ふと鏡を見たとき、歯茎に今までなかった「白いできもの」を見つけると、「もしかして、癌なのでは…」と、心臓がどきりとするような、強い不安に襲われますよね。
痛みがあればもちろん、痛みがなくても、その正体がわからない不気味な存在に、インターネットで検索する手が止まらなくなっているかもしれません。
結論から言うと、歯茎にできる白いできものの多くは、口内炎や歯の根の膿など、癌ではない別の原因によるものの可能性が高いです。
しかし、中には口腔がん(歯肉がん)の初期症状である可能性もゼロではありません。大切なのは、危険なサインを知り、自己判断で放置せず、正しく対処することです。
- 白いできものの正体として考えられる病気
- 危険なサインのセルフチェック法
- すぐに病院へ行くべき症状
歯科専門家の視点から、あなたの不安を解消するために、網羅的に解説します。
▶関連記事:歯茎が白くぶよぶよするのはなぜ?考えられる原因と正しい対処法を解説
まずはセルフチェック。その白いできもの、癌との見分け方は?
歯茎に正体不明の白いできものを見つけたとき、「もしかしたら癌かもしれない」と、最悪の事態を考えてしまうのは当然のことです。
しかし、結論から言うと、パニックになる前に、まずは落ち着いてその状態を客観的に観察することが大切です。
なぜなら、歯茎にできる白いできものの多くは癌ではない良性の病変であり、一方で口腔がんには特有のサインがあるからです。
ここでは、ご自身の症状と見比べ、専門家へ相談すべきかどうかの一次判断ができるよう、見分け方のポイントを解説します。
歯茎にできる白いできものの正体
まず知っていただきたいのは、歯茎にできる白いできものの多くは、口内炎や炎症などの良性の原因によるものです。
実際に癌である割合は少数ですが、完全に否定することはできません。
過度に不安になりすぎないためにも、癌以外に考えられる主な原因を知っておきましょう。
口内炎(アフタ性口内炎)
→ 最も一般的で、円形または楕円形で、食事の際にしみるような痛みを伴うことが多いです。
フィステル
→ 歯の根の先に溜まった膿(うみ)を排出するための出口(おでき)です。ニキビのように少し膨らみ、押すと膿が出ることがあります。
骨隆起(こつりゅうき)
→ 歯茎の下にある顎の骨が、こぶのように盛り上がったものです。表面の粘膜は正常で、触ると骨のように硬く、通常は痛みがありません。
これらの可能性も念頭に置き、冷静にご自身の症状をチェックしていきましょう。
口腔がん(歯肉がん)を疑うべき危険なサイン【セルフチェックリスト】
ご自身のできものが、これから挙げる危険なサインに当てはまらないか、鏡を見ながら慎重にチェックしてみてください。
もし一つでも当てはまる項目があれば、自己判断で様子を見ず、できるだけ早く専門医に相談してください。
チェック項目 | 口腔がん(歯肉がん)を疑うサイン | 良性の口内炎などとの違い |
期間 | 2週間以上経っても治らない、または大きくなる | 普通の口内炎は1〜2週間で自然に治る傾向 |
形・境界 | 形が歪(いびつ)で、周囲の粘膜との境目が曖昧 | 口内炎は円形など、境界がはっきりしている |
硬さ | 表面や周りに「しこり」のような硬い部分がある | 口内炎の周りは粘膜と同じくらい柔らかい |
表面 | 表面が赤くただれていたり、逆に盛り上がっていたりする | 口内炎は白く、少しへこんでいる(潰瘍) |
出血 | 少し触れただけでも簡単に出血する | 口内炎は歯ブラシが強く当たるなどしないと出血しにくい |

歯肉がんについて詳しく知りたい人は、こちらの記事も参考にしてください。
【重要】痛みがないからと安心するのは危険
セルフチェックをする上で、最も注意していただきたい重要なポイントがあります。それは、「痛みがないから大丈夫」と自己判断しないことです。
