「大人になってから矯正を始めたいけれど、やっぱり費用が高そうで踏み出せない……」
「100万円くらいかかると聞くけれど、ローンは組めるの?医療費控除って使えるの?」
長年のコンプレックスだった歯並びを治したいと思った時、最初に立ちはだかるのが「お金」の壁ではないでしょうか。
大人の矯正治療は基本的に自費診療となり、決して安い買い物ではありません。
しかし、費用の仕組みや相場、賢い支払い方法を知っておけば、月々の負担をスマホ代程度に抑えて治療を始めることも十分に可能です。
この記事では、大人の矯正治療にかかる費用の相場を治療法別に分かりやすく解説。医療費控除の仕組みや、追加費用で後悔しないためのチェックポイントも紹介します。
歯科医師:鈴木 遼介
成人の矯正治療に用いられる装置は複数あります。近年では、見た目や生活面を重要視する患者様も多く「費用が高そう」「自分のライフスタイルに合う矯正装置はどれなのか」と疑問に思うかもしれません。
矯正治療を受ける前に、各々の装置の費用や医療費控除を知ることで、費用面の不安を解消できます。
歯並びが整うことは、見た目だけでなく将来の健康への自己投資でもあります。まずは、矯正相談を受けてはいかがでしょうか。
- 大人の歯科矯正にかかる費用の相場
- 治療費以外にかかる費用
- 歯科矯正で使える3つの支払い方法
- 医療費控除を適用できる例と適用時に必要なこと
【治療法別一覧表】大人の歯科矯正にかかる費用の相場
大人の歯科矯正にかかる費用は、相場として60万円から150万円程度が一般的です。もちろん、治療方法や症例の難易度によって大きく異なり、クリニックによってはこの範囲ではありません。
矯正治療は病気の治療とは異なり、原則として健康保険が適用されない自由診療(自費診療)です。そのため、使用する装置の種類やクリニックの立地、サポート体制によって料金設定に幅があります。
ただし、顎変形症など一部の疾患では保険適用となる場合もあります。ここでは一般的な自費の矯正を前提に解説しています。
まずは、代表的な4つの治療法の費用相場と特徴を一覧表で比較してみましょう。自分の予算と希望に合う方法の目星をつけてみてください。
| 治療方法 | 費用の目安(総額) | メリット | デメリット |
| 表側ワイヤー矯正 | 60〜100万円 | 適応症例が広く確実性が高い | 装置が目立ちやすい |
| 裏側矯正(舌側) | 100〜150万円 | 正面から見えない | 費用が高額で喋りにくい |
| マウスピース矯正 | 70〜100万円 | 透明で目立たず取り外し可能 | 自己管理が必要・適応外症例あり |
| 部分矯正 | 30〜60万円 | 安価で期間が短い | 適応症例が前歯の軽度なズレに限られる |
表側ワイヤー矯正:対応症例が広く60〜100万円が目安
表側ワイヤー矯正(ラビアル矯正)は、歯の表面にブラケットと呼ばれる器具をつけ、そこにワイヤーを通して歯を動かす最も一般的な歯列矯正方法です。
費用の相場は60万円から100万円程度と、全体矯正の中では比較的リーズナブルに抑えられる傾向があります。
ワイヤー矯正では、使用するブラケットの素材によっても費用が変動します。
たとえば、一般的な金属製のメタルブラケットは安価ですが目立ちます。
一方、白や透明のセラミックブラケットやプラスチックブラケットを選ぶと、審美性が高くなる分、費用も10〜20万円ほど加算されることが一般的です。
裏側矯正:目立たないが100〜150万円と高額
裏側矯正(リンガル矯正)は、歯の裏側(舌側)にブラケットとワイヤーを装着する方法です。
費用の相場は100万円から150万円程度と、他の治療法に比べて高額になります。
高額の理由は、オーダーメイドの矯正装置を作成する必要があり、見えにくい裏側での処置には高度な技術と手間が必要だという点にあります。
上の歯だけを裏側矯正にし、下の歯は表側にするハーフリンガル矯正という方法であれば、費用を少し抑えられます。100〜120万円程度が相場です。
マウスピース矯正:全体矯正は70〜100万円程度
マウスピース矯正は、透明で薄いプラスチック製の装置を交換しながら歯を動かす治療法で、近年非常に人気があります。「インビザライン」などのブランドが有名です。
費用の相場は、全体的な矯正を行う場合で70万円から100万円程度です。
奥歯の噛み合わせまでしっかりと治す全体矯正(フル矯正)の場合は一般的に、ワイヤー矯正と同等か、あるいはそれ以上の費用がかかります。
