「奥歯のあたりがズキズキする……」
「親知らずが頭を出してから、歯茎が腫れて痛い」
奥歯のあたりの痛みに悩んでいませんか?もしかしたら親知らずが生えかけになっているかもしれません。
生えかけの親知らずの痛みはただの成長痛ではなく、細菌感染による炎症(智歯周囲炎)を起こしている可能性が高いです。我慢して放置すると、顔が腫れたり、口が開かなくなったりするほど悪化するケースも。
この記事では、生えかけの親知らずの辛い痛みを和らげる応急処置と、やってはいけないこと、抜くべき親知らずと残せる親知らずの違いについて、歯科医師が詳しく解説します。
歯科医師:鈴木 遼介
親知らずの生え方によって、きちんとしたブラッシングができないことが多く、周りの歯や歯茎に対して細菌感染を引き起こす原因になります。また、放置すると1本手前の第二大臼歯もひどい虫歯や歯周病になり、本来抜く必要のない歯まで抜歯になることもあります。
女性の場合、妊娠中にトラブルがあるとレントゲンや投薬の制限が起こるため、妊娠前に計画的に抜歯を行うことをおすすめします。
高齢者では、免疫力が低下しており、骨が硬く歯と骨が癒着し抜歯が困難になるケースが多く、全身疾患の影響で合併症のリスクは増大します。30代までに親知らずの抜歯を検討しましょう。
抜歯は外科的処置であり、体にとって大きな負担になります。抜歯後の痛みや腫れなどを考慮して、体調やスケジュールを考慮しながら、歯科医師に相談することをおすすめします。
- 生えかけの親知らずの痛みを和らげる応急処置
- 親知らずが生えかけの場合にやってはいけないこと
- 抜くべき親知らずと残せる親知らずの違い
- 歯科医院を受診するタイミングと治療の流れ
正しい対処法を知り、痛みのない快適な生活を取り戻しましょう。
▶関連記事:親知らずが痛い!今すぐできる応急処置と絶対NGな行動
生えかけの親知らずが痛む原因の大半は智歯周囲炎
親知らずが生えてくると、歯茎がムズムズしたり、ズキズキとした痛みを感じたりすることがあります。
この痛みは、歯が歯茎を突き破る時の痛み(萌出痛)だと思われがちですが、実は多くの場合、細菌感染による炎症です。
専門用語では智歯周囲炎(ちししゅういえん)と呼ばれ、親知らずの周りの歯茎にばい菌が入り込んで膿んだり腫れたりしている状態を指します。
生えかけの親知らずが痛む原因について解説します。
歯と歯茎の隙間の細菌による炎症状態
親知らずが痛くなる最大の原因は、親知らずの周りが不潔になりやすいという点にあります。
生えかけの親知らずは完全には生えきっておらず、歯の一部が歯茎に埋もれていることが多いです。すると、歯と歯茎の間に深い溝(歯周ポケット)ができ、そこに食べカスやプラーク(歯垢)が溜まりやすくなります。
親知らず周辺には歯ブラシが届きにくく、汚れを完璧に落とすのは非常に困難です。その結果、溜まった汚れをエサに細菌が繁殖し、歯茎が赤く腫れ上がって強い痛みを引き起こすのです。
体調が良い時は免疫力で炎症を抑え込めていても、疲れやストレスで抵抗力が落ちたタイミングで一気に炎症が悪化するのが特徴です。
上の歯が下の歯茎を噛む物理的な痛みの可能性も
細菌による炎症以外に、物理的な刺激が痛みの原因になっているケースもあります。上の親知らずが下の親知らずの上の歯茎を噛んでしまっている場合です。
下の親知らずが生えかけていて、まだ歯茎が被っている状態の時、噛み合うはずの上の親知らずが伸びてきていると、口を閉じるたびに上の歯が下の歯茎をグサグサと突き刺すことになります。
これを外傷性潰瘍と呼びます。噛むたびに傷口が刺激されるため痛みが強く、なかなか治りません。
この場合、原因である上の親知らずを削って短くするか、抜歯して物理的な干渉を取り除く処置が必要です。
痛みが引いても繰り返すなら抜歯が必要なサインかも
智歯周囲炎の厄介な点は、痛くなったり治ったりを繰り返すことです。
痛み止めを飲むなどして痛みを数日我慢していると、自然と痛みが引いていくことがありますが、治ったわけではありません。
原因となっている親知らずの生え方や、汚れが溜まりやすい袋状の隙間はそのまま残っているため、免疫力が低下したタイミングでまた痛み出します。
再発するたびに、炎症は広がりやすく、周囲の骨を溶かしたり手前の健康な歯を巻き込んで虫歯にしたりするリスクが高まります。
