「毎日ゴムかけを頑張っているのに、鏡を見ても変化がわからない…」
「この面倒な作業はいつまで続くの?本当に意味があるの?」
矯正治療の終盤に始まることが多い「ゴムかけ」(顎間ゴム)。食事と歯磨き以外はつけっぱなしというルールに、心が折れそうになっている人もいるかもしれません。
しかし、ゴムかけは矯正治療の中で最も重要な工程です。
歯並びを整えるだけでなく、上下の顎のバランスや噛み合わせ、そして「横顔のEライン」や「口元の突出感」を変えるカギは、実はこの小さなゴムが握っています。
この記事では、ゴムかけによって起こる顔や歯の変化を歯科的な根拠に基づいて解説。さらに、ゴムかけの効果を最大限に引き出すコツ、最短で終わらせるポイントも紹介します。
歯科医師:鈴木 遼介
「顎間ゴム」を用いれば、患者様の協力によって歯の移動や緊密な噛み合わせを作ることができます。
重要なことは、矯正担当医の指示を守り「使用時間」「使用方法」をきちんと守ることです。着用時間によって歯の動きが遅くなり治療効果が遅くなるためです。
矯正装置がついた口の中でゴムを取り外すのは難しいと感じるかもしれません。また、誤った方向で過度に力が加われば、矯正装置が破損する可能性もあります。
最初のうちは、予備のゴムをカバンにしまい、忘れないようにスマートフォンアラームを設定してゴムを交換するという習慣付けを行いましょう。慣れるまでは、鏡を見ながらゴムを交換することをおすすめします。ほとんどの場合、2週間ほど使用すればゴムの着脱や痛みに慣れます。強い痛みや違和感などがあれば矯正担当医に相談をしましょう。
「顎間ゴム」は矯正治療を成功させるための道具であり、使用方法や時間をきちんと守れば、治療期間の短縮につながります。小さい努力の積み重ねによって、美しくきちんとした噛み合わせを手に入れましょう。
- ゴムかけによって起こる顔や歯の変化
- ゴムかけの効果を最大限に引き出すコツ
- ゴムかけを最短で終わらせるポイント
サボってしまうと治療期間が半年以上延びることも。理想的な歯並びに向けてラストスパートをかけましょう。
矯正のゴムかけ(顎間ゴム)によって起こる3つの変化
矯正治療の中盤から後半になると開始されるゴムかけ(顎間ゴム)。これは小さな医療用の輪ゴムを装置のフックに自分でかける工程です。
地道で面倒な作業ですが、上下の歯列の位置関係(顎間関係)を微調整するための非常に重要なプロセスです。実はこの調整は、ワイヤーやマウスピース装置だけでは難しいのです。
ゴムが元の大きさに縮もうとする弾性力が、歯を正しい位置へと誘導する補助的な矯正力となり、治療の仕上げ段階で見た目と機能の両面に変化をもたらします。
ここでは、ゴムかけによって具体的にどのような変化が生まれるのかを3つの視点で解説します。
噛み合わせ:上下の歯がガッチリ噛み合う
ゴムかけの最大の目的であり、最も実感しやすい変化は噛み合わせの完成です。
矯正治療によって歯並びが一見きれいになったように見えても、実は上下の歯がお互いに接触せず浮いている状態や、点だけで接している不安定な状態であることが少なくありません。
ここでゴムかけを行うと、ゴムによって垂直方向への力が働き、上下の歯が互いに引き寄せられます。
最終的に上の歯の山と下の歯の谷がジグソーパズルのようにピタリと嵌まり込む、緊密な噛み合わせ(緊密咬合)を作り上げることができます。
しっかり噛めるようになることで食事がしやすくなり、歯列が安定します。後戻りのリスクを減らすことにも繋がります。
顔の輪郭:噛み合わせが整うことでフェイスラインが整う場合がある
ゴムかけによって噛み合わせが改善されると、顔の輪郭やフェイスラインにもすっきりとした良い変化が現れることがあります。
「顔の形が変わった」と驚く人も多いですが、これは顎の骨そのものの形が変わったわけではありません。
噛み合わせが悪い状態では、無意識のうちに顎の周りの筋肉(咬筋など)に余計な力がかかり、筋肉が凝り固まってエラが張ったように見えたり、左右で歪んで見えたりすることがあります。
ゴムかけによって正しい顎の位置でリラックスして噛めるようになると、筋肉の過度な緊張が解け、その人が本来持っているシャープなフェイスラインに戻る効果が期待できます。
あくまで歯の移動に伴う軟組織(筋肉や皮膚)の変化ですが、見た目の印象が変わることがあるのです。
ただし、変化の程度には個人差があります。
Eライン:前歯が適正な位置に下がり横顔のバランスが美しくなる
ゴムかけは、横顔の美しさの指標であるEライン(エステティックライン)の改善にも貢献します。
特に出っ歯(上顎前突)や受け口(下顎前突)のケースでは、前後のズレを修正するためにゴムの水平方向への力を利用します。
例えば、上の前歯を後ろに引くようにゴムをかけると、前歯が後退するのに合わせて唇も内側に下がり、鼻先と顎先を結んだEラインの内側に唇が収まる美しい横顔に近づきます。
口元の突出感が消えて口が閉じやすくなることで、口呼吸の改善や、顎の梅干しジワを防ぐ一助になると考えられています。
ゴムかけの効果を実感できる時期はいつから?
