「親知らずを抜きたいけど、いくらかかるか心配…」
「手術代以外に、CTなどの検査費用もかかるの?」
親知らずを抜く場合にどのくらい費用がかかるのか、不安になっていませんか?
親知らずの抜歯にかかる費用は、生え方や難易度によって大きく異なります。
基本的には保険適用の数千円で済みますが、横向きに埋まっている歯や神経に近い難症例である場合、手術費用や検査代が変わってきます。
この記事では、親知らずを抜歯する際の具体的な費用相場から、予想外の出費を防ぐためのポイント、気になる「痛み」と「腫れ」のピークまで、歯科医師が徹底解説します。
歯科医師:鈴木 遼介
日本人では約7割の人に親知らずがあり、骨の中に埋まっている場合もあります。
上顎と下顎の親知らずが噛み合っている場合を除き、ほとんどの場合は年齢が若い内に抜いた方が賢明です。年齢が上がると共に骨が硬くなり、抜歯する際に骨をたくさん削る必要があるからです。高齢者になると免疫力が低下し、基礎疾患(高血圧や脳血管障害など)を抱えている場合もあるため、骨髄炎や感染リスクが高くなります。
親知らずを抜歯する際に、下歯槽神経管との親知らずの根との位置関係を確認する必要があるため、CTが完備されている歯科医院での検査をおすすめします。必要があれば大学病院などを紹介してもらいましょう。
- 親知らずのパターン別・抜歯にかかる費用相場
- 出費を防ぐためのポイント
- 「痛み」と「腫れ」のピーク
- 抜くべき親知らずの特徴
財布と心の準備を整えて抜歯に臨み、スッキリとした口元を取り戻しましょう。
親知らず抜歯にかかる費用は高くても1万円程度
親知らずの抜歯そのものにかかる費用について、保険適用(3割負担)の場合は1本あたり約2,000円から8,000円程度が相場です。
保険適用の場合、抜歯にかかる費用の幅は国が定めた診療報酬点数に基づいて決められています。
親知らずの生え方や埋まり具合によって抜歯難易度がランク分けされており、ランクに応じて点数が加算される仕組みです。
ここでは、親知らずの生え方を代表的な3つのパターンに分けて、具体的な費用の目安を解説します。
自分の親知らずがどのタイプに当てはまるかは、歯科医師に判断してもらいましょう。
まっすぐ生えている場合:約2,000円〜3,000円
費用がもっとも安く済むのは、親知らずが他の歯と同じようにまっすぐ生えていて、頭が完全に出ているケースです。
この場合、処置は単純な普通抜歯です。麻酔をして器具で親知らずを脱臼させれば、比較的短時間ですんなりと抜けることが多いため、手術点数も低く設定されています。
費用はおおよそ2,000円から3,000円程度です。痛みや腫れも最小限で済むことが多く、経済的・身体的負担が最も軽いパターンと言えます。
ただし、神経管から歯の根の先まで距離が近い場合を除きます。
横向き・斜めに埋まっている場合:約4,000円〜5,000円
多くの日本人を悩ませるのが、横向きや斜めに生えているタイプの親知らずです。
親知らずの一部だけが顔を出していたり、真横を向いて手前の歯を押していたりするケースが該当します。
この場合、歯茎を切開してめくったり、引っかかっている歯の頭を分割して取り除いたりする必要があるため、難抜歯または埋伏歯抜歯扱いになります。
処置の手間と技術が必要になる分費用は少し上がり、4,000円から5,000円程度が目安です。一般的に、処置時間も30分から1時間ほどかかるでしょう。
骨の中に完全に埋まっている場合:約5,000円〜8,000円
最も費用が高くなるのは、親知らずが歯茎の中に完全に潜り込み、さらに顎の骨の中に埋まっている完全埋伏(かんぜんまいふく)と呼ばれるケースです。
外からは全く見えませんが、レントゲンを撮ると骨の中で真横や逆さを向いていることが分かります。
この抜歯は、骨を削って歯を細かく砕きながら取り出すという、高度な外科手術(骨性完全埋伏智歯抜歯)が必要です。
そのため費用も最も高く設定されており、5,000円から8,000円程度かかります。
場合によっては大学病院などの口腔外科を紹介されることもあり、担当医の技術力が問われる難易度の高い処置となります。
初診料やレントゲン・CT代、薬代は別途必要
