矯正治療で歯の隙間が埋まらないまま終了してしまう原因と対処法【歯科医監修】

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長い期間と費用をかけた矯正治療ももうすぐ終わり。整ってきた歯並びを見て嬉しく思う反面、歯と歯の間に隙間が残っているのが気になっている人もいるのではないでしょうか。

「この隙間、本当に埋まるの?」「もしかして、このまま終了してしまう?」と、ゴールが見えず焦りを感じているかもしれませんね。

結論から言うと、隙間の状態によって治療計画通り「終了」となるケースと、追加の処置や治療が必要なケースとに分かれます。

この記事では、歯科専門家の視点から、矯正治療で隙間が埋まらない主な原因や対処法など、矯正治療終了間際の不安を解消する情報を徹底解説します。

この記事でわかること
  • 矯正治療で隙間が埋まらない原因
  • 終了間際に隙間を埋めるための歯科での対処法
  • 担当医への伝え方

目次

矯正の終了間際に隙間が埋まっていないケース

隙間が残ったまま矯正治療が終了となる可能性は確かにあります。

どのような隙間であるかによって、そのまま治療を終了して良い場合と、継続的に対応が必要な場合に分かれます。

ここでは、矯正終了間際に埋まらないまま残る隙間について、対処が必要なケースとそうでないケースを解説します。

問題ない隙間:ブラックトライアングル

歯と歯茎の間にできる三角形の隙間は「ブラックトライアングル」と呼ばれ、もともと歯が重なっていた部分の歯茎が下がったことで現れるものです。

これは歯周病の症状などではなく、歯が正常に並んだ証拠であり、ある程度は避けられない現象です。

この状態で治療終了となることは珍しくありませんが、とくに対処する必要はないものです。

対処が必要な隙間:抜歯スペースの残り

抜歯したスペースが閉じきっていない、あるいは歯と歯の間に明らかな隙間が残っている場合は対処が必要です。

歯の移動が計画通りに進んでいない・歯の大きさに問題があるなどの原因が考えられ、追加の処置や治療期間の延長が必要になることがあります。

不安な場合は担当医への相談が不可欠

どちらのケースであっても、歯列矯正において最も重要なのは自分自身が歯並びの状態に納得しているかどうかです。

審美的に気になるのであれば、それがブラックトライアングルであっても対処すべきで、方法もあります。

治療終了の同意書にサインする際は、不安を残してままではいけません。

気になる隙間が埋まらないまま残っている場合は、担当の矯正歯科医に「この隙間が気になるのですが」と正直に相談しましょう。

矯正治療で隙間が埋まらない4つの主な原因

なぜ治療の終盤になっても隙間が残ってしまうのには、いくつか原因が考えられます。

歯茎の問題や歯そのものの大きさの問題、歯の移動計画の問題、あるいは無意識の癖の問題などが関係しているためです。

それぞれの原因について詳しく紹介します。

矯正治療で隙間が埋まらない原因

1. 歯茎が下がりブラックトライアングルができている

2. 歯の大きさや形のバランスが悪い(サイズの不調和)

3. 抜歯したスペースが完全に閉じきっていない

4. 舌で歯を押す癖(舌突出癖)が歯の移動を妨げている

1. 歯茎が下がりブラックトライアングルができている

隙間が残る原因として最も多いのがブラックトライアングルです。

ブラックトライアングルとは、矯正治療によって歯並びが整った結果、これまで歯の重なりに隠れていた、歯と歯茎の間の三角形の隙間が見えてくる現象を指します。

もともと歯が重なっていた部分は歯を支える骨が痩せていることが多く、歯が整列したことでその部分が可視化された状態になります。

ブラックトライアングルは歯周病ではなく、歯が正常に並んだ証拠です。特に成人矯正の方や、治療前の歯の重なりが大きかった方に見られやすい傾向があります。

2. 歯の大きさや形のバランスが悪い(サイズの不調和)

