鏡で舌を見たときに「いつもより白い……」「体調が悪いのかな?」と不安になったことはありませんか?
舌の白さは、体調不良や口腔のトラブルを知らせるサインかも。舌の色の変化は、胃腸の不調や免疫力の低下に関係している場合があります。
病気の初期症状である可能性も否定できないため、放置は禁物です。
本記事では、舌が白くなる原因や考えられる病気、放置によるリスク、正しい対処法まで、歯科医療の視点からわかりやすく解説します。
- 舌が白くなる原因や考えられる病気
- 舌が白いのを放置するリスク
- 舌が白いときの正しい対処法
舌が白いのは体調不良のサイン?
舌の白さは、体調不良や口腔内のトラブルの前兆である可能性もあります。病気の初期症状かもしれないため、油断は禁物です。
本章ではまず、舌が白い症状について概要を解説します。
舌苔(ぜったい)とは?
舌苔(ぜったい)とは、舌の表面に付着する白っぽい汚れのようなもので、食べかすや剥がれた粘膜細胞、細菌、真菌(カビの一種)などが混ざり合ってできています。
舌の表面には乳頭という細かな突起が多数存在しており、汚れが絡みつきやすくなっています。乳頭に汚れが絡みつき、唾液による自浄作用が低下すると、舌苔がたまりやすくなります。
本来、少量の舌苔は生理的なものとされ、健康な人にも見られます。しかし、舌苔が厚くなったり色が変わったりする場合、重篤な疾患が隠れている場合もあります。

舌苔の状態は、健康状態を反映する重要な指標であるため、日常的に注視すべきです。
正常な舌と異常な舌の見分け方
健康な舌としては、「淡いピンク色」で「うっすら白い舌苔がある」状態が理想的です。健康な舌の表面はなめらかで、痛みやひび割れも見られません。
一方、以下のような状態の舌は異常のサインと言えます。
舌の状態 | 考えられる問題 |
舌全体が真っ白 | 舌苔の過剰・口腔カンジダ症 |
黄色っぽい舌苔 | 生活習慣の乱れ(喫煙や食習慣)・口内の細菌増殖 |
黒ずみ | 黒毛舌(こくもうぜつ)や抗菌薬の影響 |
痛みや赤みがある | 口内炎・舌炎・白板症・扁平苔癬などの粘膜疾患 |
舌の色は、体調や口腔環境のコンディションを反映します。舌の様子を日々チェックすると、病気の早期発見につながるかもしれません。
舌に違和感がある場合は、歯科医院や口腔外科で診断を受けましょう。
以下に、舌の色に関連する体調の兆候について簡単に解説します。
舌が白い
舌が白く見える主な理由は、舌苔の増加です。
口の中のケア不足や唾液の減少、ストレスや免疫力の低下などが舌苔の増加に影響しています。
現時点では確定的な診断指標とはされていないものの、とくに風邪のひき始めや、胃腸に不調があるときに舌苔が増えやすいと言われています。
体が疲れているときや水分不足の場合にも多くの舌苔が見られる場合があります。
また、白く厚い舌苔が長期間残る場合、口腔カンジダ症などの感染症や、前がん病変である白板症の可能性も否定できません。
一時的な色の変化であれば過度に心配する必要はありませんが、改善が見られない場合は医療機関での相談をおすすめします。
舌が黄色い
舌が黄色く変色するのは、胃腸の不調や口腔内の細菌が原因である可能性があります。喫煙や飲酒の習慣がある方、脂っこい食事が多い方にも多く見られる傾向があります。
とくに、唾液の分泌が減少しているときには、舌苔が黄色っぽく変化しやすくなります。
まずは日々の食事内容や喫煙習慣を見直してみてください。
生活習慣の見直しや口腔ケアによって改善することが多いですが、舌が黄色い状態が長期間続く場合は内科的な要因も考慮すべきでしょう。
舌が黒い
舌が黒っぽくなる現象は、「黒毛舌(こくもうぜつ)」と呼ばれる状態で、抗生物質やうがい薬の長期使用、過剰な喫煙やカフェイン摂取などが関係している場合があります。
舌の乳頭が伸びて黒く見えるようになるため見た目は不快ですが、多くの場合は良性で、自然に改善します。
ただし、まれに全身疾患や免疫異常が関連している場合も。症状が長期化するようであれば口腔外科で診断を受けると安心です。
とくに、変色だけでなく痛みや腫れがある場合、自己判断するのは避けて検査を受けるようにしましょう。
