顎関節症は放置すると手遅れになる?手術が必要な症状と毎日できるセルフケアを紹介

顎関節症 手遅れ

「口を開けると顎が痛い」
「カクカク音が鳴るのを放っておいたら、口が開かなくなった…」

顎関節症と思われる症状を前に、もう手遅れなんじゃないか?と不安になっていませんか。

顎関節症は、放置すれば確かに悪化するリスクがありますが、本当の意味で「手遅れ(回復不可能)」になることは稀です。重そうに見える症状でも、手術なしで改善するケースがほとんどなのです。

この記事では、歯科医師監修のもと、まだ治療が間に合う顎関節症の状態や放置する危険性について明確に解説。今日からできるセルフケアや、病院で行う治療法についても紹介します。

鈴木先生

歯科医師:鈴木 遼介
顎関節症は誰にでも起こりえるものです。「音がする」「口が開きづらい」「顎が痛い」など、ふとした時に気が付きクリニックに来院する患者様が多く見受けられます。

顎関節症の原因は多因子であり、一般的には日中や夜間の食いしばりが影響しています。現代の日本では、スマホの普及と共に、日中のストレスやブルーライトの刺激から、脳がストレスを代償するために食いしばると言われています。

今回は、夜間のマウスピース利用と併用した、セルフケアの方法をお伝えいたします。人差し指から薬指まで3本を縦にし、口に入れ筋肉のこわばりを感じながら5秒数えましょう。時間があれば1時間に1回を意識してストレッチを行なってください。

また、デスクワークであれば目立つ色の付箋をパソコンに貼り、集中している時に上下の歯がくっついていないか確認してください。早ければ数ヶ月で症状の改善が期待できます。セルフケアをぜひ続けて頂き、再発した場合でも焦らず対応して頂ければ幸いです。

この記事でわかること
  • まだ治療可能な顎関節症の状態
  • 顎関節症を放置する危険性
  • 今日からできるセルフケア
  • 病院での治療法

正しい知識で適切な対応を行い、辛い顎の痛みから解放されましょう。


▶関連記事:顎関節症の治療法とは?歯科での専門治療やセルフケア方法まで徹底解説!

【結論】顎関節症に手遅れはほぼない!

長年顎の不調に悩み続け、もう治らないのではないかと諦めかけている人もいるでしょう。しかし顎関節症において、医学的に見て手遅れという状態はほぼ存在しません。

どれほど症状が重くても、あるいは何年も放置してしまった後でも、適切な治療を行えば快適な日常生活を取り戻すことは十分に可能です。

手術するしかないと思い込んでいても、実際にはほとんどのケースが、体に負担の少ない治療法で改善に向かっています。ここでは、顎関節症の治療について詳しく解説します。

変形していても機能を回復させることは可能

顎関節症の治療のゴールは、痛みなく口が開き、美味しく食事ができる状態まで機能を回復することです。顎の関節を新品同様の完璧な状態に戻すことではありません。

たとえ関節円板がずれていたり骨の形が少し変形していたりしても、機能的に治っていることが何より大切です。

人間の体には素晴らしい適応能力があります。適切な治療によって痛みを取り除き、顎の動きをスムーズにすれば、関節内部に多少の異常があっても、新しいバランスで問題なく生活できるようになります。

画像検査上の異常と、実際の生活の質は必ずしもイコールではありません。骨の形そのものを治すことより、生活に支障がない状態を作ることこそが、現代の歯科医療における治療の目的です。