痛みを繰り返しているなら、限界のサインかもしれません。根本的に解決するため、親知らずの抜歯を検討すべきタイミングと言えるでしょう。
今すぐ痛みを止めたい!自宅でできる3つの応急処置
歯が夜中に急に痛み出したり、仕事が忙しくてすぐに歯医者に行けなかったりすることもあるでしょう。
我慢できないほどの痛みがある場合、家にあるものを使って一時的に症状を和らげることは可能です。
ここでは、即効性が期待できる3つの応急処置をご紹介します。
1. 鎮痛剤を服用して炎症と痛みを抑える
2. 歯ブラシやうがい薬で患部を清潔にする
3. 濡れタオルなどで頬の上から優しく冷やす
ただし、これらはあくまで一時しのぎであり、根本的な治療ではありません。
痛みが落ち着いたら、必ず歯科医師の診察を受けるようにしましょう。
1. 鎮痛剤を服用して炎症と痛みを抑える
早く痛みを止める最も確実な方法は、市販の解熱鎮痛剤(痛み止め)を服用することです。
「ロキソニンS」や「イブ」、「バファリン」など、ドラッグストアで購入できる薬で十分な効果が期待できます。
市販の鎮痛薬には、痛みを脳に伝える物質をブロックし、炎症そのものを鎮める抗炎症作用も含まれています。そのため、早めに服用して体を休める方が回復も早くなります。
ポイントは、痛みがピークに達する前に飲むことです。激痛になってからでは薬が効きにくくなるため、痛み始めの段階で使用用法と用量を守って服用してください。
もし薬を飲んでも全く効かない場合、救急対応可能な病院を探してください。
2. 歯ブラシやうがい薬で患部を清潔にする
痛い場所を触るのは怖いかもしれませんが、口の中を徹底的にきれいにすることが炎症を治める近道です。
痛みの原因は細菌です。親知らずの周りを汚れたままにしておくと、細菌はどんどん増殖し、痛みも増すばかりです。
やわらかめの歯ブラシを使い、患部周辺の汚れを優しくかき出してください。
歯ブラシを当てるのが痛くて辛い場合は、殺菌成分のあるうがい薬(「コンクールF」や「イソジン」など)を使って、少し強めにブクブクうがいをするだけでも効果があります。
口の中の細菌数を減らせば、体の免疫細胞が戦いやすくなり、腫れや痛みが引くスピードが格段に上がります。
3. 濡れタオルなどで頬の上から優しく冷やす
親知らずの周りが熱を持ってズキズキ脈打つように痛む場合、患部を外側から冷やすと痛みが楽になります。
濡れタオルや冷却シート(「冷えピタ」など)を使い、頬の上から優しく冷やしてください。
頬を冷やして血管を収縮させることで、炎症による充血を抑え、神経への圧迫を和らげる効果が期待できます。
ただし、氷や保冷剤を直接肌に当て続けたり、口の中に氷を含んだりして急激に冷却するのは絶対に避けてください。
患部を冷やしすぎると血液循環が悪くなりすぎて、かえって治りが遅くなったりしこりが残ったりする原因になります。
ひんやりして気持ちいいと感じる程度の、マイルドな冷却にとどめておくのが鉄則です。
痛みがある時にやってはいけないNG行動
早く治したいという焦りや、痛みを紛らわせたいという思いからとった行動が、実は逆効果になることも。
親知らずの炎症は非常にデリケートなので、ちょっとした刺激で細菌が活性化し、血流の変化で痛みが激増することがあります。
ここでは、生えかけの親知らずが痛い症状を悪化させないため、絶対に避けるべき3つのNG行動について解説します。
患部を指や舌で触る
歯茎が腫れているとどうしても気になって、舌先で触ったり指で押したりして硬さを確認したくなります。しかし、これは絶対にやめてください。
指先や舌には、目に見えない無数の細菌が付着しています。炎症が起きて弱っている親知らずに最近だらけの指先や舌を擦り付けるのは、火に油を注ぐようなものです。
新たな細菌が入り込んで二次感染が起き、炎症範囲が喉の奥や頬全体へと拡大するおそれがあります。
また、物理的な刺激そのものが腫れを悪化させる原因にもなります。
親知らずの状態が気になっても鏡で見るだけにとどめ、極力そっとしておくのが一番です。
長風呂・飲酒・激しい運動
親知らず周辺に痛みがあるうちは、体を温めすぎないように注意が必要です。
お酒や、熱いお風呂への長風呂、ジムでの運動は、全身の血行を良くなります。