実際の会計では、抜歯手術そのものにかかる費用(技術料)に加え、以下の費用がかかります。
たとえば、初めて受診する歯科医院で、レントゲンを撮影して横向きの親知らず(難抜歯)を抜き、薬が出た場合、総額では約7,000円から10,000円程度用意しておくと安心です。
また、CT撮影が必要な難症例の場合は、さらに3,500円ほど加算されるイメージを持っておきましょう。
費用に影響するのは抜歯難易度と検査内容
ここでは、親知らずの抜歯費用を左右する具体的な要素について、より専門的な視点から解説します。
根っこが曲がっている・神経に近いなど抜歯難易度が高い場合
抜歯費用に最も大きく影響するのが、歯根(歯の根っこ)の形と神経までの距離です。
親知らずの根っこが釣り針のように湾曲していたり肥大化していたりすると、骨から引き抜くのが非常に困難になります。
抜歯の途中で折れてしまうリスクも高いため、慎重な操作が求められ、技術料としての点数が上がるのです。
また、下顎の骨の中には下歯槽神経という太い神経が通っています。
親知らずの根っこが下歯槽神経に接している、あるいは絡みついているケースは、神経麻痺などの後遺症を防ぐために高度な技術が必要となるため、難易度が高いと判断されます。
CT撮影による検査が必要な場合
CT撮影による精密検査が必要な場合には、費用が比較的高額になります。
シンプルなケースでは、口全体を写すパノラマレントゲン(2次元)だけで診断が可能です。
しかし、親知らずが骨の奥深くに埋まっている場合や神経との位置関係が際どい場合、平面のレントゲン写真だけでは安全な手術が可能かどうかの判断ができません。
そこで必要になるのがCT撮影(3次元)です。
立体画像で確認することで、神経までの距離や根っこの曲がり具合をミリ単位で正確に把握でき、安全に抜歯を進められます。
CT検査を行う場合、保険適用で約3,500円(3割負担)の費用が追加されます。安心のための必要経費と考えてください。
麻酔静脈内鎮静法の場合
歯科恐怖症の人や4本同時に抜歯したい人は、静脈内鎮静法(セデーション)という特殊な麻酔法を選択する場合があります。
点滴から鎮静剤を入れることで、半分眠ったようなリラックスした状態で手術を受けることができる方法です。
この方法は大学病院や一部の歯科医院で行われていますが、医院によっては自費診療(保険適用外)となり、数万円から10万円程度の追加費用がかかる場合があります。
一般的な抜歯では、歯茎に注射をする局所麻酔を使用します。これは保険診療の範囲内に含まれており、数百円程度です。
麻酔静脈内鎮静法を希望する際は、保険が適用できるかどうか・実際にどのくらいの費用がかかるかを必ず確認しましょう。
抜歯後の痛みと腫れはどれくらい続く?特徴と傾向
手術自体の費用と同じくらい心配なのが、親知らずを抜いてからの痛みや腫れではないでしょうか。
顔がパンパンに腫れて外出できないのではないか、痛くて眠れないのではないかと不安になる人も多いです。
痛みや腫れの出方には個人差がありますが、ピークの時期や経過にはパターンがあります。
ここでは、抜歯後の身体の反応と、回復までの目安について解説します。
辛い時期をあらかじめ知っておき、仕事や学校の予定を調整することで、心に余裕を持ってダウンタイムを過ごすことができますよ。
麻酔の効果が切れる頃が痛みのピーク
最も強い痛みを感じるのは、手術後に麻酔の効果が切れた直後です。
麻酔は通常1時間から3時間程度で切れます。そのため、歯科医院では麻酔が効いているうちに痛み止めを飲むように指導されることがほとんどです。
痛み止めを指示通りに服用すれば激痛に襲われることは少なく、薬でコントロールできる範囲に収まります。
一方、腫れのピークは少し遅れてやってきます。抜歯当日よりも、翌日あるいは翌々日(48時間後から72時間後)が最も大きく腫れます。
腫れは身体が傷を治そうとして血液を集め、炎症反応を起こしている証拠です。過度に心配する必要はありません。
腫れている間は、冷えピタなどで冷やしすぎると血行が悪くなり、かえって治りが遅くなることがあるため、濡れタオルで軽く冷やす程度に留めましょう。