「マウスピース矯正が月額数千円から」というSNS広告などを見かけることがありますが、これはごく軽度の前歯のズレを治すだけの治療であったり、デンタルローンの月々の支払額を指したりしている場合が多いです。
部分矯正:前歯だけの場合は30〜60万円程度なことも
部分矯正(MTM)は、奥歯の噛み合わせは変えず、前歯の「すきっ歯」や軽いデコボコなどの気になる部分だけをピンポイントで治療する方法です。
費用の相場は30万円から60万円程度です。
動かす歯の本数が少なく、治療期間も数ヶ月から1年程度と短いため、費用を大幅に抑えられます。結婚式前などに「見えるところだけ治したい」という人に選ばれています。
大人の歯列矯正にかかる治療費以外の費用
矯正治療の契約をする際には、提示された金額が装置代だけなのか総額なのかという点に注意が必要です。
多くの歯科医院では、装置の費用とは別に通院ごとの処置料や検査料がかかる料金システムを採用しています。うっかりしていると、治療が終わる頃には当初の予算を大幅にオーバーする結果になりかねません。
一方で最近では、治療開始から終了までにかかる全ての費用を最初に提示するトータルフィー制度(定額制)を導入する医院も増えています。
費用面で後悔しないためには、治療完了までにかかる総額をシミュレーションしましょう。
ここでは、見落としがちな4つの追加費用について解説します。
初診相談料・精密検査料・診断料:3〜5万円
矯正治療を始める前には、現在の歯並びや骨格の状態を詳しく調べる精密検査が必要です。レントゲン撮影やCT撮影を行って歯型を取り、顔や口の中の写真を撮影(顔貌撮影)します。
これらの検査と診断にかかる費用の相場は3万円から5万円程度です。
また、検査の前段階である初診相談(カウンセリング)にも3000円程度の費用がかかる場合があります。
最近では相談を無料で行っている医院も増えていますが、精密検査以降は有料となるケースがほとんどです。
つまり、実際に装置がつく前の段階で数万円の出費が必要になるため、予算に組み込んでおく必要があります。
毎月の処置料:3千〜5千円が通院のたびにかかる場合も
トータルフィー制ではない場合、毎回の通院時に調整料(処置料)と呼ばれる費用が発生します。
ワイヤー、ブラケット、ゴムの交換や歯の動きを確認したりマウスピースの適合を確認したりする作業にかかる費用で、相場は1回あたり3千円から5千円程度です。
大人の矯正治療は平均して2年から3年かかり、通院回数は24回から36回程度になります。仮に調整料が5千円で30回通院したとすると、15万円もの追加費用がかかる計算になります。
治療期間が延びれば延びるほど総額が膨らんでいくため、治療の長期化が懸念される場合はトータルフィー制の医院を選ぶと安心です。
保定装置(リテーナー)代:数万円が別途必要かも
動かしたばかりの歯は骨が安定しておらず放っておくと元の位置に戻ろうとする後戻りを起こします。後戻りを防ぐために装着するのが保定装置(リテーナー)です。
リテーナー代が別途かかる場合、費用相場は3万円から5万円程度です。
リテーナーを紛失したり破損したりした場合は、さらに再製作の費用がかかることも覚えておきましょう。
抜歯や虫歯治療の費用:矯正以外の治療料金は別途必要
矯正治療を行うために便宜抜歯(健康な歯を抜くこと)が必要な場合や、治療中に虫歯や歯周病が見つかった場合の治療費は基本的に矯正費用には含まれません。
矯正専門の歯科医院では抜歯や虫歯治療を行っていないケースが多く、その場合は提携している一般歯科医院を紹介され、そこで別途治療費用を支払うことになります。
健康な歯を抜く便宜抜歯は自費診療となり、1本あたり5000円から1万円程度かかることが一般的です。
虫歯や歯周病治療は保険適用ですが、複数の医院に通う手間と費用が発生する点は理解しておきましょう。
歯科矯正で使える3つの支払い方法
矯正治療は高額なため、一括で支払うのは経済的に厳しいと感じる方も多いでしょう。
しかし、現在では多くの歯科医院がさまざまな支払い方法を用意しており、大人の矯正を始める人の多くは分割払いを利用しています。
分割払いやローンをうまく利用すれば、月々の負担をスマホ代や習い事の月謝程度に抑え無理なく治療をスタートできるかもしれません。
ここでは、歯科矯正で使える3つの支払い方法について、それぞれのメリットと注意点を解説します。