歯の大きさや形のバランスが悪いと、物理的に隙間が残ってしまうことがあります。

上下の歯が正しく噛み合うためには、それぞれの歯の大きさについて調和が取れている必要があるからです。

例えば、上の歯が下の歯と比べて先天的に小さい「矮小歯(わいしょうし)」の場合、歯をきれいに並べても、歯と歯の間にどうしても隙間ができてしまいます。

この「サイズの不調和」が原因の場合、歯の移動だけでは解決が難しいため、別の対処法が必要となります。

3. 抜歯したスペースが完全に閉じきっていない

抜歯を伴う矯正治療において、抜歯したスペース(空隙)が治療の最終段階で完全に閉じきらないケースです。

抜歯矯正では、抜歯したスペースを利用して歯を大きく移動させますが、歯の動き方には個人差があり、計画通りに歯が動かない場合があります。

骨が硬い人や新陳代謝がゆっくりな人の場合、計画よりも歯の移動に時間がかかり、抜歯した隙間が埋まらないままになってしまうのです。

ただしこの隙間は、治療期間を少し延長し、追加のゴムかけやワイヤー調整を行えば閉じる場合がほとんどです。

4. 舌で歯を押す癖(舌突出癖)が歯の移動を妨げている

舌の無意識の癖が、歯の移動を妨げている可能性もあります。

内側から舌で歯を押し返す力を毎日かけ続けると、その力が矯正装置による歯を動かす力に打ち勝ってしまい、歯が計画通りに動かないためです。

飲み込む時や話す時に、舌の先で前歯を押す癖(舌突出癖)があると、特に前歯の隙間が埋まらない原因になります。

この場合、歯を動かすだけでなく、癖そのものを改善するトレーニングが必要になることもあります。

矯正治療の終了前に隙間を埋めるための対処法

治療の終盤で隙間が残っていても、諦めないで。隙間の原因に応じた対処法があります。

ここでは、歯科で行う4つの対処法を解説します。担当医と話す際に備えて参考にしてください。

歯の側面を削って形を整える(IPR・ストリッピング)

歯の大きさや形のバランスが悪いことが原因で隙間ができている場合、IPR(ストリッピング)という方法が用いられます。

これは、歯の側面(隣接面)を、専用のヤスリや器具でごくわずかに(0.1mmから0.5mm程度)削り、歯の形を整える処置です。

歯を削ると聞くと不安になるかもしれませんが、削るのはエナメル質の範囲内であり、痛みを感じることはありません。

歯の形を四角く整えることで、歯同士が接する面が広くなり、特に歯茎の近くにできるブラックトライアングルを目立たなくさせる効果が期待できます。

補綴修復(ダイレクトボンディング)

歯の形が小さい場合(矮小歯)、またはブラックトライアングルが大きく歯を削るIPRだけでは対応しきれない場合には、レジン(歯科用プラスチック)を詰めて隙間を埋める方法をとります。

これをダイレクトボンディングと呼びます。

歯の表面に直接レジンを盛り足して、歯の幅を広げたり形を整えたりすることで、隙間を物理的に閉じます。

歯をほとんど削る必要がなく、治療も短期間で終わるため、審美的な改善を希望する人に選ばれることが多い治療法です。

ワイヤーやゴムかけの調整で歯の移動を行う

抜歯したスペースが閉じきっていない・歯が計画通りに動いていないことが原因であれば、さらに歯を移動させるための追加処置を行います。

矯正治療も最終仕上げの段階です。ワイヤーの調整を精密に行ったり、歯と歯の間にパワーチェーンと呼ばれるゴムをかけたり。あるいは患者自身で装着するゴムかけを強化する場合もあります。

追加処置により、残っている隙間を閉じるための力を加え続けます。

治療期間が少し延長になる可能性はありますが、歯を動かして隙間を閉じるための、矯正治療本来のアプローチです。

MFT(口腔筋機能療法)で舌癖を改善する

舌で前歯を押す癖(舌突出癖)が歯の移動を妨げて隙間の原因となっている場合、矯正治療開始前からMFT(口腔筋機能療法)というトレーニングを行います。

ワイヤーなどによる矯正で隙間を閉じたとしても、舌で押す力がかかり続ける限り、治療中も隙間が閉じにくく、治療後にも「後戻り」してしまうためです。

MFTは、舌の正しい位置(安静時に舌先が上の前歯の裏側のスポットにある状態)や、正しい飲み込み方(舌で歯を押さない)を覚えるためのメソッドです。

本人の癖を治して確かな治療結果を得るために、とても重要な処置と言えます。

矯正治療終盤での担当医への伝え方や必要なコミュニケーション

治療の終盤で歯と歯の間に隙間が残っていることに気づいた時、それを担当医にどう伝えればよいか悩む人は多いです。

不安や疑問を感じたら、どんな些細なことでも担当医に臆せず伝えることが重要です。なぜなら、自分自身が納得して治療を終えることが、矯正治療のゴールだからです。

医師は常に患者さんの満足度を気にしていますが、言葉にして伝えてもらわなければ気づけない場合があります。

不満を抱えたまま治療を終了せずに、遠慮なく相談しましょう。

「隙間が気になる」と素直に伝えてよい

まずは「この隙間が気になる」と正直な気持ちを素直に伝えることが第一歩です。

「こんなことを言ったら気分を害するかもしれない」「計画通りのはずだから」と遠慮する必要はありません。

正しく伝えなければ、不満を残したままであることに医師が気づけないまま治療を終了してしまう可能性も。不満を感じた段階で伝えましょう。

治療の調整中やリテーナー(保定装置)の説明を受けるタイミングが良い機会です。

順調なのは承知しているのですが、ここの隙間がどうしても気になっていて……」と、具体的に指差しながら伝えてみましょう。

誠実に伝えれば、ほとんどの歯科医師はあなたの不安に真摯に向き合ってくれます。

残った隙間について医師と確認すべきこと

隙間が残っていることについて不安を伝えたら、現状と今後の見通しを明確にするために具体的な質問をしておくと安心です。

隙間の原因や対処法、それに伴う費用や期間が分かると良いでしょう。

以下のリストを参考に、担当医に確認してみてください。

質問事項医師への聞き方
原因「この隙間が残っているのはなぜですか?」
「ブラックトライアングルですか?歯の大きさの問題ですか?」
対処法「この隙間を目立たなくする(閉じる)方法はありますか?」
「IPRやダイレクトボンディングは可能ですか?」
費用・期間「追加で処置をする場合、追加の費用や治療期間はどれくらいかかりますか?」

