歯の隙間を埋める治療に保険適用は可能?費用相場と安さのリスクを解説【歯科医師監修】

歯の隙間を埋める 保険適用

「前歯の隙間が気になるけれど、何十万円もする矯正治療には手が出ない……」「保険を使って、数千円で手軽に隙間を埋めることはできないの?」と考えていませんか?

結論から言うと、歯の隙間を埋める治療が保険適用になるかどうかは、治療の目的が「見た目の改善」か「病気の治療」かによって決まります。

「単に見た目を良くしたい」だけであれば、残念ながら保険は使えません。しかし、条件を満たせば保険を使って安く治療できる可能性もあります。

この記事では、歯の隙間を埋める治療に保険適用ができる具体的なケースと、保険治療と自費治療の決定的な違いについて、歯科医師監修のもと解説します。

「安く治したはずが、すぐに変色して余計に目立ってしまった」と後悔しないために、正しい知識を身につけましょう。


目次

歯の隙間を埋める治療は保険適用になるのか?

歯の隙間を埋めたいと考えたとき、治療に健康保険が適用されるかは重要なポイントですよね。

保険適用の可否について、詳細を解説します。

原則として審美目的(見た目の改善)は全額自己負担

生まれつき歯と歯の間に隙間がある「すきっ歯」や、加齢によって自然に歯並びが変化してできた歯と歯の間の隙間は、医学的には病気ではありません。

噛む機能に深刻な問題がなく、健康な状態である限り、その隙間を埋める行為は美容整形と同じく審美目的とみなされます。

したがって、ダイレクトボンディングやラミネートベニア、矯正治療といった、見た目をきれいに整えるための治療は、全額自己負担の自由診療となります。

費用は歯科医院が自由に設定できるため高額になりがちですが、その分、高品質な材料を使えるため、仕上がりの美しさや耐久性は保険診療よりも格段に優れています。

保険が適用される唯一のケースは「虫歯や欠けがある場合

歯の隙間が、虫歯による欠損や、事故や転倒による破折といった病気や怪我によって生じたものであれば、治療目的とみなされて保険が適用されます。

この場合、失われた歯の機能を回復させるという明確な治療目的があるため、保険が適用されるのです。

具体的には、コンポジットレジン充填というプラスチック素材を詰める処置が行われます。

ただし、保険適用治療の場合はあくまで病気の治療が最優先です。隙間を埋めることは結果的な修復処置であり、元の歯の形に戻すことがゴールとされます。

そのため、本来の歯の形以上に歯を大きくしたり、色を白くしたりなどの審美的な要望を叶えることはできません。

あなたのすきっ歯はどっち?保険適用の可否チェック

ご自身の歯の隙間が保険適用の対象になる可能性があるか、以下のチェックリストで確認してみましょう。

保険適用されるケース
  • 虫歯で歯が溶けて隙間ができている
  • 転倒などで歯が欠けて隙間ができた
  • 歯周病による影響がある(※一部の場合のみ)
  • 以前の詰め物が取れて隙間ができた。
  • 保険適用されないケース
  • 生まれつき歯が小さく隙間がある
  • 歯周病で歯茎が下がり隙間ができた
  • 基本的には、削って治すべき悪い部分があるなら保険、健康な歯にプラスチックを盛ったり被せ物をしたりして形を変えるなら自費、と考えると分かりやすいでしょう。

    保険で隙間を埋める方法(コンポジットレジン充填)とは

    保険適用で歯の隙間を埋める治療を行う場合、選択肢は事実上「コンポジットレジン充填」のみです。

    コンポジットレジン充填は、虫歯治療で削った穴を埋める際などに日常的に行われている一般的な処置です。

    ここでは、コンポジットレジン充填の仕組みや費用、そして事前に知っておくべきデメリットについて詳しく解説します。

    プラスチック(レジン)を詰めて形を整える治療法

    コンポジットレジンとは、歯科用の白いプラスチック素材のことです。

    粘土のような柔らかいペースト状の素材を、歯の欠けた部分や隙間に直接詰め込み、特殊な光を当てて固めることで歯の形を修復します。

    最大の特徴は、型取りをする必要がないため、最短1回の通院で治療が完了する点です。また、歯の色に近い素材を選ぶことができるため、銀歯のように目立つことはありません。