手術が必要なケースはわずか数%

大学病院などの専門機関にかかった場合も、顎関節症で手術が必要になるケースは全体のわずか数パーセント程度だと言われています。

つまり、9割以上の人は体にメスを入れることなく、薬やマウスピース、リハビリなどの保存療法だけで症状が改善しているのです。

実は顎関節症は生活習慣病に近い側面があり、適切な自己管理と通院治療によって自然と症状が落ち着くことも多い病気です。

手術はあくまで、口が全く開かない・顎が癒着しているなどの極めて重篤な場合の最終手段です。

最初から手術を宣告されるケースは稀ですので、過度な心配は無用です。

放置はNG!骨の変形(変形性顎関節症)が進む前に処置を

顎関節症に手遅れはないと言いましたが、放置しても良いという意味ではありません。

痛みを我慢して無理に使い続けると、関節のクッションがすり減り、最終的に顎の骨自体が削れて変形する変形性顎関節症へと進行してしまうリスクがあります。

骨が一度変形してしまうと、二度と元の形に戻すことはできません。治療期間が長引き、噛み合わせの調整も難しくなります。

また、痛みをかばう動作がくせになると、治りにくい慢性痛へと移行してしまう場合も。

取り返しのつかない骨のダメージを防ぐため、違和感を感じた時点で早めに対処を開始することが、最も確実で楽な解決策です。

手遅れが疑われるサインや末期症状

手遅れがないと言える顎関節症においても、楽観視すべきではない危険な状態が存在します。

関節の内部ではすでに大きな負担がかかっており、限界を迎えつつある際に見られる症状があります。

末期状態まで進行するのを避けるため、今すぐ現状をチェックしてみてください。以下のいずれかに当てはまる場合は様子見をやめ、すぐに専門家の判断を仰ぐべきです。

顎関節症の放置すべきでない状態
  • 口が開かない(開口障害)・指が1本も入らない
  • 顔の歪み・噛み合わせの変化がある
  • 耳鳴り・めまい・肩こりが起こる場合がある
  • 口が開かない(開口障害)・指が1本も入らない

    顎関節症の症状の中で、最も緊急性が高いのが開口障害(かいこうしょうがい)です。

    朝起きたら急に口が開かなくなった、あるいは徐々に口が開きづらくなってきた場合、関節円板が完全に前にずれてしまい、骨の動きをロックしてしまっている状態(クローズドロック)が疑われます。

    正常なら指が縦に3本入りますが、もし1本も入らない、あるいは無理に開けようとして激痛を感じる場合は重篤です。

    骨の動きがロックされた状態が長く続くとずれた円板が癒着してしまい、手術以外で元の位置に戻すことが極めて困難になります。

    指1本分の隙間しかないなら、すぐにでも口腔外科を受診してください。

    顔の歪み・噛み合わせの変化がある

    以下のような感覚がある場合、顎の関節の骨(下顎頭)が削れて短くなっている、変形性顎関節症のサインです。

    変形性顎関節症の典型例
  • 鏡を見たときに、なんとなく顎が左右どちらかに曲がっている気がする
  • 前歯の中心がずれてきたと感じる
  • 今まで通りに噛んでいるつもりなのに、一部の歯だけが強く当たったり、奥歯が浮いて噛み合わなくなったりする
  • 骨の吸収が進むと顎の高さが変わってしまい、顔貌(顔つき)や噛み合わせに永続的な変化をもたらします。

    骨の形を手術で治すことは非常に大掛かりになるため、これ以上変形を進行させないための食い止め治療が急務です。

    耳鳴り・めまい・肩こりがある

    原因不明の耳鳴りやめまい、何をしても治らないひどい肩こりや偏頭痛に悩まされていませんか。もしかすると、その不調の原因は顎にあるかもしれません。

    顎を動かす筋肉(咀嚼筋)は、首や肩、頭の筋肉と密接に連動してるため、顎関節症の影響は顎だけにとどまりません。

    顎の筋肉が過度に緊張し続けると、そのダメージがドミノ倒しのように周囲に広がっていくのです。

    症状が全身に波及しているということは、顎への負担がそれだけ長期間続いており、体が悲鳴を上げているかもしれません。

    顎を休ませる治療を行うことで、全身の不調が嘘のように軽くなる可能性があります。

    顎関節症の放置による重症化リスク3つ

    顎関節症は、初期段階で適切に対処すれば比較的スムーズに治る病気です。

    しかし、忙しいからと放置したり、そのうち治るだろうと楽観視していたりすると、徐々に・確実に悪化していきます。

    放置するとこじれてしまう理由は、体内で起きる悪循環のメカニズムがあるためです。

    ここでは、顎関節症を重症化させ、治りにくい体にしてしまう3つのリスクについて解説します。

    1. 筋肉のバランスが崩壊して慢性痛になる

    筋肉のアンバランスな状態が長く続くと、噛み合わせのバランスが崩れ、新たな痛みを引き起こします。

    痛いところがあると、無意識にそこをかばってしまうのは自然なことです。

    例えば、右の顎が痛いとき、どうしても左側だけで噛むようになります。すると、左側の筋肉ばかりが酷使されてガチガチに凝り固まり、一方で使わなくなった右側の筋肉が衰えてしまいます。