毎日鏡を見ていると、昨日の顔と今日の顔の違いにはなかなか気づけないものです。
特にゴムかけを始めて間もない頃は、本当に効果があるのか不安になるかもしれません。
しかしゴムをかけると、徐々に歯の移動が始まります。
ここでは、ゴムかけの開始から終了までの期間ごとの変化について解説します。
今の自分がどの段階にいるのかを知れば、不安が解消されるかもしれません。
開始から1ヶ月:痛みとの戦いだが歯が動いている証拠
ゴムかけを始めて最初の1ヶ月間は、多くの人にとって最も辛い時期かもしれません。
顎がゴムの力で無理やり引っ張られるため、顎の関節がだるくなったり歯が浮くような痛みを感じたりすることがあります。
しかしこの不快感こそ歯が動こうとしているサイン。矯正治療で歯が動くときには骨の代謝活動が活発になって炎症物質が出るため、どうしても痛みを伴います。
歯が痛いということは、ゴムの力が歯や骨に伝わり、体が反応している証拠なのです。
通常、この痛みには1週間から2週間程度で慣れてきます。今が一番の頑張りどきだと前向きに捉えて乗り越えることが、早期完了への第一歩です。
3ヶ月目以降:見た目の変化を感じやすい
自分で鏡を見て歯の動きを実感できるのは、ゴムかけを真面目に続けてから3ヶ月目以降になる場合が多いです。
最初は「なんとなく噛み合わせの位置が変わった気がする」という感覚的な変化から始まります。
その後徐々に前歯の隙間が埋まってきたり、出っ歯感が減って口が閉じやすくなったり、外見上の変化として現れます。
毎日見ていると気づきにくい変化も、3ヶ月前の写真と比較すると一目瞭然ということもよくあります。
まずは3ヶ月間、騙されたと思って徹底的にゴムかけを続けてください。きちんと継続できれば、多くの場合、目に見える変化を期待できます。
中断はもったいない!ゴムによる変化を得るは継続が前提
ゴムかけにおいて最も重要なのは継続。矯正治療で歯を動かすためには、弱い力を長時間かけ続けることが鉄則です。
ゴムかけによる歯の移動は坂道を自転車で登るようなもので、漕ぎ続けていれば少しずつ進みますが、足を止めると一気に後ろまで下がってしまいます。
ゴムかけを1日サボると歯はすぐに元の位置に戻ろうとします。
せっかく1ヶ月頑張って動かした歯も、数日サボるだけで元の位置に戻り始めてしまいます。
変化を感じられない時期に中断してしまうのが一番もったいないことです。ゴムかけの継続こそ、最短で変化を手に入れる最も重要な方法であることを忘れないでください。
どんな変化を狙う処置?ゴムかけの種類別に解説
ゴムかけにはいくつかの種類があり、歯並びや改善したいポイントによってかけ方も全く異なります。
医師はレントゲンや模型分析の結果に基づき、歯を動かしたい方向を精密に計算してゴムをかける位置を指示します。
単に上下を繋いでいるだけに見えても、ゴムかけの種類によって明確な役割と狙いがあるのです。
ここでは、代表的な3つのゴムのかけ方とそれに期待できる変化について解説します。
自分が指示されたゴムかけのタイプを確認し、治療の意図を正しく理解することでモチベーションを高めましょう。
上顎前突用・II級ゴム:上の前歯を後ろに下げる
日本人に多い出っ歯や上顎前突と呼ばれるケースで最も頻繁に使用されるのがII級ゴムです。一般的に、上の犬歯(糸切り歯)付近のフックから下の奥歯のフックにかけてゴムを斜めに渡します。
ゴムの縮もうとする力が、主に上の前歯や歯列の一部を後ろ方向へ移動させると同時に、下の歯列を前方へ引き出すように働きます。
ゴムを継続して使用することで、前に出ていた上の前歯が徐々に後退し、口元の突出感が改善されていきます。
横顔のEラインが整い、口が閉じやすくなるため、見た目の変化を最も感じやすいゴムのかけ方の一つといえます。
下顎前突用・III級ゴム:下の顎を後ろに引いて受け口感を解消する
受け口やしゃくれと呼ばれる下顎前突のケースで使用されるゴムのかけ方が、III級ゴムです。
II級ゴムとは逆のパターンで、下の犬歯付近から上の奥歯にかけてゴムを装着します。
