歯周病予防や口臭ケアのために、毎日の習慣にマウスウォッシュを取り入れている方も多いでしょう。
インターネットなどで「歯周病にマウスウォッシュは逆効果」という情報を見たことはありませんか。「良かれと思って使っていたのにもしかして逆効果なの?」と不安になっている方もいるかもしれません。
実際、マウスウォッシュは使い方を誤ると歯周病に対して逆効果となる可能性があります。
特に、歯磨きの代わりにマウスウォッシュだけで済ませてしまうと、口の中がスッキリしても歯周病の根本原因は全く解決できません。
この記事では、歯科医師の視点から、マウスウォッシュが逆効果になり得る最大の理由と、歯周病ケアの正しい方法について解説します。
- マウスウォッシュが逆効果になる理由
- 正しい歯周病ケアの方法
- 正しいマウスウォッシュの使い方
- マウスウォッシュの選び方
マウスウォッシュを歯磨き代わりに使うのは逆効果
「時間がないからマウスウォッシュだけで済まそう」 この習慣こそが、歯周病ケアにおいて最も「逆効果」となる使い方です。
結論として、マウスウォッシュは歯磨きの代わりにはなりません。口の中がスッキリするだけで、歯周病の根本原因に対しては全くアプローチできていないからです。
ここでは、マウスウォッシュを歯磨き代わりに使うと逆効果である理由について詳しく解説します。
歯周病の原因「歯垢」(プラーク)は取れないから
マウスウォッシュには、歯周病の根本原因である「歯垢」(プラーク)を物理的に除去する力はありません。
歯垢はネバネバした細菌の塊で、歯の表面に強力に付着しています。 台所の排水溝のヌメリと同じで、水を流すだけでは取れず、スポンジでこする必要があります。
歯垢は歯ブラシやフロスでこすり落とす(ブラッシングする)以外に、除去する方法はないのです。
爽快感と「磨けたつもり」が一番危険
マウスウォッシュを使った直後は、ミントの香りや刺激で口の中がスッキリとし、強い爽快感が得られます。
危険なのは、この爽快感によって「歯がキレイになった」「磨けたつもり」と誤解してしまうことです。
歯垢が歯の表面や歯周ポケットに残ったままマウスウォッシュだけで満足してしまうと、その後の就寝中なども細菌が繁殖し続け、気づかないうちに歯周病が悪化してしまいます。
マウスウォッシュの正しい位置づけは歯磨きの補助
歯磨きに代替できないからと言って、マウスウォッシュが無意味なわけではありません。マウスウォッシュの正しい位置づけは、あくまで「歯磨きの補助」です。
歯周病ケアの主役は、歯ブラシやデンタルフロスによる物理的なプラーク除去です。
マウスウォッシュは歯磨きでプラークをしっかり落とした後に使えば、殺菌成分や抗炎症成分が口の隅々まで行き渡り、細菌の増殖を抑えるなどの補助的な効果を発揮します。
マウスウォッシュの使用に関する3つの注意点
マウスウォッシュが「逆効果」と言われる理由はほかにもあります。
製品の成分や使い方を正しく理解していないと、かえって口内環境を悪化させる可能性があります。
爽快感がある一方で、口内を乾燥させ、必要な菌まで殺してしまう危険性があるからです。
ここでは、マウスウォッシュを使用する前に知っておきたい3つの注意点を解説します。
1. アルコール(エタノール)の刺激が強い場合がある
市販のマウスウォッシュの多くには、強い爽快感と殺菌効果を得るためにアルコール(エタノール)が含まれています。しかし、このアルコールが逆効果になること場合も。
アルコールが揮発する際に口の中の水分を奪い、唾液の分泌を抑制してしまうことがあるためです。
口の中が乾燥すると、唾液による自浄作用が弱まって細菌が繁殖しやすくなります。 結果、歯周病や口臭が悪化する危険性があります。
また、ピリピリとした強い刺激が歯茎に炎症がある方には強すぎる場合もあります。
刺激が強い・口の中が乾燥すると感じた場合、アルコールフリー(ノンアルコール)タイプのマウスウォッシュを選ぶとよいかもしれません。
2. 良い菌まで殺菌してしまう可能性がある
