【歯科医監修】奥歯にデンタルフロスがうまくできない!糸巻きフロスのコツと使い方

デンタルフロス 奥歯 できない

デンタルフロスを奥歯まで通そうとしても、指が届かなかったり、頬や舌が邪魔でうまく入らなかったり、オエッとなってしまったり……。 「奥歯にフロスするのは無理!」と、諦めかけていませんか?

フロスでのケアを始めたばかりの多くの人が、奥歯にデンタルフロスを通しにくくて悩むものです。 口の構造上、奥歯はケアする難易度が高い歯だからです。

しかし、奥歯の歯と歯の間は、歯ブラシだけでは汚れの60%しか落とせない、虫歯と歯周病の最大のリスクゾーン。 ここでケアを諦めてしまうのはとてももったいないことです。

この記事では、歯科専門家の視点から、デンタルフロスで奥歯を上手にケアするための具体的な方法を解説します。

この記事でわかること
  • デンタルフロスで奥歯を上手にケアできない理由
  • 奥歯にフロスするコツ
  • デンタルフロスがどうしてもできない場合の代替アイテム

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デンタルフロスが奥歯に届かない・やりにくい理由

奥歯にフロスができないのはやり方が悪いせいではありません。 なぜなら、誰にとっても奥歯は物理的にケアが難しい場所だからです。

「前歯のフロスは簡単にできるのに、どうして奥歯だけ……?」 口の構造上、奥歯にフロスをしにくい明確な理由があります。

ここでは、その具体的な理由を解説します。

フロスしにくい原因を知れば、対処法も見えてきます。


指が届きにくく、口が大きく開かない

奥歯は口の奥深くに位置しており、物理的に指が届きにくい場所です。

大きく口を開けようとすると、頬の筋肉が緊張して硬くなり、かえって指やフロスを入れるスペースが狭くなってしまいます。

この「大きく開けるほどやりにくくなる」という点が、多くの人が陥る最初の壁です。

頬や舌が邪魔になる

フロスを奥歯にかけようとすると、内側からは舌が、外側からは頬の粘膜が邪魔をして、フロスを正しい位置に当てることが難しくなります。

特に下の奥歯は、舌に覆われるような形になっているため、フロスを操作するスペースを確保するのが困難です。

嘔吐反射が出てしまう

口の奥に指や器具を入れると「オエッ」となってしまう。 これは「嘔吐反射」と呼ばれる、体の自然な防御反応です。

特に、舌の付け根あたりに物が触れると嘔吐反射が強く誘発されるため、奥歯にフロスを通そうと指を入れた際に嘔吐反射が起きてしまい、フロスを続けるのが困難になる人もいます。

糸巻きフロスで奥歯を攻略する簡単なコツ3選

糸巻きタイプのデンタルフロスでケアに取り組んでいる人は、「奥歯だけがどうしてもやりにくい」と感じますよね。

いくつかの簡単なコツを掴めば、フロスをとてもやりやすくなります。 ここで紹介する3つのコツを試してみてください。

フロスの3つのコツ

1. フロスは短く持つ

2. 頬の内側に人差し指を伸ばしてガイドに使う

3. 口を半開きにしてスペースをつくる

1. フロスは短く持つ

奥歯にフロスを正確に通すための最も基本的なコツは、フロスを短く持つことです。

指と指の間隔が長いとフロスがたわんで力がうまく伝わらず、狙った歯の間に挿入するのが難しくなります。

両手の中指にフロスを巻きつけたら、親指と人差し指でつまむ部分の長さを、1cmから2cm程度に調整しましょう。

短く持つことでフロスがピンと張り、細かな操作がしやすくなります。

2. 頬の内側に人差し指を伸ばしてガイドに使う

奥歯にフロスを通そうとすると、頬の粘膜が邪魔になることがあります。

その場合は、鏡を見ながら奥歯の反対の手(右奥歯なら左手)の人差し指を口の中に入れ、頬を内側から優しく押し広げてみましょう。

こうすることで、頬にフロスを操作するためのスペースが生まれ、鏡で位置を確認しながら作業しやすくなります。

特に上の奥歯を通す際に有効な方法です。

3. 口を半開きにしてスペースをつくる

意外に思われるかもしれませんが、口を大きく開けるほど、奥歯のフロスは難しくなります。

口を全開にすると、頬の筋肉が緊張して硬くなり、かえって奥歯の周りのスペースが狭くなってしまうからです。

口の力を抜き、リラックスして「半開き」の状態にしてみてください。

頬が緩めば、指やフロスを動かすためのスペースが生まれ、奥歯へフロスするのも格段に楽になります。

奥歯にフロスがうまくできない人向けの代替アイテム

糸巻きタイプのフロスを奥歯に使うのが難しい場合、便利で使いやすい代替アイテムがあります。

ここでは、糸巻きフロスが苦手でも今日から使える、奥歯のケアにおすすめな3つのアイテムを紹介します。

Y字型(F字型)フロス

糸巻きフロスが奥歯に上手くできないという悩みを解決する最もおすすめのアイテムが「Y字型フロス」です。

持ち手(ホルダー)が付いているため、指が届きにくい奥歯にも簡単にフロスを挿入できます。 糸を指に巻く必要がなく、片手で楽に操作できる手軽さが最大の魅力です。

使い方も簡単。 フロスの糸の部分を歯と歯の間にゆっくりと当て、のこぎりを引くように前後に動かしながら挿入します。 歯の側面に沿わせて上下に数回動かし、汚れをかき出しましょう。