その後、痛みは数日から1週間程度、腫れは1週間から10日程度かけて徐々に引いていきます。
上の歯よりも下の歯の方が腫れやすい
親知らずは、上か下かによって術後の辛さが大きく異なります。一般的に、上の親知らずよりも、下の親知らずを抜いた時の方が、痛みや腫れが強く出る傾向にあります。
これは、顎の骨の質に理由があります。
上顎の骨はスポンジのように柔らかいため、歯が抜けやすく、骨へのダメージが少なく済みます。
対して下顎の骨は非常に緻密で硬いため、抜歯のために骨を削る量が多くなりがちで、その分だけ炎症が強く起きてしまうのです。
また、重力の影響で内出血が首元や鎖骨の方まで下がり、黄色いアザができることもあります。これも下の親知らず抜歯によく見られる特徴です。
下の親知らずを抜く際は、上の親知らずを抜く時よりも少し多くの覚悟と準備が必要です。
ダウンタイムを考慮したスケジュールの組み方
抜歯後の予定をどうするかは切実な問題ですが、結論として、抜歯当日は激しい運動や入浴、喫煙や飲酒を避けて自宅で安静に過ごすべきです。血行が良くなりすぎると、出血や痛みが強くなります。
翌日以降は、事務作業などの座り仕事や授業などであれば問題ありません。
営業職や接客業などで人前に出る人、大切なプレゼンや試験を控えている人は注意が必要です。
腫れがピークを迎える2、3日目は、口が開きにくくなったり、話しづらくなったりするためです。
そのため、多くの人は金曜日の午後や土曜日に抜歯を行い、週末をダウンタイムに充てています。
平日に無理をしてこじらせないよう、抜歯後2、3日は大切な予定を入れずに済むようにスケジュールを組むのが賢明です。
放置は危険?費用をかけてでも抜くべき親知らずの特徴
費用もかかるし、痛みも怖い。それなら、このまま抜かずに放っておこうと考える人もいるでしょう。
もちろん、全ての親知らずを抜く必要はありません。まっすぐきれいに生えており、しっかり噛み合っているのであれば、むしろ大切な奥歯として残すべきです。
しかし、歯科医師が抜歯を勧める場合にはそれなりの理由があります。親知らずの状態によっては、将来的に口の健康を脅かす時限爆弾になりかねません。
ここでは、多少のコストや負担をかけてでも、親知らずを早めに抜くべきケースについて解説します。
第二大臼歯の虫歯や歯並び悪化のリスクがある場合
親知らずによる悪影響として最も恐ろしいのは、親知らずの手前の健康な歯(第二大臼歯)を失ってしまうことです。
親知らずが斜めや横向きに生えていると、手前の歯との間に深い隙間ができ、歯ブラシが届きません。
すると、そこに汚れが溜まり続け、気づかないうちに第二大臼歯の根元に深刻な虫歯ができる可能性があります。
手前の第二大臼歯がボロボロになってしまうと、最悪の場合2本とも抜歯が必要になります。親知らずはなくても影響がありませんが、第二大臼歯は一生使い続けるはずの歯です。
また、親知らずが手前の歯をグイグイと押し続けることで全体の歯並びが乱れ、前歯がガタガタになってくることもあります。
歯の矯正治療が必要になるコストを考えれば、早めの抜歯は賢い投資と言えます。
歯茎の炎症(智歯周囲炎)を繰り返している場合
疲れた時や寝不足の時に、奥歯の歯茎が腫れてズキズキ痛んだ経験はありませんか。
これは智歯周囲炎(ちししゅういえん)といって、親知らずの周りに細菌が繁殖して炎症が起きることで発症します。
一度、智歯周囲炎になると、抗生物質で一時的に抑え込んでも、体調を崩すたびに何度でも再発します。
しかも、繰り返すたびに炎症が広がりやすくなるため、喉の奥まで腫れて口が開かなくなったり、高熱が出たりすることも。
年に何度も痛み止めを飲んで我慢するより、原因である親知らずを抜いて根本的に解決することをおすすめします。
妊娠中や海外留学前のトラブル予防
人生の大きなイベントを控えている場合も、予防的に抜歯を検討すべきです。
女性の場合、妊娠中はホルモンバランスの変化で歯茎が腫れやすくなります。
妊娠中に親知らずが痛み出した場合、胎児への影響を考えて、レントゲン撮影や痛み止めの服用、抜歯手術そのものが制限されてしまいます。
また、海外留学や長期出張に行く場合も同様です。海外での歯科治療費は日本とは桁違いに高額になることが多く、言葉の壁もある環境で急な歯痛に襲われるのは大きなストレスです。