    費用目安は1箇所あたり数千円(3割負担の場合

    保険診療が適用できるコンポジットレジン充填の最大のメリットは、やはり費用の安さです。

    3割負担の場合なら、1箇所あたり1500円から3000円程度で治療を受けることができます。この金額には、詰め物をする処置料だけでなく、基本的な処置に伴う点数が含まれます。

    初診料や検査料を含めても、トータルの出費を大幅に抑えられるため、経済的な負担を最小限にしたい方にとっては非常に魅力的です。

    レジンは変色しやすく強度が低い

    保険適用で安く済み、手軽なレジンですが、素材がプラスチックである以上避けられない弱点があります。

    一つ目は変色です。吸水性があるため、長期間使用していると、カレーやコーヒーなど色のある飲食物の色素を吸収します。お皿やタッパーに色が移るように、レジンが徐々に黄色く変色してしまいます。

    二つ目は強度です。セラミックや天然の歯に比べると柔らかいため、強く噛み合わせるとすり減ったり、欠けたりするリスクがあります。

    長期的な美しさや耐久性を求める場合には、数年ごとにやり直しが必要になる可能性があることを理解しておきましょう。

    自費診療で隙間を埋める場合の3つの選択肢

    保険診療のレジン充填は、あくまで機能回復を最低限のコストで行うためのものです。

    一方、自費診療は、機能はもちろんのこと、天然歯と見分けがつかないほどの美しさと、長期間変色しない耐久性を得る目的で行います。

    よって、前歯のように目立つ部分の隙間を埋めるのであれば、仕上がりの質が段違いである自費診療を強くおすすめします。

    費用はかかりますが、高い技術料と、劣化しにくい高品質な材料費への投資です。

    ここでは、自費診療で歯の隙間を埋める際に選択できる、代表的な3つの治療法について解説します。

    ダイレクトボンディング:高密度な素材で自然に即日埋める

    ダイレクトボンディングは、保険のレジン充填の進化版と言える治療法です。

    最大の違いは、使用する素材の質です。セラミックの粒子(フィラー)を多く含んだ高密度なレジンを使用するため、保険のものよりも圧倒的に変色しにくく、強度も優れています。

    また、単一の色を詰めるのではなく、透明感の異なる複数の色のレジンを何層にも重ねていくため、周りの歯と完全に調和した自然な色調を再現できます。

    歯をほとんど削らず、多くの場合1日で治療が完了するため、手軽さと美しさのバランスが取れた非常に人気のある方法です。

    ラミネートベニア:付け爪のようにセラミックを貼り付ける

    歯の表面を0.5ミリほど薄く削り、その上にセラミック製の薄い板(シェル)を貼り付ける方法です。

    イメージとしては、ネイルサロンの付け爪と同じ原理です。

    この治療法のメリットは、ダイレクトボンディング以上に変色に強く、半永久的に白さを維持できる点です。

    また、歯の隙間を埋めると同時に、歯の色をホワイトニング以上に白くしたり、形を整えたりすることも可能です。

    歯を削る量はエナメル質の範囲内に留まるため、歯へのダメージを最小限に抑えつつ、自然な色調を手に入れることができます。

    セラミックを用いた審美修復:被せ物で、色・形・並びを同時に治す

    歯を全周にわたって削り、その上からセラミックの被せ物(クラウン)を装着する方法です。

    ラミネートベニアが表面だけを整えるのに対し、セラミックを用いた審美修復は歯の向きや軸そのものを変えるような見た目の修正が可能です。

    そのため、単に隙間があるだけでなく、歯がねじれて生えている、前に出っ張っているといった歯並びの問題も同時に解決したい場合に適しています。

    健康な歯を大きく削る必要があるため慎重な判断が必要ですが、短期間で歯並び、色、形をすべて理想通りにリセットできるため、芸能人やモデルのような完璧な口元を目指す方に選ばれています。

