!
歯茎の腫れがなくとも、知覚過敏が原因でクリーニング時に歯が痛むケースがあります。
歯のクリーニングでは、超音波スケーラーという専用の器具から水を出しながら歯石を砕きます。
この時、冷たい水が歯にしみたり、超音波の振動が神経に響いてキーンとした鋭い痛みを感じたりすることがあります。
特に、歯周病で歯茎が下がって歯の根元が露出している人は、この痛みを感じやすいかもしれません。
普段から冷たいものがしみる自覚症状がある場合は、処置が始まる前に担当者に伝えてください。
水温の調整や超音波の出力調整、あるいは超音波を使わずに手動の器具で優しく除去するなど配慮してもらうことで、不快感を大幅に軽減できます。無理に痛みを我慢する必要はありません。
痛みが苦手な人は自費のクリーニング(PMTC)がおすすめ
痛いのがどうしても怖い・リラックスして施術を受けたいという人には、自費診療のPMTCをおすすめします。
保険治療のクリーニングでは限られた時間内で決められた範囲の歯石を取らなければならないため、効率重視の処置になり、多少の刺激を伴う超音波スケーラーが使用されます。
一方、自費診療なら十分な施術時間を確保できるため、急がず丁寧に処置を進めることができます。
また、PMTCでは、エアフローという最新機器を選択することも可能です。微細なパウダーを吹き付けて汚れを落とすため、歯や歯茎への負担が極めて少ないと言われています。
器具が歯に触れる不快な振動や音がほとんどなく、中には気持ちよくて眠ってしまう方もいるほどです。
快適さを優先したい人はぜひ自費診療での処置を検討してみてください。
クリーニング×ホワイトニングの併用で白い歯に
歯医者でのクリーニングを受けると歯の表面に付いた汚れを落とせるため、歯が少し白く見えるようになるかもしれません。
クリーニングの役割はあくまで汚れを落とすことです。歯の内側の色素を分解して漂白するホワイトニングと違い、クリーニングのみで歯が白くなることはないでしょう。
歯を白くしたいという審美目的のある人は、歯科医院でのクリーニングとオフィスホワイトニングを併用するのがおすすめです。ここでは、クリーニングによるホワイトニング効果について解説します。
タバコのヤニや茶渋による着色汚れ(ステイン)が落ちる可能性がある
クリーニング後に歯が白くなったと感じる人は非常に多いです。
歯が黄ばんで見えた原因がステインと呼ばれる外部からの着色汚れだった場合に、クリーニングによって黄ばみが落ちて歯の色が改善されることがあります。
毎日飲むコーヒーや紅茶、赤ワイン、そしてタバコのヤニなどの色素は、頑固な着色汚れとして歯の表面にこびりつき、歯を本来の色よりも茶色く見せてしまいます。
がんこな着色汚れは普段の歯磨きでは落とせませんが、歯科医院の専用機器を使えば、きれいに剥がし落とすことができます。
クリーニングによって、茶色いベールを一枚剥いだように、パッと明るく清潔感のある口元を取り戻すこともできるかもしれません。
クリーニングは本来の白さに戻すもの
クリーニングで得られる最大のホワイトニング効果は、歯の表面を覆う汚れが取り除かれることによって本来の歯の色に戻ることです。
例えるなら、汚れたお皿を洗剤で洗ってピカピカにする作業と同じです。お皿の汚れは落ちてきれいになりますが、お皿自体の色や柄を変えることはできません。
同様に、歯のクリーニングでは漂白剤を使用しないため、歯そのものの色を白く変化させる効果はありません。
歯が少し黄色味を帯びている場合、いくらクリーニングを繰り返しても、それ以上に白くなることはないのです。
真っ白にしたいならホワイトニングとの併用がベスト
クリーニングで汚れを落とした状態で、元の歯の色以上に白く明るい歯にしたい場合は、オフィスホワイトニングの処置が必要です。
実は、ホワイトニングとクリーニングの併用は非常に効果的です。
なぜなら、クリーニングによって健康で清潔な状態にしてからホワイトニングを行うことで、薬剤が十分に歯に浸透してホワイトニングの効果を最大化できるためです。
歯の表面に歯石や汚れが残ったままホワイトニング剤を塗っても、薬剤が歯に浸透せず、十分な効果が得られません。汚れたままの床にワックスを塗ってもきれいにならないのと同じです。
ムラなく白い美しい歯を効率よく手に入れるなら、歯のクリーニングを行ってからホワイトニングを行いましょう。
通院をサボるとどうなる?理想的なクリーニングの頻度
歯医者でのクリーニングは、一度行って終わりではありません。髪が伸びたら美容院に行くのと同様、お口の中も定期的なメンテナンスが必要です。
しかし、どのくらいのペースで行けばいいのか分からず、つい足が遠のいてしまう人も多いのではないでしょうか。
ここでは、歯のクリーニングを受ける最適な頻度や継続する重要性について解説します。
原則3ヶ月に1回のクリーニングが推奨される
多くの歯科医師は、医学的な根拠に基づき、3ヶ月ごとにクリーニングを受けることを推奨しています。
クリーニングで口の中の細菌を徹底的に減らしても、日常生活を送るうちに細菌は少しずつ増殖し、約3ヶ月で病気になりやすいレベルまで細菌数が戻ってしまうと言われているためです。
ただし、これはあくまで目安です。歯磨きが苦手で汚れが溜まりやすい人や歯周病が進行している人は、1ヶ月から2ヶ月ごとなど、より短いスパンでの通院が必要になることがあります。
逆に、セルフケアが完璧で健康な状態であれば、半年に1回で十分な場合もあります。
かかりつけの歯科医師と相談し、自分の歯の状態に合わせて次回の予約を決めるのが理想です。
歯石を放置すると石灰化して歯石に変わる
忙しいからといって半年、1年と通院期間が空いてしまうと、次回のクリーニングが大変になります。
柔らかい歯垢を放置すると、唾液中のカルシウムと結びついて石灰化し、カチカチの歯石へと変化します。
歯石は時間が経てば経つほど硬くなって量も増え、歯茎の奥深くへと入り込んでいきます。
頑固にこびりついた古い歯石を除去するには強い力や振動が必要になるため、クリーニング中に痛みを感じたり、出血したりする可能性が高くなります。
歯垢汚れがまだ柔らかく、歯石の量も少ないうちに取り除くことこそが、痛みを避けて快適にクリーニングを受けるための秘訣です。
定期検診で初期虫歯を早期発見しよう
定期的に歯科医院に通うもう一つの大きなメリットは、虫歯やトラブルを早期発見できることです。
クリーニングを行う前には、歯科医師が口の中の状態をチェックします。
自分では鏡を見ても気づかないような微細な初期虫歯や、詰め物の劣化、噛み合わせの変化などを、深刻化する前に見つけてくれます。
虫歯があっても初期の状態であれば、歯を削らずにフッ素塗布やデンタルケアの改善だけで進行を食い止められることも少なくありません。
予防歯科の習慣が、結果的に高額な治療費を節約し、大切な歯を削るリスクを最小限に抑えてくれます。
痛くなってから慌てて歯医者に行くのではなく、痛くならないために歯医者に行くのが重要です。
まとめ|ケアを習慣化して一生モノの健康な歯を
私たちの生活にとって歯のクリーニングは、美容室に行くのと同じかそれ以上に重要です。
歯が痛くなってから歯医者に行くのではなく、健康な状態を守るために行く。このように意識を変えれば、将来の歯の寿命を大きく伸ばせます。
自分の歯で噛める喜びを一生失わないために、今日からプロによるクリーニングや予防歯科を生活に取り入れましょう。
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