これにより、下の歯列全体を奥へと引っ込めつつ上の歯列を前方へ出す力が働きます。
歯の位置を整えることで、受け口特有の噛み合わせや横顔の印象をできる範囲で改善し、正しい噛み合わせの位置へと誘導するために不可欠な工程です。
受け口の方は骨格的なズレを伴うことが多く、治療期間が長くなる傾向がありますが、根気強く続ければ大きな変化が期待できます。
垂直ゴム・クロスゴム:開咬・オープンバイトや左右のズレを閉じる
歯の上下の隙間や左右のズレを微調整するために使われる特殊なかけ方が、垂直ゴムやクロスゴムと呼ばれるかけ方です。
垂直ゴムは、上下の歯のフックに垂直にゴムをかけて三角形や台形を作ります。
これは、開咬(オープンバイト)と呼ばれる、奥歯が噛んでいても前歯が開いてしまう状態を改善するために用いられ、上下の歯を集中的に引き寄せて隙間を改善します。
クロスゴムは上の歯の裏側と下の歯の表側(またはその逆)にゴムをたすき掛けのように交差させてかけます。
これは上下の歯の正中(真ん中のライン)がズレている場合や奥歯がすれ違って噛んでいる交叉咬合を改善するのに有効です。
どちらもピンポイントで強力な力をかけるため最初は強い違和感を伴いますが、噛み合わせの最終的な安定には欠かせないゴムかけの方法です。
ゴムかけしているのに変化がない人が見直すべき4つのポイント
「ゴムかけを毎日やっているつもりなのに一向に変わらない」「先生にまだ動いていないと言われてしまった」
そんな悩みがある人は、自身のゴムかけ生活を少し見直してみましょう。基本に立ち返るだけで停滞していた歯が再び動き出すかもしれません。
ゴムかけは非常に正直な治療法であり、やった分だけ進み、サボった分だけ遅れます。変化を感じられない場合、必ず何らかの原因があります。
ここでは、ゴムかけの効果が出ない場合のチェックポイント4点を紹介します。
- 装着時間1日20時間以上のルールを厳守できているか
- 使い捨てのゴムを1日1回交換しているか
- 鏡を見ずに間違った位置にかけていないか
- ゴムの力を利用できているか
1. 装着時間1日20時間以上のルールを厳守できているか
ゴムかけの効果が出ない最大の原因は装着時間の不足です。
多くの歯科医師は、食事と歯磨き以外の時間、つまり1日あたり20時間以上の装着を推奨しています。歯を動かすためには、弱い力を絶え間なくかけ続ける必要があるからです。
例えば学校や職場で、人目が気になるからと外したり、食事の後につけ忘れてそのまま寝てしまったりしていませんか。
ゴムの装着時間が短いと、歯は元の位置に戻ろうとする後戻りを起こしてしまいます。
1歩進んで1歩下がる状態を繰り返していてはいつまで経ってもゴールには辿り着けません。20時間以上は絶対的なルールと捉え、生活の一部に組み込むことが成功の鍵です。
具体的な装着時間については、必ず担当医の指示に従ってください。
2. 使い捨てのゴムを1日1回交換しているか
「もったいないから」と数日間同じゴムを使い続けていると、本来必要な矯正力が歯に伝わらず、ただゴムをぶら下げているだけの状態になってしまいます。
一般的に、ゴムの力は1日で弱くなると言われています。常に新鮮で強い力をかけ続けるためにゴムは必ず毎日新しいものに交換してください。
ゴムかけに使う医療用ゴム(エラスティックゴム)は非常に精密に作られていますが、ゴムですので劣化します。
口の中の水分を吸収して何度も伸び縮みすることで、ゴムの弾力は時間とともに失われていくのです。
途中で切れてしまった場合は日中でも新しいゴムに取り替え、左右のバランスを保つようにしましょう。
ゴムを交換するタイミングについても、担当医の指示を確認してください。
3. 鏡を見ずに間違った位置にかけていないか
実は本来かけるべきフックとは違う場所にゴムがかかっていたということが、意外とよくあります。
ゴムをかける位置が歯一つ分ズレるだけで、ゴムが歯を引っ張る方向(ベクトル)が変わり、歯が全く違う方向へ動いてしまうおそれがあります。
これでは治療が進まないどころか、意図しない歯の動きを引き起こし、修正のためにさらに治療期間が延びることになりかねません。