デンタルローン:歯科専用ローンで月々の負担をおさえる
デンタルローンは信販会社や銀行が提供する歯科治療専用のローンです。
デンタルローンの最大の特徴は分割回数を多く設定できる点で、60回(5年)や84回(7年)といった長期払いも可能です。
これにより、月々の支払額を低く抑えることができます。
一例として、総額80万円の治療費を年利5%で60回払い(5年)にした場合、初回は約1万7000円、2回目以降は月々約1万5000円程度の支払いで済む計算になります。
このくらいの金額なら、毎月無理なく支払っていけると感じる人もいるのではないでしょうか。
ただし、分割回数が増えれば増えるほど金利手数料がかさみ、支払う総額は高くなります。また、利用には審査が必要で、金利や条件は信販会社やプランによって異なります。
契約前に必ず支払いシミュレーションを行い、月々の支払額だけでなく手数料を含めた総額がいくらになるかを確認しましょう。
クレジットカード払い:ポイントが貯まるメリットも
普段使っているクレジットカードで治療費を支払う方法も検討できます。
最大のメリットはカード会社のポイントが貯まることです。100万円近い支払いであれば、還元率1%のカードでも1万円分以上のポイントが還元されるため実質的な値引き効果が期待できます。
また、デンタルローンのような新たな審査や手続きが不要でスムーズに決済できる点も魅力です。
クレジットカード払いの注意点は、カードの利用限度額です。一般的なカードの限度額は数十万円程度に設定されていることが多く、治療費全額を決済できない場合があります。
その場合は、事前にカード会社に連絡して一時的な増額申請を行う必要があります。
また、分割払いやリボ払いを選択するとデンタルローンよりも金利手数料(年利15%前後など)が高くなる傾向があるため、基本的には一括払いや2回払いでの利用か計画的な利用が推奨されます。
院内分割払い:金利手数料なしで分割できる歯科医院もある
院内分割払い(窓口分割)は、信販会社を通さず歯科医院と直接契約して分割払いをする方法です。
この方法の最大のメリットは多くの医院で金利や分割手数料がかからない点です。金利によって総額が変わらないため、コストを少しでも抑えたい人にとって、最もお得な支払い方法です。
また、信販会社の審査がないためローンに通るか不安な人でも利用しやすいのが特徴です。
ただし、デンタルローンのように何年にもわたる分割払いはできません。
一般的には「治療期間内に払い終えること」が条件となることが多く、分割回数は12回から24回程度(1年から2年)に制限されます。
そのため月々の支払額はデンタルローンよりも高くなる傾向があります。
院内分割払いを導入している医院としていない医院があるためカウンセリング時に確認してみましょう。
大人の歯科矯正に医療費控除を適用できるケースも
「大人の矯正には保険がきかないから医療費控除も関係ない」と思い込んでいませんか。実はそれは誤解です。
自費診療であっても一定の条件を満たせば医療費控除の対象となり、確定申告を行えば納めた税金の一部が還付される(戻ってくる)可能性があります。
矯正治療は高額なため控除額も大きくなる傾向があり、医療費控除を申請するかしないかで実質的な負担額に数万円から数十万円もの差が出ることもあります。
ここでは、意外と知られていない医療費控除のルールと対象になるためのポイントについて解説します。
噛み合わせの改善目的なら対象になるケースが多い
医療費控除の対象となるかは、治療の目的によって決まります。
国税庁の指針では「容ぼうを美化するための費用(美容目的)」は対象外とされていますが「噛み合わせの改善など機能的な問題の治療」であれば大人であっても医療費控除の対象になるとされています。
「歯並びが悪くて食事がしにくい」「発音に支障がある」「歯並びが原因で歯周病が悪化している」などの医学的な理由があれば、医療費控除対象として認められる可能性が高いのです。
自身の症例が対象になるかは、担当の歯科医師に「医療費控除の対象となる診断書(診断証明書)の発行が可能か」を確認してみるのが最も確実です。
控除対象になれば10万円以上支払った場合に確定申告で還付される
医療費控除は1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費の合計が原則として10万円を超えた場合に利用できます。
医療費の合計として、矯正治療費だけでなく、その年にかかった他の病気の治療費や薬代、病院までの交通費なども合算できます。