殺菌力の強いマウスウォッシュを必要以上に使いすぎると、口の中の細菌バランスを崩す可能性があります。
口の中には、歯周病菌のような悪い菌だけでなく、口の健康を守るために必要な良い菌(常在菌)も存在しています。
強い殺菌成分によって常在菌まで殺菌してしまうと、かえって悪い菌が繁殖しやすいアンバランスな状態を招くことがあります。
殺菌=良いことと単純に捉えず、マウスウォッシュの過度な使用は控えるべきです。
3. 「液体歯磨き」も「洗口液」も歯磨き代わりにはならない
マウスウォッシュと呼ばれる製品には「液体歯磨き」と「洗口液」の2種類があります。そしていずれも、歯磨き代わりにはならないため注意が必要です。
「液体歯磨き」と「洗口液」では、使用用途が異なります。
| 液体歯磨き(デンタルリンス) | 歯磨き粉の液体版です。 口に含んでゆすいだ後、歯ブラシを使って歯を磨く必要があります。 |
| 洗口液(マウスウォッシュ) | 口をすすぐ際に使う仕上げ剤です。 歯磨きでプラークを落とした後の補助として使います。 |
「液体歯磨き」を「洗口液」のようにゆすぐだけで終わらせていた場合、逆効果になってします。
パッケージの表示をよく確認し、指示された用法・用量どおりに使用しましょう。
歯周病ケアの主役はマウスウォッシュではなく「歯磨き」
歯周病ケアの主役はあくまでも歯磨きです。
マウスウォッシュだけで歯周病は予防できません。マウスウォッシュには、歯周病の根本原因を物理的に取り除く力がないためです。
プラークをこすり落とすことが何よりも重要なことです。ここでは、歯磨きの重要性をおさらいします。
歯周病の根本原因は細菌の塊(歯垢)
歯周病の根本的な原因は、歯垢(プラーク)と呼ばれる細菌の塊です。
プラークが歯と歯茎の境目に溜まり、細菌が毒素を出すことで歯茎に炎症が起こります。これが歯肉炎であり、歯周病の初期段階です。
プラークは物理的にこすり落とすしかない
歯に強固に付着したプラークを除去する唯一の方法は、「物理的にこすり落とす」ことです。
プラークは単なる汚れではなく、ネバネバとした粘着性の高いバリア(バイオフィルム)を形成しています。うがい薬や水流だけでは洗い流すことができないため、歯ブラシを使ったこすり洗いが必要なのです。
プラークがある状態では、歯に薬液(マウスウォッシュ)を浸透させることも難しくなります。
したがって、マウスウォッシュで殺菌を試みる前に、まず歯ブラシとフロスでプラークを可能な限り除去することが不可欠です。
歯ブラシ+デンタルフロス・歯間ブラシが基本のケア
歯周病ケアの基本は、歯ブラシと、歯間清掃用具(デンタルフロスや歯間ブラシ)を組み合わせることです。
歯ブラシだけでは、歯と歯の間のプラークを完全に取り除くことができません。
歯ブラシで落とせるプラークは約60%程度と言われています。残りの40%は、歯と歯の間や歯周ポケットに潜んでいます。歯と歯の間や歯周ポケットの清掃には、フロスや歯間ブラシが必須です。
歯ブラシとフロスを使ったケアを徹底することが、マウスウォッシュの補助効果を最大限に引き出す前提条件となります。
逆効果にしないマウスウォッシュの正しい使い方・選び方
マウスウォッシュは、歯磨きの「補助」として正しく使えば、歯周病予防の強力な味方になります。
歯周病予防に適したマウスウォッシュを賢く選び、正しい使い方で活用しましょう。
ここでは、マウスウォッシュを逆効果にしないための正しい使い方と選び方を紹介します。
歯周病予防に有効な「薬用成分」が含まれている製品を選ぶ
歯周病予防を目的とするなら、パッケージに記載されている薬用成分を確認して製品を選ぶことが重要です。
製品によって、口臭予防が目的のものや虫歯予防が目的のものなどがあり、それぞれ配合成分が異なります。
歯周病予防を目的とするなら、以下のような成分が有効とされています。
| 効果 | 具体的な成分の例 |
| 殺菌成分 | ・CPC(塩化セチルピリジニウム) ・IPMP(イソプロピルメチルフェノール) ・CHX(グルコン酸クロルヘキシジン) |