ゴムかけに慣れてくると手先の感覚だけでパパッとゴムをかけてしまう人も多いですが、一度鏡を見てかけ方を確認してみてください。特にフックがたくさんついている場合は要注意です。
初心に帰り、毎回鏡を見ながら正しい位置にかかっているかチェックする習慣をつけましょう。
4. ゴムの力を利用できているか
ゴムかけの効果を高めるためには、ゴムが伸び縮みする動きを利用することが有効です。
日常生活では、会話などで自然に口を動かしましょう。血流や筋肉の働きの面でプラスに働くと考えられています。無理に大きく口を開ける運動をする必要はありません。
あくびをする際など、大きく口を開けすぎると、ゴムが切れたり顎関節を痛めたりする原因になるため注意が必要ですが、適度に口を動かすことはプラスになります。
「ゴムをつけているから喋らない」のではなく「ゴムをつけているからこそよく喋る」くらいの意識で過ごしてみましょう。
歯列矯正中のゴムかけに関するよくある質問
ゴムかけ生活が始まると、日常生活の中で「これってどうすればいいの?」という細かい疑問がたくさん出てくるものです。
ここでは、ゴムかけに関する3つの質問について回答します。
Q1.食事の時や歯磨きの時はゴムを外してもいいですか?
A.はい、食事と歯磨きの時間は外してください。
基本的に、食事中と歯磨きの時間はゴムを外して問題ありません。むしろ、ゴムをつけたまま食事をするとゴムを噛んで切れてしまったり、食べ物が引っかかって不衛生になったりするおそれがあります。
また、歯磨きの際にゴムがついたままだと歯ブラシが歯に届かず、虫歯のリスクが高まります。
ただし、ゴムを外している時間が長くなると効果が落ちてしまうため、食べ終わって歯を磨いたらすぐにゴムを装着するようにしましょう。
「外したらすぐつける」を習慣化することが大切です。
Q2.ゴムが頻繁に切れてしまいます。飲み込んでしまっても大丈夫ですか?
A.飲み込んでも害はありませんが、頻繁に切れる場合は相談を。
医療用の顎間ゴムを万が一飲み込んでしまっても、体に害はなく自然に排泄されますので過度な心配はいりません。ただし、ゴムが気道に入ると、気道閉塞の危険性があります。
1日に何度もゴムが切れてしまう場合、以下の原因が考えられます。
ゴムが頻繁に切れると矯正力が持続しません。次回の診察時に担当医に相談し、ゴムの種類やかけ方をチェックしてもらいましょう。
Q3.スポーツや楽器演奏の時もゴムかけは必要ですか?
A.基本的には装着推奨ですが、種目や楽器によっては一時的に外しても構いません。
軽い運動であればゴムをつけたままでも問題ありませんが、ラグビーや柔道など激しい接触があるコンタクトスポーツの場合は口の中を切るリスクがあるため、一時的に外すことを推奨する場合があります。
また、吹奏楽などの管楽器演奏も、ゴムが邪魔で演奏しにくい場合は演奏中のみ外しても良いとされることが多いです。
ただし、ゴムを外している時間が長くなると治療が進まないため、担当医と相談の上、「練習中は外してOKだが、その分寝る時間は絶対に忘れない」などのルールを決めておくことをおすすめします。
まとめ|ゴムかけをサボらず続けて矯正を仕上げよう
ゴムかけは矯正治療のラストスパートであり、理想の歯並びを手に入れるための最終仕上げです。
毎日の装着は面倒で痛みを伴うこともありますが、その努力は報われます。ゴムかけがいやになってきた時は治療を始めた頃の気持ちを思い出し、ここが正念場だと自分を奮い立たせてください。
ゴムの力で変化していく自分の顔を楽しみながら、治療が完了する日まで走り抜けましょう。
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もしゴムかけをしていて激しい痛みを感じたり顎の関節に異変を感じたりした場合は無理をせず歯科医師に相談してください。自己判断で中断・継続せず、必ず担当医に確認することが大切です。
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