    【費用比較】保険と自費との価格差と寿命

    保険診療と自費診療とでは、桁が一つ違うほどの価格差があります。

    しかし、金額だけで治療法決めるのは危険です。その価格差は、耐久年数や仕上がりの美しさなどの品質の差に直結しているからです。

    ここでは、具体的な金額と長期的なコストパフォーマンスの視点から、保険適用治療と自由診療治療とを比較します。

    保険適用治療:1,500円~3,000円程度の初期費用のみ

    手元の出費を抑えることを最優先にするのであれば、保険診療の安さは圧倒的です。3割負担の方の場合、初診料や検査料を含めても、1箇所あたり1,500円から3,000円程度で治療を終えることができます。

    学生や、とりあえず急ぎで穴を埋めたい人にとっては願ってもない金額です。健康保険適用だからこそ実現できる安さと言えます。

    自費治療のダイレクトボンディング:1本3万円~5万円が相場

    一方で、自費診療のダイレクトボンディングを行う場合、1本あたり3万円から5万円程度の費用がかかります。保険診療と比較すると、約10倍から20倍の価格差です。

    費用の内訳は、高品質な素材代に加え、歯科医師が時間をかけて色を合わせ、形を作り込むための技術料です。

    決して安い金額ではありませんが、ラミネートベニアや矯正治療は1本あたり10万円以上のコストがかかることを考えると、審美治療の中では比較的リーズナブルだと言えます。

    長期的な持ちと美しさではどちらが得か?

    目先の費用だけでなく、治療後の生活や再治療のリスクを含めて検討しましょう。

    保険のレジンは安価ですが、平均して2年から3年程度で変色や劣化が始まります。そのたびにやり直しをすれば、通院の手間がかかるだけでなく、削るたびに歯へのダメージが蓄積されます。

    一方、自費のダイレクトボンディングは、適切なケアを行えば5年以上、長ければ10年近く美しい状態を維持できることがあります。

    何より、人と話す時に口元を隠さずに笑えるという精神的なメリットは、金額には代えられない価値があります。

    長期的な視点で歯を大切にしたいのであれば、自費診療の方が結果的に満足度が高いと言えるでしょう。

    歯の隙間を埋める治療に伴うリスク

    安く手軽に隙間を埋められるなら、今すぐやりたいと思うのは当然です。しかし、歯の形を人工的に変えることには、必ずリスクが伴います。

    結論として、安易な審美治療は、将来的にトラブルを招く可能性があります。

    見た目の問題のみならず歯の寿命を縮めてしまうリスクがあることを、治療前に必ず知っておいてください。

    ここでは、歯の隙間を埋める治療に伴う3つの主なリスクについて解説します。

    虫歯や歯周病の原因になる

    歯の隙間を埋めるということは、本来存在しない壁を人工的に作るということです。このとき、天然の歯と詰め物の間にわずかな段差や隙間が生じることがあります。

    特に保険診療のレジン充填では、限られた時間内での処置となるため、顕微鏡レベルでの精密な適合を求めるのは困難な場合があります。

    この段差には汚れ(プラーク)が溜まりやすく、歯ブラシも届きにくいため、そこから新たな虫歯(二次カリエス)や歯周病が発生する温床となってしまうリスクがあります。

    きれいにするつもりが、逆に歯を悪くしてしまう可能性があるのです。

    見た目のバランスが悪くなることがある

    隙間を埋めるためには、左右の歯にプラスチックを盛り足して幅を広げる必要があります。つまり、隙間をなくす分、歯そのものが横に巨大化してしまうのです。

    元の隙間が1ミリ程度なら気になりませんが、大きな隙間を無理やり埋めると、前歯だけが異常に大きく見えたり、正方形のような形になったりと、顔全体のバランスが悪くなることがあります。