| 抗炎症成分 | ・TXA(トラネキサム酸) ・GK2(グリチルリチン酸ジカリウム) |
| 歯茎の修復促進成分 | ビタミンE |
歯周病予防に効く薬用成分が配合されているか、成分表示をチェックして選びましょう。
刺激が苦手な人は「ノンアルコールタイプ」を選ぶ
マウスウォッシュ特有のピリピリとした刺激が苦手な人や口が乾燥しやすい人はノンアルコール(低刺激)タイプのマウスウォッシュを選びましょう。
強い刺激が苦手な場合、推奨される20秒から30秒の時間すすぐことが難しく、効果が半減してしまう可能性があります。
また、アルコールによる乾燥が、かえって口内環境を悪化させるおそれもあります。
現在は、ノンアルコールでも高い殺菌効果や抗炎症効果を持つ製品が多数販売されています。
刺激の強さと効果は必ずしも比例しません。自分が毎日無理なく続けられる使用感のものを選ぶことが大切です。
マウスウォッシュを使うタイミングは「歯磨きでプラークを除去した後」
マウスウォッシュを使う最適なタイミングは、歯ブラシやフロスでプラークを完全に除去した直後です。
プラークという障壁がない状態で使用することで、マウスウォッシュの殺菌成分や抗炎症成分が歯や歯茎の隅々まで行き渡り、効果を最大限に発揮します。
歯磨きの前に使っても、プラークが邪魔をしてしまい、歯や歯茎の細菌まで成分が届きません。
また、マウスウォッシュは寝る前の歯磨きの仕上げとして使用するのが最も効果的です。唾液が減る就寝中に、細菌が繁殖するのを抑えられるためです。
マウスウォッシュで改善しない歯周病は、歯科医院での治療が必要
正しい歯磨きとマウスウォッシュを続けていても、歯茎の腫れや出血が長期間続く場合、歯科医院での専門的な治療が必要です。
セルフケアでは取り除けない根本原因が隠れているかもしれません。自己判断で放置せず、専門家の診断を仰ぐことが重要です。
ここでは、歯周病予防や治療のために歯科医院を利用するメリットについて紹介します。
硬い「歯石」はセルフケアでは除去できない
セルフケアでには限界があります。特に、硬い歯石は自分では絶対に取れません。
歯石とは、プラークが唾液のミネラルと反応して石のように硬くなったものです。歯石は歯に強固に付着し、歯ブラシやフロスでは除去できません。
さらに、歯石の表面はザラザラしているため、新たなプラークの足場となりやすく、歯周病菌の温床となってしまいます。
歯石を安全かつ完全に取り除けるのは、専門的な器具と技術を持つ歯科医師・歯科衛生士だけです。
検査結果に応じた専門的な歯周病治療を受けられる
歯科医院では、まず歯周ポケットの深さを測定する検査やレントゲン撮影を行い、歯周病の進行度を正確に診断します。
その上で、以下のような専門的な治療を行います。
| 治療方法 | 内容 |
| スケーリング | 超音波や専用の器具(スケーラー)を使い、歯の表面や歯茎の浅い部分に付着したプラークと歯石を除去します。 |
| ルートプレーニング | 歯周ポケットが深くなっている場合、ポケットの奥深く、歯の根(ルート)の表面に付着した歯石や、細菌に汚染された歯の表面を滑らかに削り取ります。 |
専門的な治療によって歯周病菌を徹底的に除去し、歯茎が引き締まった健康な状態に導きます。
定期検診によって歯周病や虫歯の芽を早めに摘み取れる
歯茎の腫れや出血などの自覚症状がなくても、定期検診を受けることは非常に重要です。
歯周病は「サイレント・ディジーズ(静かなる病気)」と呼ばれ、初期段階ではほとんど自覚症状がなく進行するためです。
痛みや歯のぐらつきを感じた時点では、かなり進行しているケースが少なくありません。
症状がなくても、3ヶ月から半年に1回は歯科医院でプロのチェックとクリーニングを受け、歯周病を予防することが最も重要です。
歯周病とマウスウォッシュに関するよくある質問(Q&A)
歯周病とマウスウォッシュについて、よくある疑問にお答えします。
Q1. マウスウォッシュはピリピリするほど効果が高いのですか?
