転んだり何かにぶつかったりして、唇を強く打ってしまった——。
ぷっくりと腫れあがった唇とジンジンする痛み、つらいですよね。
「この腫れ、いったい何日で治るんだろう?」「何か特別な処置は必要なのかな?」と、不安になっていませんか?
特に、子どもが唇をぶつけてしまった場合、心配も大きいことでしょう。
結論から言うと、唇をぶつけただけの単純な打撲による腫れは、多くの場合3日から2週間程度で自然に治まります。
しかし、打ちどころや症状によっては、注意が必要なケースも。
この記事では、歯科専門家の視点から、唇の腫れについて詳しく解説します。
- 腫れを早く引かせる応急処置
- 病院へ行くべきサイン
- 唇が腫れたらやってはいけないこと
- 唇の腫れに関するFAQ
唇をぶつけた腫れは3日〜2週間で治るのが通常
唇をぶつけて腫れてしまうと、見た目にも影響が出ていまい、いつ元に戻るのか心配になりますよね。
歯や顎の骨に異常がない単純な打撲であれば、通常3日から2週間ほどで腫れは引き、自然に治っていきます。なぜなら、唇は血行が良いため、腫れやすい一方で治りも早いという特徴があるからです。
唇の腫れの経過について解説します。
腫れのピークは受傷後24〜48時間
唇をぶつけると直後から腫れ始め、多くの場合、24時間後から48時間後が腫れのピークとなります。この期間は、痛みも最も強く感じやすいです。
その後適切な処置をしていれば、3日目頃から徐々に腫れが引き始め、2週間後にはほとんど気にならない状態まで回復が期待できるでしょう。
内出血(青あざ)ができた場合の治る過程
唇を強くぶつけた場合、唇やその周りの皮膚が青紫色になる「内出血(青あざ)」を伴うことがあります。
打撲によって皮下の血管が破れ、漏れ出た血液が溜まっている状態です。
内出血は、最初は青紫色から緑色、そして黄色へと徐々に色が変化しながら、1週間から2週間ほどで自然に吸収され、消えていきます。
色の変化は治癒過程の正常な反応ですので、心配ありません。
症状が長引く場合は他の原因も考慮
「2週間」は、あくまで目安です。
腫れが2週間以上経っても引かなかったり、むしろしこりになるなどむしろ悪化したりしている場合は、傷口からの細菌感染や、内部で血の塊(血腫)ができている可能性が疑われます。
その場合は、自己判断で様子を見続けず、医療機関を受診しましょう。
腫れを早く引かせる!唇をぶつけた場合の応急処置
唇をぶつけてしまったら、適切な応急処置をできるだけ早く行いましょう。腫れや痛みを最小限に抑え、回復を早められるかもしれません。
以下の3ステップを実践してみてください。
- 清潔なガーゼで優しく圧迫止血する
- 患部を冷やす
- 刺激を避け、安静にする
STEP1:清潔なガーゼで優しく圧迫止血する
唇から出血している場合は、まず止血が最優先です。
清潔なガーゼやハンカチを患部に当て、指で優しく5分から15分ほど圧迫し続けます。
口の中が切れている場合は、唾液に血が混じるため出血量が多く見えることがありますが、慌てずに圧迫を続けてください。
STEP2:患部を冷やす
止血ができたら患部を冷やします。 冷やすことで血管が収縮し、内出血と腫れを抑え、痛みを和らげる効果があります。
保冷剤や氷をビニール袋に入れたものを清潔なタオルで包み、腫れている部分に優しく当ててください。1回あたり15分から20分程度を目安に、数時間おきに繰り返します。
なお、凍傷を防ぐため、保冷剤や氷を直接肌に当てるのは絶対にやめましょう。
STEP3:刺激を避け、安静にする
応急処置が終わったら、できるだけ安静に過ごしましょう。
当日は、激しい運動や長時間の入浴、飲酒は避けてください。血行が良くなると、再び出血したり腫れがひどくなったりする可能性があります。
食事は熱いものや辛いものといった刺激物を避け、傷口に触らないように注意しましょう。
唇の腫れを悪化させる「やってはいけないこと」
良かれと思ってとった行動が、かえって回復を遅らせてしまうことがあります。
以下の3つの行動はNGです。やってはいけないこととして押さえておきましょう。
1. 患部を温める
唇をぶつけた直後に患部を温めるのは逆効果です。
温めることで血管が拡張し、血行が促進されるため、内出血や腫れ・痛みが悪化してしまいます。
腫れが引いた回復期(受傷後3日目以降)になってから、内出血を治す目的で患部を温めてもよいでしょう。
2. 気になって何度も触る・舐める
腫れや傷口が気になって、指で触ったり舌で舐めたりしたくなるかもしれませんが、我慢してください。
指や口の中にいる細菌が傷口から侵入し、細菌感染を起こす原因になります。
感染すると、化膿してさらに腫れがひどくなり、治りが遅くなってしまいます。
3. 刺激の強い食事や喫煙・飲酒
熱いもの、辛いもの、塩辛いもの、酸っぱいものなどの刺激の強い食事は、傷口にしみるため、より痛みを感じさせます。
また、喫煙や飲酒は血行を悪化させ、傷の治りを妨げる大きな要因です。
症状が落ち着くまでは、生活習慣により一層気を遣うようにしましょう。
唇や口の中を要チェック!病院へ行くべきサイン
唇を強くぶつけた場合、衝撃は唇だけでなく、その内側にある歯や歯茎にも及んでいる可能性があります。