    厄介なのは、脳が痛みを記憶してしまうことです。

    筋肉の緊張が慢性化すると脳が常に痛みを感じるようになり、少しの刺激でも強い痛みとして認識する慢性疼痛(まんせいとうつう)という状態に移行してしまいます。

    こうなると、顎の問題だけではなくなり、心身のストレスケアが必要になってきます。

    2. 関節円板クッションがズレて元に戻らなくなる

    顎の関節には、関節円板(かんせつえんばん)という軟骨のクッションがあり、スムーズな動きを助けています。

    口を開けるときに鳴るカクカク音は、クッションが少し前にずれて元に戻るときの音です。

    初期のうちは口を開閉するたびにクッションが元の位置に戻ってくれますが、顎関節症を放置して負担をかけ続けると、やがて関節円板がはずれたまま戻らなくなります。

    すると、関節の骨同士が直接こすれ合うようになり、炎症が悪化します。

    さらに時間が経つと、ずれたクッションが周囲の組織と癒着(ゆちゃく)してくっついてしまい、外科的な手術で剥がさない限り正常な位置には戻らなくなってしまいます。

    3. 歯ぎしり・食いしばりによって歯と顎が破壊され続ける

    顎関節症の最大の悪化要因と言われているのが、睡眠中の歯ぎしりや日中の食いしばりです。

    無意識の癖によって、体重の数倍もの力が顎にかかり続けることになります。

    顎が痛いのに、無防備な夜中に強い力で負担をかけ続けていては、治るものも治りません。捻挫した足で毎日マラソンをしているようなものです。

    歯ぎしりや食いしばりによって、顎関節だけでなく歯そのものがすり減り、割れてしまうこともあります。

    自分では気づきにくい癖だからこそ、放置せずにマウスピースなどで物理的にガードする必要があります。


    重症度別・病院での治療法

    顎が痛くても、いきなり手術されるケースはまずありません。

    歯科医院で行う治療の基本は、保存療法と呼ばれる体に負担の少ない方法です。顎関節症の進行度に合わせて顎関節にかかる負担を減らし、自然治癒力を引き出します。

    ここでは、実際に病院で行われている代表的な治療法について、段階別に解説します。

    病院でどのような治療を受けるのかイメージできれば、受診への恐怖心も和らぐでしょう。


    初期から中期:スプリント療法(マウスピース)で負担を軽減

    顎関節症治療の中で、最もポピュラーかつ効果が高いのがスプリント療法です。

    その人専用のマウスピースを作成し、主に夜寝ている間に装着してもらいます。

    マウスピースの装着により、無意識の歯ぎしりや食いしばりによる強烈な力から顎の関節と筋肉を守ります。

    また、マウスピースの厚みによって関節の中に隙間ができ、圧迫されていた関節円板や組織がリラックスできるため、痛みの軽減にも非常に有効です。

    マウスピースを使った治療によって、多くの人が症状の劇的な改善を実感しています。

    痛みが強い時:薬物療法やリハビリ理学療法で筋肉をほぐす

    口を開けるだけで激痛が走るような急性期には、まず痛みを取り除くことが優先されます。

    痛み止めの薬(消炎鎮痛剤)や筋肉の緊張を和らげる薬(筋弛緩薬)を使って、炎症を抑え、痛みが落ち着いてきたら、硬くなった筋肉をほぐすために理学療法を行います。

    理学療法で行われる主な治療は以下のとおりです。

    理学療法で行われる主な治療
  • 電気刺激を与える低周波治療
  • 患部を温める温熱療法
  • 歯科医師や理学療法士によるマッサージやストレッチ指導
  • これらを組み合わせることで、開かなくなった口が徐々にスムーズに動くようになります。

    重度の場合:関節腔洗浄療法や外科手術

    保存療法を続けても改善が見られず、日常生活に深刻な支障が出ている重症例では、より専門的な処置が検討されます。その一つが関節腔洗浄療法(かんせつくうせんじょうりょうほう)です。