舌が白くなる原因
舌が白くなる症状には、口の中のケア不足や生活習慣の乱れ、体調不良など、複数の要因が関係しています。
ここでは、舌が白くなる代表的な4つの原因について解説します。
口腔ケア不足
舌が白くなる原因でもっともよくあるのは、口腔ケア不足です。歯磨きをこまめにしていても、舌の表面までケアしていない人も多いでしょう。
舌の表面には乳頭という細かな突起があり、ここに細菌や食べかす、剥がれた粘膜などがたまりやすくなっています。
本来、唾液の自浄作用によって汚れはある程度は洗い流されますが、口の中が乾燥していたり、唾液の量が少なかったりすると、舌苔が徐々に蓄積していきます。
そのまま舌苔を放置すると白さが濃くなり、口臭を悪化させ、歯周病のリスクを高めることにつながります。
毎日の歯磨きに加え、舌のケアも欠かさないようにしましょう。
ストレスや睡眠不足
現代人の体調不良の背景として、ストレスや睡眠不足は見逃せません。
精神的な緊張状態や慢性的な睡眠不足が続くと、自律神経が乱れ、唾液の分泌量が減少しがちになります。
唾液には口腔内の細菌を抑える働きがあるため、唾液の量が不足すると舌苔が溜まりやすくなるのです。
さらに、ストレスが蓄積されると免疫力が下がり、口腔内の環境が悪化しやすくなることも知られています。例えば、口内炎や歯ぐきの腫れなどの変化が出てくるケースも少なくありません。
舌の白さは、健康状態の不調を知らせている可能性があるのです。
食事の偏りによる栄養不足や脱水
食生活の乱れも舌苔が増える一因です。
とくに、ビタミン群や鉄分が不足していると、口腔粘膜の新陳代謝がうまくいかず、白っぽい舌になりやすくなります。
野菜やたんぱく質が不足した食事が続いている方、極端なダイエット中の方は注意が必要です。
水分不足による脱水も見逃せません。体内の水分量が減ると唾液の分泌量も減少し、口の中の自浄作用が弱まります。これにより舌苔が落ちにくくなると、白さが目立つようになります。
朝起きた直後に舌が白く感じられる場合は、就寝中の脱水や口呼吸が関係している可能性もあります。
風邪や感染症、胃腸の不調
体調を崩したときに舌が白くなる経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
風邪やインフルエンザなどのウイルス感染症にかかると、免疫力が低下し、口腔内の常在菌のバランスが崩れやすくなります。その結果、舌苔が一時的に増えることがあります。
また、胃腸の働きが落ちているときに舌が白くなる傾向も。消化機能が低下していると、身体の代謝全体に影響が出て、舌の表面に変化が現れます。
食欲がないときや、胃もたれ、便秘などの症状があるときには、舌の状態にも注目してみるとよいでしょう。
舌が白い場合に考えられる病気
舌が白くなる現象は病気のサインである場合もあります。特に長期間白さが続いたり、痛みや違和感があったりする場合は注意が必要です。
ここでは、舌の白さと関連の深い病気を5つ紹介します。
口腔カンジダ症
口腔カンジダ症は、舌や口の中に白い苔状のものが付着する代表的な疾患です。カンジダ菌という真菌(カビの一種)が過剰に増殖することで発症します。
舌の表面にミルクをこぼしたような白い斑点
白苔をこすると下に赤い粘膜が見える
口の中の痛みや灼熱感(ヒリヒリする感じ)
口腔カンジダ症の主な発症要因は、免疫力の低下や抗生物質の長期使用、口腔の乾燥などです。高齢者や乳幼児、がんや糖尿病の患者に多く見られます。
治療には、歯科医院や口腔外科で診断を受け、抗真菌薬を処方してもらう必要があります。
白板症(はくばんしょう)
白板症は、口腔内にこすっても落ちない白い斑(はん)が出現する状態です。放置するとまれにがんへ進行する可能性もある「前がん病変」としても知られています。
白板症には基本的に痛みがなく、症状を自覚しにくいため、気づかずに長期間経過してしまうケースも少なくありません。
白板症は、喫煙やアルコールの過剰摂取、合わない入れ歯や詰め物による慢性的な刺激などが発症に関与するとされています。
がんが疑われる場合があるため、ケースによっては生検(組織検査)を行うことも。