    かえって口元が目立ってしまうという、本末転倒な結果になることも少なくありません。

    事前に仕上がりのシミュレーションを行い、仕上がりのバランスを確認することが重要です。

    根本的な原因(歯並びや噛み合わせ)は治らない

    詰め物で隙間を埋めるのは見た目をごまかすための対症療法に過ぎず、歯の隙間ができた根本的な原因にはアプローチできてません。

    歯と歯の間に隙間ができた原因が、舌で歯を押す癖や噛み合わせの悪さ、歯周病による歯の移動などにある場合、いくら隙間を埋めても、歯は動き続けます。

    その結果、せっかく詰めたレジンが圧力で弾き飛ばされたり、別の場所に新たな隙間ができたり、いたちごっこになってしまう可能性があります。

    歯と歯の間に隙間がある問題を根本的に解決するには、悪癖の改善や矯正治療も視野にいれる必要があります。


    歯の隙間治療に関するよくある質問(Q&A)

    保険適用のルールや治療期間について誤った認識を持っていると、思わぬトラブルにつながることがあります。治療を進める前に、正しい知識を確認しておきましょう。

    歯の隙間を埋める治療についてよくある質問にお答えします。

    Q1. 矯正治療(ワイヤー・マウスピース)は保険適用になりますか?

    A. 原則として、すきっ歯を治すための矯正治療は保険適用外となります。

    なぜなら、歯並びの悪さは病気ではなく、見た目の問題であると判断されるためです。

    ワイヤー矯正であってもマウスピース矯正であっても、使用する装置に関わらず全額自己負担となります。

    ただし例外として、外科手術を必要とする顎変形症や、厚生労働省が定めた特定の先天性疾患に起因する噛み合わせの異常については、保険が適用されるケースがあります。

    これらに該当する場合、大学病院など指定の医療機関での診断が必要です。


    Q2. 過去に保険で詰めたレジンが変色してきました。やり直せますか?

    A. はい、変色してしまったレジンを取り除き、新しく詰め直すことは可能です。

    その際、再度保険適用治療によってレジンを詰めることはもちろん、自由診療でより美しく耐久性のある自費のダイレクトボンディングや、セラミック治療を行うことも選択できます。

    保険適用治療によって同じレジンを詰め直した場合、数年経てばまた同じように変色や劣化が起こります。

    歯を何度も削ってレジンを詰め直すことは歯への負担となるため、長期的な視点で治療法を選ぶことをおすすめします。

    Q3. 1回で治療が終わる方法はありますか?

    A. 虫歯の部位や大きさ、歯茎の状態によりますが、コンポジットレジン充填(保険)やダイレクトボンディング(自費)であれば、最短1回の通院で治療を完了させることが可能です。

    型取りをして技工所で作製するなどのプロセスがなく、その場で歯科医師が材料を詰めて形を整える治療だからです。

    一方、ラミネートベニアやセラミック矯正、ワイヤー矯正などの治療方法では、型取りや装置の調整が必要なため、複数回の通院が必須となります。

    結婚式や面接が迫っているなど、審美面で急ぎ改善したい事情がある場合は、即日対応可能なダイレクトボンディングが有力な選択肢です。

    まとめ:目先の安さより将来の美しさを。まずはプロに相談を

    歯の隙間を埋める治療では、保険適用の方法によって数千円で済ませることも、自費診療で数万円かけて美しく仕上げることも可能です。

    しかし、治療法を目先の安さだけで選ぶのは禁物です。なぜなら、歯は毎日使い、人の目に触れる大切な体の一部だからです。

    すぐに変色したり不自然な形になったりして後悔するよりも、数年先、数十年先の自分に投資するという視点を持つことが、結果として満足度の高い治療につながるでしょう。

    予算と仕上がりの希望を伝え、最適な治療法を選ぼう

    どの治療法が正解かは、価値観や状況によって異なります。

    結婚式前だからすぐにきれいにしたいのか、学生でお金がないからとりあえず見た目だけ改善したいのかなど、自身の状況や希望を整理して、歯科医師に相談してください。

    良い歯科医師であれば、予算内でできることとできないこと、治療法別のメリット・デメリットについて十分に説明し、あなたにとって最善のプランを一緒に考えてくれます。

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    とはいえ、保険診療と自費診療の両方を公平に提案し、高い技術で治療・施術を行ってくれる歯科医院を見つけるのは簡単ではありません。

    中には、保険診療で治療したいと言ったら嫌な顔をされたといった経験がある方もいるでしょう。

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