話すのも、食事をするのもつらい、舌の横(側面)にできた痛い口内炎。「またここにできた……」と、繰り返し同じ場所にできることに、うんざりしていませんか?
頬の内側や唇と違い、常に歯と接触する舌の側面の口内炎は、治りにくく、日常生活への影響も大きいですよね。何か悪い病気の前触れなのでは?と、不安に思われている方もいるかもしれません。
結論から言うと、舌の側面にできる口内炎の多くは、歯が舌に当たるなどの物理的な刺激が原因です。
しかし、中には舌癌などの重大な病気の初期症状である可能性も隠れているため、自己判断で放置するのは危険です。
この記事では、歯科専門家の視点から、口内炎の痛みと不安を解消するための情報を網羅的に解説します。
- 舌の側面に口内炎ができる特有の原因
- 危険なサインの見分け方
- つらい痛みを和らげる対処法
なぜ舌の側面ばかり?口内炎の主な原因
「どうしていつも舌の横に口内炎ができるんだろう?」その疑問の答えは、舌の側面が常に「歯」という硬い組織と隣り合っているという、お口の中の構造にあります。
結論として、舌の側面にできる口内炎のほとんどの最大の原因は、歯による慢性的な物理的刺激です。
なぜなら、無意識のうちに舌が歯に擦れたり、当たったりすることで、粘膜に小さな傷がつき、そこから炎症が起きてしまうためです。
ここでは、その具体的な原因を3つのパターンに分けて詳しく見ていきましょう。
尖った歯や被せ物による慢性的な刺激
舌の側面に口内炎が繰り返しできる直接的な原因として非常に多いのが、尖った歯や、不適合な被せ物による刺激です。
自分では気づかなくても、虫歯で少し欠けて尖ったままになっている歯や、過去に治療した銀歯や詰め物の縁がシャープになっていると、それがヤスリのように舌を傷つけてしまいます。
食事や会話で舌が動くたび、尖った部分が舌の粘膜を傷つけて炎症を起こし、痛みを伴う口内炎へと発展してしまうのです。
特に奥歯は舌と接触しやすいため、こうしたトラブルが起きやすくなります。
歯並びや噛み合わせの問題
歯並びや噛み合わせが、舌の口内炎の根本的な原因となっているケースも少なくありません。
例えば、歯並びが内側に傾いていると、舌が収まるスペースが狭くなり、常に歯と舌が接触しやすい状態になります。
また、食事中や会話中に、誤って舌の側面を噛んでしまう「咬傷(こうしょう)」が癖になっている方がいますが、これも噛み合わせのズレが原因で特定の場所を噛みやすくなっている可能性があります。
こうした構造的な問題が解決されない限り、同じ場所に口内炎が再発しやすくなります。
ストレスや疲れによる免疫力の低下
尖った歯などの明確な物理的刺激がなくても、仕事の疲れや睡眠不足、精神的なストレスなどで体の免疫力が低下していると、口内炎はできやすくなります。
体全体の抵抗力が落ちると、お口の中の粘膜も非常にデリケートで荒れやすい状態になります。
普段であれば何でもないような、歯が少し擦れる程度のわずかな刺激でも、粘膜がそれに耐えきれずに炎症を起こしてしまうのです。
また、栄養不足(特にビタミンB群の欠乏)も、粘膜の健康を損ない、口内炎を引き起こす大きな要因となります。
物理的な原因と、体調の問題が重なった時に、口内炎が現れることが多くあります。
口内炎の治し方について詳しく知りたい人はこちらの記事も参考にしてください。
口内炎ではなく舌癌のサインかも?チェックポイント
舌の側面にできた口内炎が治らないと、「もしかして舌癌(ぜつがん)だったら……?」と最悪の事態を考えてしまうのは当然です。
ここでは、自分の症状を観察し、専門家へ相談すべきかどうかの一次判断ができるよう、舌癌の兆候との見分け方のポイントを解説します。
最も確実なのは専門家の診断を受けることです。少しでも不安な人は病院で相談しましょう。
【前提】ほとんどの口内炎は癌ではない
まず大切なことは、舌にできる口内炎のほとんどは心配のない「アフタ性口内炎」などであるということです。
舌癌は口腔がんの中でも発生頻度が高いがんですが、それでも口内炎に比べれば、その数は圧倒的に少ないのが現実です。
症状によっては、他の疾患である可能性はあります。
過度に不安になりすぎると、冷静な判断ができなくなってしまいます。
「癌かもしれない」とパニックになる前に、まずは「ほとんどの口内炎は癌ではない」と一息ついて、落ち着いてご自身の症状をチェックしていきましょう。