白板症が疑われる症状が確認された場合、早めに専門医の診療を受け、適切な対応を行うことが重要です。
口内炎
舌の白さが部分的に現れ、かつ痛みを伴う場合は、アフタ性口内炎やウイルス性口内炎である可能性があります。
できものの境界線に赤みがある
痛みのある白い潰瘍がある
食事や会話時にしみる、ヒリヒリする
唾液量が少なく感じる
口内炎の原因としては、ストレスやビタミン不足、免疫低下などが挙げられます。ほとんどは数日〜10日程度で自然治癒しますが、再発を繰り返す場合、口腔内や全身の疾患が隠れている可能性があります。

たかが口内炎と思わず、注意しながら経過を観察しましょう。
白い口内炎の治し方については、こちらの記事も参考にしてください。
扁平苔癬(へんぺいたいせん)
扁平苔癬(へんぺいたいせん)は、自己免疫反応が関与していると考えられている、慢性的な炎症性疾患です。舌や頬の内側などにレース模様のような白い線が現れるのが特徴です。
扁平苔癬(へんぺいたいせん)では、舌の表面に白く網目状の模様が出る場合があり、びらんやただれを伴うタイプもあります。
食事の際にしみたり、痛みを感じたりするかもしれません。
原因は完全には解明されていませんが、歯科材料による金属アレルギーや、特定の薬剤の服用、ストレスが誘因となると考えられています。
見た目が目立ちにくいため軽視されがちですが、悪化すると癌になる可能性もあるため、早めに治療しておくと安心です。
舌癌(ぜつがん)
舌が白く見える際に最も注意が必要なのが、舌癌の初期症状である可能性です。初期段階では痛みがなく、白板症や口内炎と見分けがつきにくいため、自己判断で様子を見てしまう人も少なくありません。
がん性の病変は、舌の表面が白く硬くなったり、一部が盛り上がったり、触れるとしこりを感じるなどの変化が見られる場合があります。
病変がさらに進行すると、出血しやすくなったり、口臭が強くなったり、食事や会話に支障をきたすようになります。
舌の異常が2週間以上続く場合は、たとえ痛みがなくても歯科口腔外科での精密検査を受けるべきです。
早期発見できれば治療しやすく、予後も良好となるため、放置しないことが何よりも大切です。
舌が白いのを放置した場合のリスク
舌が白くなっていても、「痛くないし放っておいても大丈夫だろう」と軽視してしまっていませんか。
舌が白い状態を放置すると、口腔内だけでなく全身の健康にも悪影響を及ぼすリスクがあることをご存じでしょうか。ここでは、舌の白さを放置した場合のリスクについて解説します。
口臭が悪化する
舌が白いのを放置することで起こる、最も身近なトラブルのひとつが口臭の悪化です。
とくに舌苔が厚く蓄積している場合、口の中に嫌なにおいがこもりやすくなります。
これは、舌苔にひそむ細菌が食べかすや粘膜の老廃物を分解する過程で、悪臭成分である揮発性硫黄化合物を発生させるためです。
口臭は自分では気づきにくいものですが、会話や呼気から臭いが漂い、周囲に不快感を与えてしまうかも。コミュニケーションにも悪影響を及ぼしかねません。
白い舌をそのままにすると、気づかないうちに口臭の原因を作ってしまうおそれがあるのです。日々舌磨きを行って清潔な状態を保つことが、口臭対策として非常に重要です。
味覚障害を引き起こす可能性がある
舌の表面には、「味蕾(みらい)」と呼ばれる味を感じ取る器官があり、食べ物の味や香りを繊細にキャッチしています。
しかし、舌が白く見えるほど極端に舌苔が厚くなると、味蕾が覆い隠されてしまい、味覚の感度が鈍くなってしまうという報告もあります(ただし、限定的です)。
たとえば、食べ物の味が薄く感じるようになったり、苦味や酸味を強く感じるようになったりする違和感が現れる場合も。
とくに高齢者では、こうした味覚の低下によって食欲が減退し、結果として栄養不足に陥るという悪循環を招くケースも少なくありません。
一見ささいに思える舌の白さが、日常の楽しみである「食べること」にも大きな影響を与えてしまうため、早めに対処しましょう。
虫歯や歯周病につながる
白くなった舌を放置すると、虫歯や歯周病などの歯科疾患のリスクが高まる可能性も見逃せません。