    関節の中に注射針を刺し、生理食塩水で内部を洗い流すことで、溜まった炎症物質や癒着の原因となる老廃物を取り除きます。

    さらに重篤な、骨の癒着や腫瘍などが原因の場合は、外科手術が必要になることもあります。

    内視鏡を入れて癒着を剥がしたり、骨の形を整えたりする手術ですが、これが行われるのは全患者の数パーセント以下で、極めて稀と言えます。

    今日から悪化を食い止めるセルフケアと生活習慣

    顎関節症は、顎の生活習慣病とも呼ばれています。

    痛くなる都度治療を受けても、顎関節症の原因となっている毎日の悪い癖が直らなければ、症状はすぐにぶり返してしまいます。

    逆に言えば、日常生活のちょっとした意識を変えるだけで、驚くほど症状が軽くなることも珍しくありません。

    ここでは、お金をかけずに今すぐ始められる、効果的な3つのセルフケアをご紹介します。

    ぜひ毎日のルーティンに取り入れてみてください。


    マッサージ

    頬骨の下あたりにある咬筋(こうきん)という大きな筋肉をマッサージすると効果的です。

    咬筋(こうきん)は食いしばりの影響を最も受けやすく、ガチガチに固まっていることが多い場所です。優しくマッサージして筋肉を緩めることで、血行が促進されて痛みも和らぎます。

    顎が痛い時、原因の多くは関節そのものではなく、顎を動かす筋肉のコリにあるのです。

    具体的なマッサージ方法も簡単。人差し指と中指の腹を使い、頬の筋肉の上で小さな円を描くように、クルクルと優しく揉みほぐします。

    ポイントは、決して強く押しすぎないことです。痛気持ちいいと感じる程度の強さで、お風呂に入っている時などの体が温まっているタイミングで行いましょう。

    姿勢の改善

    耳の穴と肩の中心が一直線になるような正しい姿勢を意識するだけで、顎への負担は大幅に軽減されます。

    意外に思われるかもしれませんが、姿勢の良し悪しは顎の関節にダイレクトに影響します。

    デスクワーク中やスマホを見ている時、ふと気づくと背中が丸くなっていませんか。

    特に現代人に多い、頭が前に突き出たスマホ首猫背の姿勢は、顎にとって最悪の状態です。

    頭が前に出ると、下顎は首の筋肉に引っ張られて後ろに下がる力が働きます。この無理な力が常にかかり続けることで、顎関節が圧迫され、口が開きにくくなったり痛みが出たりするのです。

    顎のために、まずは背筋を伸ばすことから始めましょう。

    歯を無意識接触させる習慣をやめる

    顎関節症の最大の原因として近年注目されているのが、「TCH(Tooth Contacting Habit)」すなわち上下歯列接触癖です。

    リラックスしている時の人間の口は、唇が閉じていても上下の歯は触れ合わずに2、3ミリの隙間(安静空隙)が空いているのが正常です。

    しかし、パソコン作業や家事などに集中している時、無意識のうちに上下の歯が触れ合ってはいませんか。

    弱い力であっても歯と歯が長時間接触し続けている場合、筋トレをしているのと同じような負担になります。

    対策として有効なのは、「歯を離す」「口の力を抜く」といったメモや付箋を目につく場所に貼ることです。

    メモを見たら肩の力を抜き、歯を離す。この地道なリセット作業を繰り返すことで、脳に正しいリラックス状態を覚え込ませましょう。

    まとめ|適切なケアで顎の悩みは必ず解決できる

    顎関節症は、一度なったら一生付き合わなければならない不治の病ではありません。早期に対応できれば、治療はシンプルで期間も短く済みます。

    最も避けなければならないのは、自己判断で放置し続けてしまうことです。大したことないだろうと我慢したり、怖くて病院に行けず悩んだりする時間がリスクになります。

    少しでも違和感や痛みを感じたら、まずは専門家にその悩みを打ち明けてみてください。

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    どこの病院にかかれば良いのか分からないという人も多いでしょう。

    一般的な虫歯治療とは異なり、顎関節症の治療は専門的な知識と経験が求められる分野です。

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