一般的な口内炎は痛みを伴うため、「痛くない=問題ない」と思いがちですが、実は初期の口腔がんは痛みを伴わないケースが非常に多いのです。
痛みや出血といった自覚症状は、がんがある程度進行してから現れることが少なくありません。
つまり、痛みの有無は、癌かどうかを判断する信頼できる基準にはならないのです。痛みがないからといって放置することが、発見を遅らせる最も危険な要因となります。
違和感のあるできものが2週間以上存在するなら、症状の有無にかかわらず専門家による診断が必要です。
歯茎の白いできもの、原因別の特徴と症状を解説
歯茎にできる白いできものと一言で言っても、その正体は様々です。
結論として、ご自身のできものの特徴(痛み、形、硬さなど)をよく観察することで、原因をある程度推測することができます。
なぜなら、それぞれの病気には特有の見た目や症状があるからです。
「癌かもしれない」という不安を抱えながらも、まずは冷静に、考えられる5つの代表的な原因とそれぞれの特徴を学んでいきましょう。
① 口内炎(アフタ性口内炎) – 痛みを伴う円形の潰瘍
歯茎にできる白いできもので最も一般的なのが「アフタ性口内炎」です。
ストレスや疲れ、栄養不足などが引き金となって発症します。特徴は、表面が白〜黄色の膜で覆われた円形または楕円形のくぼみ(潰瘍)で、その周りが赤く腫れていることです。
食事や歯磨きの際に食べ物や歯ブラシが触れると、しみるような強い痛みを感じます。通常は1〜2週間で自然に治癒するのが、がんとの大きな違いです。
② フィステル – 歯の根の先に膿が溜まるおでき
歯茎にニキビのような白いおできができた場合、それは「フィステル(瘻孔:ろうこう)」かもしれません。
これは、虫歯が進行して歯の神経が死んでしまったり、過去に神経の治療をした歯の根の先で細菌が繁殖し、膿(うみ)の袋ができてしまったことが原因です。
その溜まった膿を体外に排出しようとして、歯茎の表面にトンネルのような管を作り、出口として現れたものがフィステルです。
痛みはあまり感じないこともありますが、指で押すと膿が出てくることがあります。根本原因である歯の根の治療をしない限り、治ったり再発したりを繰り返します。
③ 骨隆起(こつりゅうき) – 硬い骨の膨らみ
歯茎の一部が硬く盛り上がっている場合、それは「骨隆起(こつりゅうき)」の可能性があります。
これは病気ではなく、顎の骨が部分的に過剰に発育してできた、こぶのようなものです。特に下の歯の内側の歯茎によく見られます。
表面の粘膜は正常で、指で触ってみると骨のようにカチカチに硬いのが特徴です。
通常、痛みなどの症状はなく、体に害を及ぼすものでもないため、治療の必要はありません。
ただし、入れ歯を作る際に邪魔になる場合などは、切除することもあります。
④ 白板症(はくばんしょう) – 癌化する可能性のある前がん病変
歯茎や頬の粘膜に、こすっても剥がれない白い板状、あるいは斑点状の病変ができた場合、「白板症(はくばんしょう)」が疑われます。
これは、喫煙や合わない入れ歯による慢性的な刺激などが原因で、粘膜が厚く硬くなった状態(角化)です。痛みなどの自覚症状はほとんどありません。
白板症のすべてが癌になるわけではありませんが、数%が後に癌化する可能性がある「前がん病変」に分類されています。
見た目だけで癌との鑑別は困難なため、この症状に気づいた場合は、必ず専門家による診断が必要です。
⑤ 口腔がん(歯肉がん) – 最も注意すべき悪性の病気
歯茎にできる癌は「歯肉がん」と呼ばれ、口腔がんの一つです。
初期の歯肉がんは、口内炎や歯周病による歯茎の腫れと見た目が似ているため、発見が遅れがちです。しかし、進行すると以下のような特徴が現れます。
- 歪な形をした潰瘍やしこり
- 周囲の粘膜との境目が不明瞭
- 歯ブラシなどが少し触れただけで簡単に出血する
- 歯がグラグラしてくる
- 入れ歯が合わなくなる
前述の通り、初期段階では痛みを伴わないことが多いため、セルフチェックで見分けるのは非常に困難です。