舌苔に存在するさまざまな細菌の中には、歯垢(プラーク)と結びついて悪さをするものも含まれています。
免疫力が落ちて唾液の自浄作用が低下していたり、舌のケアが不十分な状態が続いたりすると、細菌が口腔内全体に広がりやすくなります。
その結果、歯の表面に細菌が付着して虫歯を引き起こし、歯ぐきの炎症が進行して歯周病に移行する危険性が高まります。
つまり、舌の清潔を保つことは歯や歯ぐきの健康維持に直結しているのです。
重大な病気であるおそれがある
もっとも深刻なリスクは、舌の白さが重大な病気の初期症状である可能性です。
口腔カンジダ症や白板症、舌がんなどの疾患では、舌の表面に白い変化が現れることが少なくありません。
とくに、白い部分がこすっても取れなかったり、しこりや痛みを伴っていたりする場合は要注意です。
疾患の初期段階であっても自覚症状がほとんどなく、放置してしまう人も多いです。ただし、病気が進行してからでは治療に時間がかかることもあります。
舌の色の変化など、健康の異常を知らせる小さなサインを見逃さないことが、命を守るかもしれません。
舌の白さがいつもと違う、症状が長引いているなどの変化に気づいたら、早めに歯科や口腔外科での診察を受けてください。
舌が白いときの正しい対処法
舌が白くなっているのを見つけたとき、どう対処すれば良いか迷ってしまう方も多いでしょう。
本章では、舌の白さに気づいたときに実践すべき対処法を解説します。
口腔外科を受診する
舌の白さが数日以上続いており、痛みや出血、しこりがある場合は、歯科や口腔外科を受診してください。
とくに擦っても落ちない白斑がある場合は、それが白板症や扁平苔癬、さらには舌がんの初期兆候である可能性があります。
医療機関では、視診や問診に加え、必要に応じて細胞診や組織検査(生検)による診断が行われます。見た目だけでは判断できない疾患の有無も確認できるため安心です。
「まだ大丈夫」と様子を見るのではなく、少しでも不安を感じたら専門医に相談しましょう。
とくに、歯科医院での定期健診を受けていない方は、虫歯や歯周病予防の意味でも、一度口の中を診てもらうとよいでしょう。
舌磨きなどの口腔ケアを行う
舌苔が原因で舌が白くなっている場合は、正しい方法で舌磨きを行うことが改善への近道です。
舌は非常にデリケートな器官のため、力を入れてゴシゴシ磨くとかえって粘膜を傷つけてしまうおそれがあります。
舌磨きには専用の舌ブラシを用い、舌の奥から手前に向かってやさしく数回軽くなでるように磨きましょう。
歯磨きと同様、毎朝のルーティンに舌磨きを取り入れることで、舌苔の蓄積を防ぎ、口臭や味覚低下の予防につながります。
歯磨きはもちろん、デンタルフロスとうがい、舌磨きをセットで習慣づけることで、口腔内全体の清潔を保てます。毎日継続すれば、舌の見た目を含めた体調変化にもすぐに気付けるようになりますよ。
生活習慣を整える
体調不良や免疫力の低下が見られる場合、根本的な改善策として、生活習慣の見直しがもっとも効果的です。
とくに、ストレス過多や睡眠不足、栄養の偏りは、舌苔の増加や舌粘膜の不調を引き起こしやすくなります。
まずは十分な睡眠を確保し、バランスの良い食事を心がけましょう。ビタミン群や鉄分、たんぱく質をしっかり摂取することが大切です。
また、適度な水分補給によって唾液の分泌を促し、舌苔が自然に洗い流されやすくなる環境を整えることも必要です。
舌の状態を改善するには、ストレス対策や適度な運動、喫煙や過度のアルコール摂取を控えるのも忘れないでください。
日々の体調管理を意識し、口の中や全身の健康を保ちましょう。
まとめ
舌が白くなるのは、体調変化や口腔内の環境変化を反映するサインです。原因は、口腔ケア不足や生活習慣の乱れ、病気の初期症状までさまざまです。
日頃から健康管理の一環として、舌の状態に気を配る習慣を持つことが大切です。
舌の色が変わっても多くの場合はセルフケアで改善できますが、白さが長引いたり、痛みや違和感があったりする場合には、早めに歯科や口腔外科を受診しましょう。
すぐに歯科医院で診てもらいたい方は、全国の歯科クリニックからあなたにピッタリの歯科が見つかる「歯科まもる予約」もご利用ください。