気になる点について回答を得ておくことで、今後の方針を冷静に検討できます。

▶関連記事:歯の隙間を埋める治療に保険適用は可能?費用相場と安さのリスクを解説【歯科医師監修】

治療のゴールを再度すり合わせよう

追加の処置を行う場合、担当医と治療のゴールを再度すり合わせる必要があります。

矯正治療のゴールは、「医学的に正しい噛み合わせ」と「患者が満足する審美性」(見た目)の両方を、可能な限り高いレベルで達成することです。

医師は医学的に正しい噛み合わせを最優先にゴール設定している可能性がありますが、患者さんは通常見た目を最優先に考えます。

隙間への対処法を聞いた上で、「私はこの隙間が閉じている状態をゴールと考えていますが、先生のお考えはいかがですか?」と、希望するゴールを明確に伝えましょう。

医師とゴールイメージを一致させ、納得のいく形で治療を終えることが重要です。

矯正の隙間に関するよくある質問(Q&A)

矯正治療の終盤で多くの人が抱く疑問について、専門家の視点からお答えします。

Q1. ブラックトライアングルは治せますか?

A1. 一度できてしまったブラックトライアングルを、歯茎を再生させて完全に「治す」ことは非常に困難です。

ブラックトライアングルは、歯茎が失われたのではなく、歯が整列したことで元々あった骨の形態が見えた状態だからです。

ただし、ブラックトライアングルを目立たなくさせる方法はあります

歯の側面を削るIPRで歯と歯の接点を下にずらしたり、ダイレクトボンディングによって樹脂で隙間を物理的に埋めたりする方法です。

どちらも審美的な改善には非常に有効なため、ブラックトライアングルの見た目が気になる場合は担当医に相談してみてください。

Q2. 終了後にリテーナーをサボると隙間ができますか?

A1. はい、隙間ができる(後戻りする)可能性が非常に高いです。

矯正治療後の歯は、まだ元の位置に戻ろうとする力が強く働いています。特に、歯を動かして閉じた抜歯スペースやブラックトライアングルの隙間は後戻りしやすいと言えます。

リテーナー(保定装置)は、歯が新しい位置で安定するまでの間、その歯並びを固定するためにとても重要です。

リテーナーの使用を怠ると、歯が再び動き出してせっかく閉じた隙間が開いてしまうことがあります。

矯正結果を維持するためには、医師の指示通りにリテーナーを装着し続けることが不可欠です。


Q3. 隙間を埋めるのにどれくらい追加の期間がかかりますか?

A1. 隙間の原因と対処法によって全く異なります。

例えば、ダイレクトボンディングによって樹脂で隙間を埋める場合は、矯正治療が終了した後、1回の来院で完了することがほとんどで、所要時間も30分から1時間程度です。

歯を削る処置を行うIPRも、数回の調整時に合わせて行うことが多いです。

一方で、ワイヤーやゴムかけの調整で追加の歯の移動が必要な場合は、数ヶ月単位で治療期間が延長になる可能性があります。

自分のケースでは隙間を埋めるのにどれくらいの期間が必要になるか、必ず担当医に具体的な見通しを確認しましょう。

まとめ:不安を抱えたまま終了せず担当医とゴールを再確認しよう

この記事では、矯正治療の終盤で隙間が埋まらない原因とその対処法について解説しました。

結論として、最も重要なのは隙間に対する不満や疑問を抱えたまま治療を終了させないことです。

なぜなら、矯正治療は機能的な改善だけでなく、患者さん自身がその歯並びに満足することがゴールだからです。

治療計画の最終段階であっても遠慮せずに担当医とコミュニケーションを取り、治療のゴールを再度すり合わせましょう。

この記事のポイント
  • 矯正で残る隙間の多くは、歯茎が下がって見えるブラックトライアングルや歯の移動不足
  • 隙間が残る原因は、歯の大きさの不調和、舌の癖、歯の移動が計画通りに進んでいないなど
  • 対処法として、IPR(歯を削る処置)、ボンディング(樹脂を詰める処置)、追加の歯の移動、舌のトレーニング(MFT)などがある
  • どんな小さな隙間でも気になる場合は担当医に正直に相談することが重要

納得のいく治療のために。「歯科まもる予約」でセカンドオピニオンも

ほとんどの場合、担当医との率直な話し合いによって最適な解決策が見つかり、不安を解消できます。

しかし、医師の説明を受けても納得できない場合や、他の意見も聞きたい場合は、セカンドオピニオンを聞くことも一つの方法です。

矯正治療は高額で長期間にわたるものであり、自分で心から満足して笑顔になれることが何より重要なのです。

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