少しでも疑わしいサインがあれば、絶対に放置せず、速やかに歯科・口腔外科を受診してください。
病院へ行くべき?受診のタイミングと診療科の選び方
歯茎にできた白いできもの。「癌だったらどうしよう」という不安と、「病院に行くのは大袈裟かもしれない」というためらいの間で、どうすればよいか迷ってしまいますよね。
しかし、結論から言うと、正体不明のできものを自己判断で放置し続けることこそが、最も危険な選択です。
なぜなら、万が一悪性の病気だった場合、早期発見・早期治療がその後の経過を大きく左右するからです。
ここでは、あなたの不安を具体的な行動に変えるための「受診のタイミング」と「診療科の選び方」を明確に解説します。
2週間以上治らない・大きくなる場合は迷わず受診を
病院へ行くべきか判断する上で、最も重要で分かりやすい基準が「2週間」という期間です。
一般的な口内炎であれば、通常1〜2週間で治癒に向かいます。
もし、あなたのできものが2週間以上経っても全く治る気配がない、あるいは少しずつ大きくなっている、形が変わってきたという場合は、それが体からの重要なSOSサインです。
それは、体の自然治癒力では治せない、より専門的な診断と治療が必要な状態であることを示唆しています。
「そのうち治るだろう」という希望的観測で様子を見るのはやめて、迷わず専門家による診察を受けてください。
何科に行けばいい?まずは「歯科」または「口腔外科」へ
「病院へ行こう」と決心した次に迷うのが、どの診療科を受診すればよいか、ということでしょう。
歯茎のできものなど、お口の中のトラブルに関する専門家は「歯科」と「口腔外科」です。
まずは、お近くのかかりつけの歯科医院に相談するのが最もスムーズです。一般的な歯科医院でも、口内炎やフィステルなど、多くのできものの診断は可能です。
その上で、もし歯科医師が「より精密な検査が必要だ」と判断した場合には、大学病院や総合病院の口腔外科など、適切な専門医療機関を紹介してくれます。
- 歯科:
お口のトラブル全般の最初の相談窓口。 - 口腔外科:
口の中や顎の外科的治療を専門とする科。より診断が難しいケースや、手術が必要な場合に対応します。
最初から大病院を探す必要はありません。まずは身近な歯医者さんに相談することが、解決への第一歩です。
歯科医院ではどんな検査をするの?(視診・触診・レントゲンなど)
「病院で何をされるんだろう」という不安を和らげるために、歯科医院での基本的な検査の流れを知っておきましょう。
いきなり痛い検査をされることはありませんので、ご安心ください。
- 1. 問診
まず、できものにいつ気づいたか、痛みや出血の有無、生活習慣(喫煙・飲酒など)について詳しく聞かれます。 - 2.視診・触診
歯科医師が直接、できものの状態(大きさ、形、色、硬さなど)を目で見て(視診)、指で優しく触れて(触診)、しこりの有無や周りへの広がりを確認します。首のリンパ節が腫れていないかもチェックします。 - 3.レントゲン撮影
できものの下に隠れた歯の根や、顎の骨の状態を確認するためにレントゲンを撮ることがあります。
これにより、フィステルや骨隆起などが原因かどうかを判断する助けになります。
これらの基本的な検査の結果、もし悪性の病気が少しでも疑われる場合には、より詳しく調べるために、専門の医療機関で細胞診(細胞をこすって調べる検査)や組織検査(組織の一部を切り取って調べる検査)を行うことを勧められます。
歯茎にできる白いできものに関するよくある質問(Q&A)
歯茎にできた白いできものについて、多くの方が抱く共通の疑問や不安があります。
「もしかして癌かも…」という恐怖の中で、どう行動すればよいのか、よくある質問に専門家としてお答えします。正しい知識を持つことが、冷静な判断と適切な行動につながります。
Q1. 白いできものは自分で潰したり、剥がしたりしてもいい?