舌癌の初期症状と口内炎との違い
自分の口の中のできものが、以下の「舌癌の舌癌の可能性が疑われる特徴」のいずれかに当てはまらないか、鏡を見ながら慎重にチェックしてみてください。
| 項目 | 舌癌の可能性が疑われる特徴 | 良性の口内炎の特徴 |
| 期間 | 2週間以上経っても治らない、または大きくなる | 通常、1〜2週間で治る傾向がある |
| 形・境界 | 形が歪(いびつ)で、周囲の粘膜との境目が曖昧 | 円形などで、境界がはっきりしている |
| 硬さ | 表面や周りに「しこり」のような硬い部分がある | 周囲は粘膜と同じくらい柔らかい |
| 痛み | 初期段階では痛みがほとんどないことがある | 食事の際にしみるような痛みがある |
| 出血 | 少し触れただけでも簡単に出血する | 強く刺激しないと出血しにくい |
2週間以上治らない・しこりがある場合はすぐに専門医へ
セルフチェックをする上で、最も分かりやすい判断基準は「2週間」という期間と「しこりの有無」です。
通常の口内炎であれば、体の免疫機能によって2週間もあれば改善の兆しが見られます。
もし、あなたのできものが2週間以上たっても全く治らない、あるいは硬いしこりを感じる場合は、それが良性か悪性かを判断するためにも、絶対に放置せず、必ず専門医を受診してください。
特に「痛みがないから大丈夫」という自己判断は非常に危険です。初期の舌癌は痛みを伴わないことが多く、痛みの有無は危険性を判断する信頼できる基準にはなりません。
早期発見が何よりも重要ですので、歯科や口腔外科、、耳鼻咽喉科などの専門医の診察を受けましょう。
繰り返す舌の口内炎は根本治療が原則。病院での治療法
セルフケアを続けてもなかなか治らない、あるいは同じ場所に何度も口内炎ができてしまう…。
そのつらいループを断ち切るためには、根本的な原因解決が必要です。
体質の問題だけでなく、口内炎を引き起こす原因はさまざま。
ここでは、病院での治療はどのゆに行われるのかを具体的に解説します。
受診すべき科は歯科か口腔外科
舌の口内炎で病院に行くべきか迷った際、最初に受診すべきなのは歯科または口腔外科です。
歯並びや尖った歯、被せ物などが原因として考えられる場合、口内トラブルの専門家である歯科医師が最も的確な診断を下せます。
舌癌との鑑別診断が必要な場合も、歯科や口腔外科が専門となります。 まずは、かかりつけの歯科医院に相談してみましょう。
より専門的な診断や治療が必要と判断されれば、大学病院の口腔外科や、症状によっては耳鼻咽喉科などを紹介してもらえる場合もあります。
歯の研磨・マウスピースなどで原因に対処
歯科医院では、口内炎を薬で治すだけでなく、口内炎ができてしまう直接的な原因を取り除くための処置を行います。
例えば、虫歯で欠けて尖っている歯や、舌に当たっている被せ物の縁があれば、その部分を丸く滑らかに研磨します。
これだけで慢性的な刺激がなくなり、口内炎が劇的にできにくくなるケースが非常に多いです。
また、歯並びの問題や、睡眠中の無意識の噛み癖・歯ぎしりなどで舌を傷つけている可能性がある場合は、歯型に合わせたマウスピース(ナイトガード)を作製します。
マウスピース(ナイトガード)を就寝中に装着することで、舌を物理的に保護できます。
根本原因にアプローチすることが、再発を防ぐ上で最も重要です。
レーザー治療・薬物療法などの専門的な治療も
痛みが非常に強い口内炎に対しては、歯科医院でレーザー治療を行うことも選択肢の一つです。
レーザーを患部に照射することで痛みを瞬時に和らげ、表面に薄い膜(かさぶた)を作って刺激から保護し、治癒を促進する効果が期待できます。
治療中の痛みはほとんどなく、つらい症状を早く改善したい場合に非常に有効です。
また、市販薬での治療効果が不十分な場合、炎症を強力に抑えるステロイド軟膏など、より専門的な薬剤が処方されることもあります。
ただし、ステロイド軟膏は口内炎そのものの治りを遅くしてしまうため常用せず、強い痛みがある場合にのみ応急処置として使いましょう。
舌の側面の口内炎に関するよくある質問(Q&A)
舌の側面にできる口内炎について、多くの方が抱える共通の疑問や不安があります。
口内炎に関するよくある質問に、歯科医師の観点で回答します。
Q1. 同じ場所に何度もできるのはなぜ?