安心して新生活を迎えるために、時間のあるうちにリスクの芽を摘んでおくと良いでしょう。
抜歯費用が医療費控除対象や保険適用外に該当するケース
親知らずの抜歯は基本的に保険診療ですが、状況によっては自由診療で費用が高額になったり、逆に医療費控除によって税金が戻ってきたりするケースがあります。
お金に関する制度は少し複雑ですが、詳しく知っていれば費用負担が楽になる場合があります。
ここでは、高額出費を少しでも抑えるための医療費控除の知識と、全額自己負担になってしまう注意すべきパターン、紹介状に関連する費用ついて解説します。
年間10万円を超えたら医療費控除の対象になる
親知らずの抜歯にかかる費用は医療費控除の対象になります。
医療費控除とは、1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費の総額が一定額(基本的には10万円)を超えた場合に、確定申告をすることで税金の一部が還付される制度です。
医療費控除対象の医療費は自分の分だけでなく、生計を共にする家族全員分の治療費を含められます。
また、歯科医院への通院にかかった電車代やバス代も計上することができます。
抜歯だけでなく、他の病気の治療費や市販薬の購入費なども合算できますので、医療費にかかった領収書は捨てずに大切に保管しておきましょう。
矯正治療の一環として抜歯する場合は自費診療になる
歯列矯正(ワイヤー矯正やマウスピース矯正)のために親知らずを抜く場合、健康保険が適用されません。
抜歯の目的が病気の治療ではなく、審美的な改善や歯並びの整列とみなされるためです。
親知らずが横向きに埋まっていて手術が難しくても、矯正治療の一環であれば自費診療(自由診療)となり、費用は全額自己負担となります。
保険適用外の場合、医院によって価格設定は異なりますが、1本あたり5,000円から20,000円程度かかるのが一般的です。
抜歯の目的によって保険適用の可否が変わるという点には注意が必要です。
大学病院への紹介状をもらうと費用が変わるかも
町のかかりつけ歯科医院では抜けないような、抜歯難易度の高い親知らずの場合、大学病院や総合病院の口腔外科を紹介されることがあります。
この際、紹介状(診療情報提供書)を書いてもらう費用として、数千円程度がかかります。
また、紹介先の病院での初診時には、通常の初診料に加えて選定療養費という特別料金がかかる場合があります。
これは、紹介状なしで大きな病院を受診した際にかかる費用ですが、紹介状を持参していればこの費用は免除されることがほとんどです。
つまり、紹介状代がかかっても、トータルで見ればスムーズかつ適切な費用で専門的な治療を受けられるのです。
紹介状について案内があった場合は素直にお願いするのが得策です。
まとめ|まずはレントゲンで費用の見積もりを
この記事では、親知らずを抜歯する際の一般的な費用相場について解説しました。
最終的な金額は、歯科医院でレントゲンを撮り、親知らずの根っこの形や神経との距離を確認してもらうまではわかりません。
一見まっすぐ生えているように見えても、歯茎の中で複雑に曲がっていて難抜歯の扱いになることもあれば、逆に横向きに見えても、骨を削らずにすんなり抜けて費用が安く済むこともあります。
正確な見積もりを知るために、まずは保険証を持って、気軽に歯科検診に行ってみましょう。
抜歯するかを決めるのは、費用などについての説明を聞いてからでも遅くはありません。
抜歯が得意な歯医者さん探しなら「歯科まもる予約」を活用しよう
いざ抜歯をしようと決心しても、どこの歯医者さんが抜歯上手なのか、どこならCT設備があるのか探すのは大変かもしれません。
特に難易度の高い親知らずの場合、口腔外科の経験が豊富な先生にお願いしたいと思うのは当然です。
そんな時は、全国の歯科クリニックからあなたにピッタリの歯科が見つかる「歯科まもる予約」も活用してみてください。
抜歯の実績が豊富な医院や、最新の設備が整っている医院を簡単に見つけることができます。
信頼できる歯医者さんと出会い、不安のない状態で親知らずの抜歯に臨めるよう、ぜひ役立ててください。