実は自身や子どもが矯正歯科に通うために使った電車やバスなどの公共交通機関の運賃も、医療費控除の対象になります。
自家用車のガソリン代や駐車場代は対象外ですが、公共交通機関を利用した分については日付と経路と運賃をメモに残しておけば認められます。
あくまで一つのモデルケースですが、例えば年収500万円の人が矯正治療で年間80万円を支払った場合、医療費控除を申告することで、所得税と住民税を合わせて約15万円から20万円程度の税金が戻ってくるケースがあります。
ただし、戻ってくる金額(還付金と節税額)は支払った医療費の額だけでなく、自身の所得額(税率)や家族構成によって大きく異なります。
「〇〇円戻ってくる」と一概には言えないため、国税庁のホームページにあるシミュレーションコーナーなどで試算してみることをおすすめします。
領収書は捨てずに保管しよう
医療費控除を受ける場合に最も重要なのは、領収書の保管です。
確定申告の際に領収書の提出は省略できるようになりましたが、自宅で5年間保管する義務があります。
また、デンタルローンを利用した場合は信販会社の契約書や領収書が証明書類となります。
再発行には手数料がかかる場合もあるため、治療に関する書類専用のファイルを作り、すべて大切に保管しておきましょう。
大人の矯正治療に関するよくある質問
矯正治療を検討する際、費用以外にも気になることはたくさんあるでしょう。
ここでは、大人の矯正治療に関する3つの質問に回答します。
Q1. 40代や50代からでも矯正はできますか?
A. はい。歯科矯正に年齢制限はありません。
歯を支える骨(歯槽骨)と歯茎が健康であれば、何歳からでも矯正治療は可能です。実際に50代、60代で治療を始める人もいます。
ただし、成人は子どもに比べて歯周病のリスクが高いため、矯正前に歯周病の治療が必要になる場合があります。
また、年齢とともに歯の動きがゆっくりになる傾向があるため、治療期間が多少長くなる可能性も考慮しておきましょう。
Q2. 治療費以外に追加料金がかかることはありますか?
A. 基本的な治療料金以外にも費用が発生する可能性があります。
一般的な料金体系では、通院ごとの調整料や、治療後の保定装置(リテーナー)代が別途かかることが多いです。
また、治療中に虫歯ができた場合の治療費や、計画変更に伴う装置の再製作費などが発生することもあります。
予想外の出費を防ぐためにも、契約前に「総額制かどうか」「追加費用がかかるケースは何か」を必ず確認してください。
Q3. デンタルローンの審査に通るか不安です
A. 安定した収入があれば、多くの場合は審査に通過できます。
デンタルローンの審査基準は信販会社によりますが、一般的に安定した収入があれば利用可能です。
専業主婦(主夫)や学生で自身の収入がない場合は、世帯主や保護者の名義で申し込むか、連帯保証人を立てることで利用できるケースがほとんどです。
歯科医院によっては、審査なしで利用できる院内分割払いに対応しているところもありますので、まずは相談してみることをおすすめします。
まとめ|費用だけで選ぶと後悔するかも。歯科医院選びは慎重に
矯正治療は高額なため、少しでも安く済ませたいと考えるのは自然なことです。しかし、「安いから」という理由だけで歯科医院を選ぶのは危険です。
近年では、月額数千円から始められる格安のマウスピース矯正などが流行していますが、適応できる症例は限定されています。
自身の歯並びが適応外症例にもかかわらず無理に格安矯正を行うと、以下のようなトラブルに発展するリスクがあります。
- 噛み合わせがおかしくなった
- 歯茎が下がった
- 結局うまく矯正できず追加費用がかかった
もちろんすべての格安矯正が危険というわけではありません。適切な診査診断と適応判断がされているかが重要なのです。
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後悔しない矯正治療のためには、費用の安さより、歯科医師の技術と経験を重視して選ぶことが鉄則です。
しかし、数ある歯科医院の中から自分に合った信頼できる医院を見つけるのは簡単ではありません。
そんな時に頼りになるのが、全国の歯科クリニックからあなたにピッタリの歯科が見つかる「歯科まもる予約」です。
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