健康なのは良いことですが、親知らずに炎症がある時に血流が増すと、患部の血管が拡張して神経を圧迫してドクンドクンと脈打つような激しい痛み(拍動痛)を引き起こします。
親知らずの痛みが強い間は、お風呂はぬるめのシャワーで済ませ、アルコールは控えてください。激しい運動も避け、家でゆっくりと安静に過ごすことが、早期回復につながります。
痛みが強い時の無理な歯磨き
患部を清潔に保つのは重要ですが、汚れを落とそうと必死になって、ゴシゴシと力任せに歯磨きをするのは逆効果です。
炎症を起こしてブヨブヨになった歯茎は、非常に傷つきやすい状態です。硬いブラシを強く当てると、歯茎が傷ついて出血したり潰瘍(かいよう)ができたりして、さらに痛みが強くなります。
腫れがひどい時は、歯ブラシの毛先が患部に直接当たらないように注意し、やわらかい歯ブラシで撫でるように優しく磨いてください。
歯ブラシが届かない部分は無理をせず、殺菌効果のあるうがい薬を使って、汚れを化学的に洗い流す方法に切り替えましょう。
抜く?抜かない?歯科医師が教える親知らずの抜歯基準
親知らずが痛むと、「もう抜くしかない」と覚悟を決める人も多いでしょう。しかし歯科医師は、親知らずの抜歯を無条件に勧めることはありません。
将来的にその歯がトラブルの原因になるか、それとも役に立つ可能性があるか、リスクとメリットを天秤にかけて慎重に判断しています。
ここでは、歯科医師が抜歯すべきか温存(様子見)すべきかを見極める基準について、具体的なケースを挙げて解説します。
抜歯推奨:斜めや横向きに生えている場合
歯科医師が強く抜歯を勧めるケースとして最も多いのが、親知らずが横向きや斜めに生えていて、手前の歯との間に深い隙間を作っているケースです。
また、親知らずが噛み合わせに関与しておらず、頬の粘膜を噛んで傷つけてばかりいる場合も抜歯の対象となります。
この場合、親知らずが明らかに口の中の健康を害しているか、将来害する可能性が高いと言えます。
斜めや横向きに生えている親知らずの隙間には歯ブラシが届かないため、繰り返し炎症(智歯周囲炎)を引き起こします。
さらに、手前の健康な奥歯を巻き込む深い虫歯や、親知らずの根っこが吸収されて溶けるリスクがあります。
親知らずの手前の歯を守るためには、親知らずを抜くのがもっとも賢明です。
残しても良い:真っ直ぐ生えていて虫歯もない場合
親知らずが他の奥歯と同じように真っ直ぐ生えていて、上下の歯が噛み合っており、食事をする機能に参加している場合は抜かずに残した方が良いと言えます。
虫歯や歯周病がなく、歯磨きできれいに管理できていれば、親知らずであっても無理に抜く必要はありません。
健康な親知らずを残しておくと、将来他の歯を失った際に親知らずを移植したり、入れ歯やブリッジの土台として利用したりできるメリットがあります。
真っすぐ生えた親知らずはしっかりとケアをして、虫歯にならないよう健康を維持しましょう。
▶関連記事:親知らずは抜くべき?抜かなきゃよかったと後悔しないための判断基準
生えかけの時期は一時的な成長痛の可能性も
親知らずが痛いからといって、即抜歯が必要なわけではありません。
特に20代前半などで、まだ親知らずが生えている途中の段階では、歯茎を突き破る際の一時的な炎症である可能性があります。
この場合、完全に生えきってしまえば、歯茎の被りがなくなって汚れも溜まりにくくなり、親知らず周辺の痛みは自然と解消されます。
レントゲン写真などで、親知らずが真っ直ぐ生えるスペースが十分にあると判断されれば、今は無理に抜かず、洗浄と投薬で炎症を抑えながら成長を見守る選択肢もあります。
歯科医院を受診するタイミングと治療の流れ
いざ歯医者に行くとなると何をされるのか不安で、なかなか足が向かない人もいるでしょう。
特に、親知らずが痛い時に受診するとすぐに抜かれるのではないかという恐怖心があるかもしれません。しかし実際の治療は、体の負担を考慮して段階的に進められるので安心しましょう。
ここでは、歯科医院を受診すべきサインと、具体的な治療のステップについて解説します。
治療の流れを知っておくことで、安心して診察を受けることができるはずです。
我慢できない痛み・発熱・開口障害があるなら即受診して
痛みの程度によっては、様子を見ている場合ではありません。特に、市販の痛み止めを飲んでも全く効かないほどの激痛がある場合や、38度以上の発熱を伴う場合には要注意です。