A1. いいえ、絶対に自分で潰したり、剥がしたりしないでください。
気になるからといって、ご自身でできものに触れるのは非常に危険な行為です。その理由は主に2つあります。
- 1.症状の悪化
指や器具で触れることで細菌が入り込み、二次的な感染を起こして炎症がひどくなる可能性があります。 - 2.診断の妨げ
できもの本来の状態が変化してしまい、歯科医師が正確な診断を下すための重要な情報が失われてしまいます。
それが何であれ、正体がはっきりするまでは「触らない、いじらない」を徹底し、ありのままの状態で専門家に見せることが、解決への最も安全で確実な方法です。
Q2. 歯周病と関係はありますか?
A2. はい、直接的、間接的に関係している可能性があります。
歯周病が歯茎の白いできものの原因となる、あるいは背景にあるケースは少なくありません。
歯周病が重度に進行すると、歯の周りの組織で膿が溜まり「歯肉膿瘍(しにくのうよう)」という膿の塊を形成することがあります。
これが、白や黄色っぽいできものとして見えることがあります。また、歯の根の先に膿が溜まる「フィステル」も、重度の歯周病が原因で生じることがあります。
歯周病は直接的に癌を引き起こすとは証明されていません。ただし、慢性的な炎症が口腔環境を悪化させ、間接的にリスク因子と関わる可能性が指摘されています。
このような口腔環境の悪化は、口腔がんのリスクを高める要因の一つと考えられています。
いずれにせよ、歯茎にできものがあり、かつ歯周病の自覚症状(歯茎の腫れや出血など)もある場合は、両方の問題を解決するために、早めに歯科医院を受診することが重要です。
Q3. 口腔がんの予防法はありますか?
A3. はい、100%ではありませんが、リスクを大幅に減らすための効果的な予防法はあります。
口腔がんの予防は、「リスク要因を避けること」と「早期発見を心がけること」の二本柱で成り立っています。今日からでも始められる、具体的な予防法は以下の通りです。
- 最大の危険因子を避ける
口腔がんの発生に最も強く関与しているのが「喫煙」と「喫煙と飲酒のセット」です。禁煙し、お酒は節度ある量に控えることが、最も効果的な予防策です。 - お口の中を清潔に保つ
毎日の丁寧な歯磨きで、口腔内の衛生状態を良好に保ちましょう。 - 慢性的な刺激をなくす
合わない入れ歯や、欠けて尖った歯など、常に同じ場所を刺激し続けるものがあれば、歯科医院で調整・治療してもらいましょう。 - バランスの取れた食事
ビタミンA、C、Eなどを豊富に含む、緑黄色野菜や果物を積極的に摂ることも大切です。 - 定期的な歯科検診
これが最も重要な「早期発見」のための予防策です。自覚症状のない初期のがんや前がん病変を、専門家の目で見つけてもらうことができます。
定期検診は、自分では気づけないリスクから身を守るための最善の方法です。
まとめ:歯茎の白いできものは自己判断せず専門家へ。早期発見が重要
この記事では、歯茎にできる白いできものの正体や、危険なサインの見分け方について詳しく解説しました。
結論として、あなたが今抱えている「もしかしたら癌かもしれない」という不安を解消するために最も大切なことは、一人で悩み続けず、自己判断で放置せず、できるだけ早く専門家である歯科医師に相談することです。
なぜなら、万が一それが悪性の病気だった場合、何よりも早期発見・早期治療が重要だからです。
「もしかして癌かも」その不安を解消する最善の方法
インターネットで検索を続けるほど、様々な情報に触れて余計に不安が大きくなっていませんか?
その不安を解消する最善かつ唯一の方法は、専門家による「確定診断」を受けることです。
歯科医院を受診することは、単に病気を診断してもらうだけでなく、「正体がわからない」という最も大きなストレスからあなた自身を解放するための、最も有効な手段なのです。
検査の結果、心配のないものだと分かれば心から安心できますし、万が一治療が必要な病気が見つかったとしても、早期に対応することで最善の道を歩むことができます。
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