「唇の腫れだけだから大丈夫」と自己判断せず、必ず口の中全体の状態も確認してください。
以下のサインが見られたら、できるだけ早く専門医を受診しましょう。
歯がぐらぐらする・欠けている・位置がずれている
唇をぶつけた衝撃で、前歯にダメージが及んでいるケースは非常に多いです。
以下のケースに当てはまる場合、病院にかかりましょう。
- 歯がグラグラ動く
- 歯の先端などが欠けている・大きく割れている
- 歯が内側にめり込んでいる(陥入)
- 歯が元の位置からずれている
これらの症状を放置すると、歯の神経が死んでしまい、最悪の場合は歯を失うリスクがあります。
歯茎からの出血が止まらない・歯茎が変色している
唇と同様、歯茎も打撲によって傷つきます。
歯と歯茎の境目から出血が止まらなかったり、歯茎の色が赤紫色や黒っぽく変色していたりする場合は要注意です。
歯の根が折れている(歯根破折)可能性や、歯が強くめり込んでいる可能性があります。
唇の傷が深く、パックリと開いている
唇の表面の腫れや擦り傷程度であれば自然に治りますが、傷口が深くパックリ開いてしまっている場合、縫合処置が必要になることがあります。
傷口を開いたままにしていると傷跡が残りやすく、感染のリスクも高まるため、必ず縫合処置を行って傷口を閉じるべきです。
子どもの場合:上唇小帯が切れているケースも
小さな子どもが転んで顔をぶつけた際によく見られるのが、上唇と歯茎をつなぐスジ(上唇小帯)が切れてしまう怪我です。
出血が多くて驚きますが、多くの場合、自然に治癒するため過度な心配は不要です。
ただし、歯への影響がないかを確認するためにも、一度小児歯科を受診すると安心です。
唇をぶつけた時は何科を受診する?
病院へ行ったほうがいいのは分かったけど、何科に行けばいいの?と不明に思う人もいるでしょう。
症状によって適切な診療科は異なります。以下に詳しく解説しますので、かかるべき診療科を判断するのにお役立てください。
歯や歯茎に異常:歯科・口腔外科へ
歯のぐらつきや欠け、歯の位置のずれ、歯茎からの出血などの症状がある場合、迷わず歯科または口腔外科を受診してください。
歯の状態をレントゲンで詳しく調べた上、適切な固定処置を行ってくれます。
唇の傷の縫合が必要:形成外科・皮膚科へ
歯に異常がなく、唇の傷が深い場合は形成外科が最も専門的です。傷跡をできるだけきれいに治したい人にもおすすめです。
近くに形成外科がない場合は皮膚科や外科でも対応してもらえます。
子どもの場合:小児歯科へ
子どもの怪我である場合は、小児歯科を受診するのがおすすめです。
子どもの口の怪我に慣れている医師が、歯への影響を丁寧に見ながら、親や子ども自身の不安にも寄り添って対応してくれます。
唇をぶつけた後の腫れに関するよくある質問(Q&A)
唇をぶつけた後の腫れについて、よくある疑問に回答します。
Q1. 腫れと一緒にできたしこりは何ですか?
A1. 多くの場合、内出血が固まった「血腫(けっしゅ)」か、傷が治る過程でできる瘢痕組織です。
通常は時間と共に自然に吸収されて小さくなっていきます。
しかし、数週間経ってもなくならず肥大化や痛みがある場合は、感染や他の病変の可能性も考えられるため、一度医療機関で診てもらうと安心です。
唇のしこりについて詳しく知りたい人は、こちらの記事も参考にしてください。
Q2. 腫れを早く治す薬はありますか?
A2. 痛み止めの服用は考えられますが、基本的には患部を冷やして安静にするのが最も効果的です。
市販薬には、打撲や捻挫用の塗り薬(消炎鎮痛成分配合)もありますが、唇の粘膜や傷口には使えないものがほとんどです。
痛みが強い場合は、市販の痛み止め(内服薬)を服用しても良いです。
その他の薬の使用については、薬剤師に相談してください。
Q3. 唇の内側を噛んでしまいました。どうすればいいですか?
A3. 口の中を噛んだ場合の応急処置は、清潔と冷却が基本です。
口の中を清潔に保つために、優しくうがいをしましょう。痛みが強い場合は、外側から冷やすと楽になります。
多くは数日で治るでしょう。
同じ場所を繰り返し噛んでしまう場合、歯並びなどに根本的な原因があるかもしれません。歯科医院に相談することをおすすめします。
口内炎について詳しく知りたい人は、こちらの記事も参考にしてください。
まとめ:正しい応急処置で唇の腫れを早く治そう
この記事では、唇をぶつけた後の腫れが治るまでの期間や、正しい対処法について解説しました。
唇をぶつけた時に覚えておくべきポイントは以下の通りです。
- 腫れのピークは1日から2日後で、通常は2週間程度で治る
- 応急処置は「止血」と「冷却」
- 唇だけでなく、歯と歯茎に影響がないか必ずチェックする
- 歯のぐらつきや出血が止まらないなどの症状がある場合は、すぐに歯科医院へ
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見た目の変化が大きい唇の腫れや、大切な歯への影響が心配な時は、一人で悩まず専門家に相談しましょう。
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