歯間ブラシ

歯と歯の間の歯茎が下がり、少し隙間が目立つ方には「歯間ブラシ」の使用がとても効果的です。

フロスは歯と歯が接している面の汚れを取るのが得意ですが、歯茎が下がってできた三角形の隙間の汚れは、歯間ブラシの方が効率よく除去できます。

歯間ブラシには様々なサイズがあります。 太いサイズの歯間ブラシを無理に入れると歯茎を傷つけるため、スムーズに挿入できるサイズを選ぶことが重要です。

奥歯には、ブラシ部分の角度を変えられる「L字型」が使いやすいでしょう。自分の歯茎の状態に合わせて歯間ブラシを選び、効果的にプラークを除去しましょう。

ウォーターフロッサー(口腔洗浄器)

嘔吐反射が強い人や矯正装置をつけている人は、ジェット水流で汚れを洗い流す「ウォーターフロッサー(口腔洗浄器)」を使うのもおすすめです。

口の中に直接器具を入れる時間が短く、水流の力で歯と歯の間や歯周ポケットの食べかすを洗い流すため、嘔吐反射が出にくいというメリットがあります。

しかし、ウォーターフロッサーはフロスや歯間ブラシの「補助」として使うのが最も効果的です。

なぜなら、 歯の表面に粘りついたプラーク(細菌の塊)を完全に除去する力は、フロスや歯間ブラシに劣るためです。

ウォーターフロッサーの主な役割は、あくまで食べかすを洗い流すことなので覚えておきましょう。


奥歯のフロスをサボるとどうなる?2つの大きなリスク

「奥歯のフロスは難しいからまあいいか」と、フロスをサボってしまう。 その判断が習慣化すると、口の健康に将来大きな影響を及ぼす可能性があります。

結論として、奥歯の歯間清掃を怠ると、虫歯と歯周病という二大疾患のリスクを著しく高めますなぜなら、歯ブラシだけでは届かない場所に汚れが蓄積し続け、細菌の温床となってしまうからです。

詳しく解説します。

歯ブラシの届きにくい場所から虫歯になる

虫歯は歯の溝からできる、と思っていませんか? 実は、大人の虫歯で非常に多いのが、歯と歯の間から発生する虫歯です。

特に奥歯は、歯と歯が接する面が広く、複雑な形をしています。 この場所は歯ブラシの毛先が絶対に届かないため、フロスを使わなければ、歯垢(プラーク)が毎日残り続けてしまいます。

残った歯垢の中で虫歯菌が酸を出し、ゆっくりと歯を溶かしていくのです。

歯の間から始まる虫歯は発見が遅れやすく、気づいた時には神経の近くまで進行していることも少なくありません。

歯周病が進行し、口臭の原因になる

歯と歯の間に残った歯垢は、虫歯だけでなく歯周病の直接的な原因にもなります。

歯垢の中の細菌が出す毒素によって、まず歯茎に炎症が起きます。これが歯肉炎です。 奥歯のフロスをしないと、歯茎からの出血がなかなか治まらないのはこのためです。

さらに歯垢を放置すると、炎症は歯を支える骨にまで広がり、骨を溶かしてしまう歯周病へと進行します。

歯周病が進行すると、歯がぐらついたり、膿が出たりして、強い口臭を発生させる原因にもなります。

デンタルフロスが奥歯にできない時によくある質問(Q&A)

デンタルフロスを奥歯に使う上での、よくある質問にお答えします。

Q1. 奥歯にフロスを入れると血が出ます。続けても大丈夫?

A1. はい、優しく続けてください。 出血は、その部分の歯茎が炎症を起こしているサインです。

フロスを始めたばかりの頃は、歯茎に溜まっていた歯垢(プラーク)が刺激となり、出血することがよくあります。

これは、掃除が行き届いていなかった証拠です。 1週間から2週間、丁寧にフロスを続けることで歯茎の炎症が改善し、出血は自然に治まってきます。

ただし、痛みが強かったり、出血がずっと止まらなかったりする場合は、他の原因も考えられるため、一度歯科医院に相談しましょう。

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Q2. Y字型フロスは毎日使ってもいいですか?

A2. はい、ぜひ毎日使ってください。

Y字型フロスは、糸巻きタイプが苦手な方に非常におすすめできるツールです。

歯ブラシだけでは落とせない歯と歯の間のプラークを除去するため、毎日の歯磨きとセットで習慣にすることをおすすめします。

Q3. 歯医者さんでクリーニングすればフロスは不要ですか?

A3. いいえ、フロスでのケアが必要です。

歯科医院での専門的なクリーニングは、自分では落とせなくなった歯石や頑固な汚れを除去するために重要です。しかし、それはあくまで定期的なメンテナンス。

毎日の食事で付着する歯垢は、日々自分でケアしてリセットしなければ、すぐにまた蓄積してしまいます。

プロによるケアと、毎日のセルフケア。 この二つを両立させることが、口の健康を維持する鍵となります。

まとめ:自分に合ったアイテムで、奥歯のケアを習慣にしよう

この記事では、奥歯にデンタルフロスがうまくできない原因と、その解決策について詳しく解説しました。

この記事のポイント
  • 奥歯のフロスがやりにくいのは口の構造上必然。誰にとっても難しい。
  • 糸巻きフロスを使うときは、フロスを短く持ち、口を半開きにして、頬の内側に人差し指を伸ばしてガイドにしながら奥歯をケアするとやりやすい。
  • 糸巻きフロスが難しい場合は、「Y字型フロス」や「歯間ブラシ」などの代替品がおすすめ。
  • 奥歯の歯と歯の間は、虫歯や歯周病のリスクが最も高いため、ケアを怠らない。

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「本当にこの使い方で合っているのかな」と不安に思うこともあるかもしれません。

そんな時は、専門家である歯科医師や歯科衛生士に相談するのが一番。 口の状態に合わせた最適なアイテムの選び方や、正しい使い方を丁寧に指導してくれます。

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