A1. 歯並びや尖った歯など、舌に接触する「物理的な原因」が解決されていない可能性が非常に高いです。
同じ場所に口内炎が繰り返しできるのは偶然ではなく、そこに炎症が起きやすい明確な理由があります。
主な原因として、以下が考えられます。
- 歯並びの問題:
特定の歯が内側に傾いていて、常に舌の粘膜に当たりやすい。 - 不適合な被せ物や詰め物:
治療した歯の縁が尖っていたり、段差があったりして、舌を傷つけている。 - 尖った歯:
虫歯で欠けたり、すり減ったりして歯が尖っている。 - 噛み癖:
無意識のうちに同じ場所の舌を噛んでしまう癖がある。
このような物理的な原因がなくならない限り、体の抵抗力が落ちたタイミングで何度でも再発してしまいます。
根本的な解決のためには、歯科医院を受診し、原因を特定して適切に対処してもらうことが不可欠です。
Q2. 痛くない口内炎は放置しても大丈夫?
A2. いいえ、痛くないからといって安心はできません。むしろ注意が必要です。
「痛くない=問題ない」と思いがちですが、自己判断は危険です。
なぜなら、初期の舌癌は痛みを伴わないことが多く、通常の口内炎であれば何らかの痛みを伴うのが一般的だからです。
痛みがないからと放置している間に、病気が静かに進行してしまう可能性があります。
痛みの有無に関わらず、「2週間以上治らない」「しこりがある」「簡単に出血する」などの兆候が見られる場合は、絶対に放置せず、必ず専門医の診察を受けてください。
舌癌や歯肉癌について詳しく知りたい人は、こちらの記事も参考にしてください。
Q3. 口内炎の予防に効果的な食べ物は?
A3. はい、粘膜の健康を保つビタミンB群を積極的に摂取することが効果的です。
口内炎の予防には、バランスの良い食事で体の中から粘膜を強くすることが大切です。
特に、皮膚や粘膜の再生を助け、「発育のビタミン」とも呼ばれるビタミンB2やビタミンB6などのビタミンB群は、口内炎の予防・改善に不可欠な栄養素です。
日々の食事でこれらの食品を意識的に取り入れることで、口内炎のできにくい、健康な口腔環境を作ることができます。
まとめ:繰り返す舌の口内炎を治療するには原因の特定が重要
舌の側面に繰り返しできる口内炎の治療を諦めず、根本的な原因を特定して治療することが、つらい痛みと不安のループから抜け出す方法です。
舌の側面の口内炎に関する重要なポイントをまとめます。
- 舌の側面にできる口内炎の最大の原因は、舌と歯との接触による物理的な刺激。
- 根本解決には、原因となっている歯の治療や調整が不可欠。
- 痛みの有無は、危険性を判断する信頼できる基準にはならない。
- 「2週間以上治らない」「しこりがある」場合、舌癌の可能性も視野に入れて必ず専門医へ。
「歯科まもる予約」で信頼できる医院を見つけよう
「この口内炎、ただの口内炎だよね…?」と、一人で悩み続けるのは精神的にもつらいものです。
その不安を解消する最も確実な方法は、専門家である歯科医師に診てもらうことです。
そんな、あなたの不安な気持ちに寄り添い、親身に相談に乗ってくれる歯科医院探しをサポートするのが、予防歯科サービス「歯科まもる予約」です。
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