また、口が指1本分くらいしか開かない症状(開口障害)が出ている時は、炎症が喉の奥や顎の筋肉にまで広がっている証拠です。
開口障害を放置すると、膿が首の方まで溜まって呼吸困難になったり、入院して点滴治療が必要になったりする重篤な状態(蜂窩織炎など)に発展するおそれがあります。
我慢できない痛みや発熱、開口障害の症状がある場合、夜間や休日であっても救急対応をしている病院を探して速やかに受診してください。
まずは消毒と抗生剤で炎症を抑える
歯科医院ではまず炎症を抑えることを最優先に、患部の周りを専用の機械で洗浄・消毒し、抗生物質(化膿止め)と鎮痛剤を処方します。
歯科医院に行っても、炎症が強く出ているその日のうちにいきなり抜歯をすることは基本的にはありません。
なぜなら、腫れている時に麻酔をしても効きにくく、処置中に強い痛みを感じてしまうからです。また、細菌に感染している状態で傷口を広げると、治りが極端に遅くなるリスクもあります。
薬を飲んで腫れや痛みが落ち着いた数日後あるいは数週間後に、改めて抜歯をするかどうかを相談します。
急に抜歯されることはないため怖がらず、まずは消毒などの処置をしてもらいに歯科医院に行きましょう。
親知らずの痛みに関するよくある質問
最後に、親知らずの痛みに関してのよくある質問にお答えします。
Q.親知らずを抜くと小顔になるって本当?
A.顔の形がわずかに変化する可能性はありますが、美容整形のような劇的な変化は期待できません。
親知らずを抜くことで、歯の支えとなっていた骨が痩せたり噛む筋肉(咬筋)が小さくなったりしますが、外見的な変化はほぼなく、小顔になることはありません。
抜歯にはリスクも伴うため、小顔効果を狙って抜歯をするのはおすすめできません。
Q.妊娠中や授乳中でも親知らずの治療はできますか?
A.安定期(妊娠5ヶ月から7ヶ月)であれば通常の治療が可能ですが、緊急でなければ産後に行うのが一般的です。
妊娠中はホルモンバランスの影響で歯肉炎になりやすく、親知らずも痛み出しやすい時期です。
消毒や洗浄などの応急処置はいつでも可能ですが、麻酔やレントゲン、術後の抗生剤服用などが必要な抜歯には慎重な判断が求められます。
妊娠を計画している場合は、歯にトラブルが起きる前に、あらかじめ親知らずの状態確認や抜歯を済ませておくことを強くおすすめします。
Q.親知らずが生えてくる時の痛みはいつまで続きますか?
A.個人差がありますが、数日から1週間程度で落ち着く場合が多いです。
歯茎を突き破って出てくる時の萌出痛(ほうしゅつつう)の場合、完全に生えきってしまえば痛みはなくなります。
しかし、1週間以上痛みが続いたり何度も痛みを繰り返したりする場合は、単純な成長痛ではなく、細菌感染による智歯周囲炎を起こしている可能性が高いです。
この場合は、自然に治るのを待つのではなく、早めに歯科医院で処置を受ける必要があります。
まとめ|生えかけの親知らずの痛みは歯科医師に相談しよう
生えかけの親知らずが痛むのは多くの人が経験しますが、決して軽んじてはいけません。ズキズキとした痛みは、口の中で細菌が増え、炎症が起きている可能性を示唆しています。
市販薬や冷却によって一時的に痛みをごまかすことはできても、根本的な原因である親知らずの生え方や汚れ溜まりが改善されなければ、痛みは何度も繰り返します。
特に、仕事が忙しかったり寝不足が続いたりして免疫力が落ちている時に、繰り返し痛みます。規則正しい生活で体調を整えることは大切ですが、残念ながらそれだけでは解決しません。
親知らずの痛みが落ち着いているタイミングで一度歯科医院を受診し、状態を正しく把握して、抜くべきか残すべきかを検討してください。
歯科医院や口腔外科を探すなら「歯科まもる予約」で検索しよう
親知らずの抜歯は、歯科治療の中でも特に技術を要する処置の一つです。
特に横向きに埋まっている場合などは、口腔外科という専門的な分野を得意とする先生による処置が必要です。
しかし、どこの歯医者さんが親知らずの治療に慣れているのか見分けるのは難しいでしょう。そんな時に役立つのが、「歯科まもる予約」です。
親知らずの抜歯実績が豊富な医院や、CTなどの精密検査機器が整っている医院、痛みの少ない治療に配慮している医院などを簡単に探して予約できます。
住まいの近くで安心して任せられる歯科医院を見つけるのに役立ててください。