A1. いいえ、刺激の強さと、殺菌効果の高さは必ずしも比例しません。
ピリピリとした強い刺激は、主にアルコール(エタノール)やミント系の香料によるものです。
むしろ、刺激が強すぎると口の中が乾燥したり、粘膜を傷つけたりして、かえって口内環境を悪化させる場合もあります。
ノンアルコールで低刺激でも、優れた薬用成分を配合した製品は多くあります。 快適に使えるものを選びましょう。
Q2. 1日に何回も使っていいですか?
A2. 過度な使用は推奨されません。製品に記載されている用法・用量を守ってください。
殺菌力の強いマウスウォッシュを使いすぎると、歯周病菌のような悪い菌だけでなく、口内の健康を守るために必要な良い菌まで殺菌してしまう可能性があるためです。
口内細菌のバランスが崩れると、かえってトラブルを引き起こすこともあります。
歯磨きの後の仕上げとして、1日1回(特に就寝前)または2回(朝晩)の使用を目安にするのが一般的です。
Q3. 子どもも使えますか?
A3. 製品によりますが、子どものマウスウォッシュの使用には注意が必要です。
大人用のマウスウォッシュは、アルコールや刺激の強い成分を含んでいることが多く、子どもの口内環境には適していません。
子供がマウスウォッシュを使用する場合は、「子ども用」と明記された製品か「ノンアルコール・低刺激」の製品を選びましょう。
また、ブクブクうがいをして、飲み込まずに正しく吐き出せる年齢になってからの使用を検討してください。
判断に迷う場合は歯科医師に相談すると安心です。
まとめ:マウスウォッシュを正しく使って歯周病予防の味方にしよう
この記事では、マウスウォッシュが歯周病に逆効果と言われる理由と、その正しい使い方について解説しました。
結論として、マウスウォッシュは歯磨きの代わりにはなりませんが、歯磨きの補助として正しく使えば、歯周病予防の強力な味方になります。
大切なのは、マウスウォッシュの役割を正しく理解して日々のケアに取り入れることです。
- マウスウォッシュでは、歯周病の根本原因である「プラーク(歯垢)」を物理的に除去できない
- 歯磨きの代わりに使うと、プラークが残ったまま爽快感だけが得られ、逆効果になる
- 歯ブラシやフロスでプラークをしっかり除去した後に、仕上げとして使うのが最も効果的
- アルコールの刺激が強い場合は口内を乾燥させる可能性もあるため、ノンアルコールタイプを選ぶ
根本治療は歯科医院で。「歯科予約まもる」で信頼できる医院を見つけよう
自覚症状がなくても、定期的に歯科医院で検診を受け、専門家によるチェックを受ける習慣をつけましょう。
また、セルフケアを徹底しても、プラークが硬くなった「歯石」は、自分では絶対に除去できません。
歯茎の腫れや出血が改善しない場合、その原因は歯周ポケットの奥深くに隠れています。 歯周病の根本的な治療には、歯科医院での専門的なクリーニングや治療が不可欠です。
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